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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2018年9月3日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【採用選考に関する指針】

経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をしていることには違和感を覚える。また、現在の新卒一括採用についても問題意識を持っている。ネットの利用で、一人の学生が何十社という数の企業に応募できるようになった。企業が人材をどう採用し、どう育成していくかということは極めて大事なことであるが、終身雇用、新卒一括採用をはじめとするこれまでのやり方では成り立たなくなっていると感じている。各社の状況に応じた方法があるはずであり、企業ごとに違いがあってしかるべきだろう。優秀な人材をいかに採用するかは企業にとっての死活問題である。

今後の採用選考に関する指針のあり方については、こうした私の問題意識も踏まえて、経団連で議論することになる。日程のみを議論するのではなく、採用選考活動のあり方から議論したい。その際、就職活動の現状について、学生がどう感じているか、真摯に耳を傾けることも当然だ。

【経済情勢】

設備投資が拡大しているが、人手不足が深刻化する中、経営者としては省人化に向けた投資を増やすことは当然である。また、デジタル化が急速に進む中、それに関連する投資が増えるのも当然である。他方、内部留保が積みあがっていると指摘されるが、これは手元に現金があるということではない。すでに何らかの形で投資に向けられており、今の内部留保の水準は、ほぼ適切なものである。内部留保が増えたことを直ちに賃上げに結び付けるのはおかしい。賃上げは従業員の処遇改善、意欲の向上などを目的に実施するものであり、この点で賃上げには引き続き取り組むべきであると思っている。

リーマン・ショックから10年が経過したが、バブルの発生をどう防ぐかという問題は依然残されており、これは常にリスクである。他方、バブル発生後の対策については、これまでの様々な教訓が生きるのではないか。今の日本の低金利や住宅価格の上昇をもって、リーマン・ショック時の米国経済に似ているという指摘もあるが、明らかにバブルの様相を呈していた当時の米国の状況とはかなり異なると見ている。

【障害者雇用】

省庁・自治体で障害者雇用を水増してカウントしていることには、正直、驚いた。法定雇用率の達成は経営者にとってプレッシャーではあるが、障害者雇用を増やしていくことは社会からの要請でもある。組織のダイバーシティを進めるためにも当然対応すべきことである。

【サマータイム】

経団連はかつてサマータイムの導入を要望していたが、気象ひとつとっても当時とかなり状況が異なっている。会員企業の中にも様々な意見がある。当時の考えをそのまま踏襲するということではなく、経団連の中で改めてしっかり議論する必要がある。東京オリンピック・パラリンピックは必ず成功させなければならないが、暑さ対策という点ではサマータイム以外にも方策があると思う。

【外国人材の受入れ】

日本社会の同質性が弱点になりつつあり、多様性のある社会を推進していくべきである。単純に人手不足ということではなく、組織に多様性がなければグローバル化推進に向けた知恵は出てこない。日本人だけで議論することに限界を感じている。ただ、産業によって事情が異なることも事実である。外国人材の受入れに向けて、どのような制度が必要で、どう準備をするのか、経団連のなかでもしっかり議論して、見解をまとめていく。

【自民党総裁選】

安倍政権はこの6年間、日本経済の課題を真正面から捉え、政策を実行し、着実に成果を出してきており、高く評価している。安定政権が継続することは経済にとって好ましいことであり、安倍総理の続投を支持したい。他方、わが国には課題が山積しており、総裁選を通じてしっかり政策論争を行ってもらいたい。

【NAFTA再交渉】

NAFTAの再交渉については、現状どおり三カ国の枠組みで、できるかぎり自由貿易を維持する形で決着してほしい。原産地規則の見直しがどのような影響をもたらすのかについては、現段階では読めない。引き続き注意深く見守っていく。

【米国の通商政策】

仮に日本からの輸入車に追加関税が課されれば、購入価格が上がり、大きな打撃を受けるのは米国の消費者とディーラーである。また、サプライチェーンも大きな影響を受ける。こうした点については、米国の州知事、経済人とも問題意識を共有できている。ただし、そうした声がどこまでトランプ政権の政策に反映されるのか必ずしも見えないところが悩ましい。

【日中関係】

中国に対しては、資本主義に則った企業行動を担保することの必要性を繰り返し訴えていくことが肝要である。例えば、中国国内での企業合併に関する独禁法の審査を巡っては、外国企業は中国企業と比べて審査期間が長くなったり、多くの条件を付けられたりすることがある。公平な条件の下で時に競争し、時に協力していくことが事業活動の大原則である。日中経協合同訪中団では、こうした課題の解決に向け、中国の政治リーダーとの政策対話に臨みたい。

以上

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