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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2016年3月7日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【審議員会副議長人事】

本日の会長・副会長会議において、新たに選任される審議員会副議長の候補者を内定した。5月9日の理事会を経て6月2日の定時総会に諮り決定する。定時総会をもって伊東 信一郎 審議員会副議長が任期満了で、また岡本 毅 副議長、小林 健 副議長、石塚 邦雄 副議長、國部 毅 副議長は副会長への就任により退任する。

退任する副議長に代わる新たな候補者として、浅野 邦子 箔一会長、隅 修三 東京海上日動火災保険会長、泉谷 直木 アサヒグループホールディングス社長、長榮 周作 パナソニック会長、中村 邦晴 住友商事社長、佐藤 康博 みずほフィナンシャルグループ社長を内定した。この6名に加えて、2014年に選任され、今般再任される副議長が候補者となる。6月2日以降、審議員会は岩沙議長以下21名の体制となる。

箔一は金沢の伝統産業である金箔の大手メーカーで、工芸品、建築装飾、食用金箔、化粧品などに事業を展開している。浅野会長は創業経営者である。女性の審議員会副議長は昨年就任した吉田副議長とともに2名となる。バイタリティあふれる女性経営者として、また地域産業活性化や中小企業振興の担い手として、経団連に新風を吹き込むことを期待している。

【震災復興】

東日本大震災から5年を迎え、被災地域では生活拠点の再生、公共インフラの復旧・復興は一定の目途がついてきた。一方、いまだに17万人を超える方々が不自由な避難所生活を送られている。産業復興に関しては、根強い風評被害が農林水産業や観光業の復興の足かせになっている。経団連としても、様々な提言を行うとともに、風評被害対策や国民の記憶の風化防止に向けた活動を行っている。一昨年の10月には、被災地産品の消費拡大のためマルシェを開催した。また、会員企業各社の社員食堂における被災地食材の活用を呼びかけている。こうした取り組みを続けているものの、解決しなければならない課題は多く、地域経済の復興はまだ途半ばである。

本日午前中に復興応援イベント「東北に新たな商流を!~成長への挑戦~」を復興庁、JAグループの協力を得て、主催した。東北に新たな商流を興し、芽吹いたビジネスを成長ステージに押し上げていくことを狙いにしたもので、経団連会員企業が被災地企業と課題解決を探る、大変意義深いイベントであった。

経団連としては、会員企業からの被災自治体や復興庁への人材派遣などに加えて、引き続き産業の復興、風評被害対策、記憶の風化防止に注力して取り組んでいく。

【春季労使交渉】

今年の経労委報告で示しているように、様々な場を通じて収益を拡大した企業には年収ベースで前年を上回る賃金引上げに前向きに取り組むよう呼びかけている。各社の状況に合わせて、ベア、定昇、手当、ボーナスなどを通じた対応を期待したい。また、経労委報告では、非正規社員の正規化や待遇改善といった方向性も示しており、会員各社に取り組んでもらいたい。

一部の金融機関の労組がベア要求を見送ったとの報道もあるが、個社の話についてコメントは控えたい。一方、一時金については前年比増額を要求するとの情報もある。年収ベースでの賃金引上げを期待している。

賃金が全体として底上げされることを期待したい。

【消費増税】

経団連は社会保障の充実と財政健全化の観点から、来年4月の消費税率の再引上げは計画通り実施すべきであると考えている。ただ、足元の経済情勢を見ると、消費は5%から8%へ引き上げた際の駆け込み需要に伴う反動減に苦しみ、年額300兆円程度で足踏みしている。来年4月に消費税率を計画通り10%へ引き上げるための環境整備が必要である。即ち、経済が再引上げを受容できるだけの底力・地力をつけなければならない。安倍総理も計画通り引き上げることを繰り返し発言されており、そうした形で進めてもらいたい。

消費を上昇トレンドに変えていくためには、短期と中長期の対応が必要である。特に、即効性という観点からは、賃金引き上げがしっかり行われることが重要であり、これに併せた消費喚起策が求められる。

【同一労働同一賃金】

正社員と非正規雇用労働者の不合理な格差の解消に向けて、同一労働同一賃金の実現を目指していくという安倍総理の考えについて、経団連も賛同している。実際にどのような制度とするかはこれからの議論であり、経団連としてもしっかり提言していく。賃金制度、雇用慣行は国により異なる。日本には日本独自の賃金制度、雇用慣行があり、これらを踏まえた制度にしていく必要がある。同じ仕事だから同じ賃金という単純なものではない。わが国の場合、労働者への期待、役割、将来的な会社への貢献など様々な要素を勘案した賃金制度となっており、これをきちんと踏まえたものとしなければ、日本企業の人材活動の強みが失われかねない。

【日中関係】

3月5日から中国で全国人民代表大会(全人代)が始まり、第13次5カ年計画などを巡り議論が行なわれている。昨年11月に李克強国務院総理と会談した際、第13次5カ年計画では、鉄鋼、石炭、建設資材、化学等の分野で過剰設備を解消するなど国営企業の構造改革を進め、改革開放を進化させていくとの話を伺った。また、第13次5カ年計画では、小康社会の実現に向けて、年平均6.5%以上の経済成長率を目指すとされている。かつての7%成長よりは低い目標だが、国全体のGDPが拡大していく中での6.5%成長は大きな目標であり、これを確実に達成することが重要である。2020年にGDP1620兆円を目指すということであり、わが国の目標である2020年GDP600兆円経済の約3倍である。これを実現することが中国経済、ひいては世界経済にとっても重要であり、改革開放の深化を計画通り進めてもらいたい。

第13次5カ年計画では、イノベーションを重視した政策を打ち出しているという印象が強い。例えば、GDPにおける研究開発費の比率を2.1%から2.5%に引き上げるとの目標が示されている。わが国の場合、0.8%にとどまっており、これが実現されれば、莫大な研究開発費となり、中国がイノベーションにおける主導的地位を獲得する可能性もある。国家規模のプロジェクトや世界トップの大学づくりなど具体的な政策が打ち出されており、こうしたイノベーション政策にも注目している。

以上

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