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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2018年9月25日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【採用選考】

経団連が採用選考活動の日程を決めることに違和感があるとの私個人の思いを申し上げたところ、学生、政府、大学など各所から様々な反応があった。どのように受け止められているか、まだ分からないところもあるが、何かしらのルールがあること自体には抵抗感はない。同時に、通年採用など多様な採用のあり方があり、そのどれかを禁止するということでもない。

現在の大学教育について、企業側も採用にあたり学業の成果を重視してこなかった点は大いに反省すべきである。学生がしっかり勉強し、企業がそうした学生をきちんと評価し、採用することが重要である。大学には、学生、経済界にとって有意義な教育を行ってほしい。企業の側でも、「AI人材」「グローバル人材」といった抽象的な表現ではなく、具体的にどのようなスキルを備えていてもらいたいのか、そのためにどのような勉強をしてほしいのか、といったことを明確に示していく必要がある。就活の日程だけが問題で、その影響により、学業が疎かになるということではないだろう。

2021年入社対象の学生の就職活動が混乱することがあってはならない。このことは十分に認識しており、何らかの対応をすることになる。ただし、単純に時期を決めるということではないと思う。経団連の中でしっかり議論して、対応していく。

【大学改革】

これまでの大学改革の議論では、研究機関としての大学のあり方がテーマになっていたが、教育機関としての大学にも焦点を当てる必要がある。欧米のみならず、中国、シンガポール等のアジアのトップレベルの大学の学生の勉強量は日本の大学生の比ではない。日本の場合は、入学することに比べて、卒業することはさほど難しくない。企業の側もこの実態をそのまま受け止めてしまっている。こうしたことが私の問題意識の根本にある。学生がしっかり勉強するよう、大学には有意義な教育を実施してもらいたい。

【米中貿易】

自由で公正なルールに基づく貿易は経済にとって非常に重要である。今の貿易戦争とも言えるような事態を深刻に受け止めている。ただ、リーマンショックの時のようにマーケットからマネーのみならず需要までもが消失するといった事態にはならないと思う。リーマンショックのときはリスクがどこに存在しているかすら分からず、信用喪失のような形で経済が縮小した。他方、今の貿易摩擦は、米中間での貿易不均衡の是正という明確なターゲットが見えている。トランプ大統領が選挙公約に掲げていたことでもある。見通しは厳しいが、少なくともリスクがどこにあるかははっきりしている。経済界としても、B20などの場を通じて、各国の経済界とも連携しながら、自由貿易の重要性を訴えるとともに、関税措置による経済へのマイナスの影響を回避するための行動を展開していく。

【日米経済関係】

日本の政府、経済界は一貫して、ルールに基づく自由貿易の堅持を主張してきた。第2回FFRにおいても、日本政府にはその方向での交渉を期待したい。外交問題をディールとして扱うことには相当な抵抗感がある。それをはねのけるような折衝をしてほしい。ただ、外交は相手あっての話であり、今は通常の外交のプロトコルとは違った形で相手方から要求が飛び出してくる。経団連は引き続き、政府とよく連携しながら、民間外交を深く広く展開していく。

日米経済関係において、自動車は最大の貿易品目であり、自動車関税の引上げがもたらす影響は大きい。自動車産業の日本経済に占めるウエイトの大きさ故に、米国側が交渉材料として取り上げている側面はある。米国は、二国間協議以外は拒否しており、日本側がCPTPPを提案しても乗ることはないだろう。米国による一連の関税措置について、その趣旨は到底理解できるものではない。トランプ大統領の狙いがよく分からないことが日本にとって最大の難問なのではないか。

【自民党総裁選】

安定政権が継続することは経済にとってプラスであり、経済界として安倍総理の自民党総裁三選を歓迎する。これまで通り経済第一の政権運営をお願いしたい。とりわけ、今、日本経済にとって脅威になっている貿易摩擦やBREXIT、欧州の政治情勢などの不確実な国際情勢への適切な対応を求めたい。安倍総理には引き続きリーダーシップを発揮していただき、日本の国益、さらには世界の繁栄に向けて外交を展開してほしい。

政治と経済が連携することは極めて重要である。従来とは違ったプロトコルで外交政策が展開されるなか、政治と経済が連携することは不可欠である。政治と経済が連携を密に協力し、日本経済に再び勢いを取り戻していきたい。

【英国のEU離脱】

何ら合意のないまま英国がEUを離脱するとなれば、経済活動に深刻な影響を及ぼすことになるので、回避してもらいたい。他方、個々の日本企業が対英投資をどうするかは、各社の判断である。同様に、英国の事業拠点をどうするかの判断も業種・業態によってまちまちだろう。例えば、金融業であれば、シティがどれだけ国際金融センターとしての機能を維持できるかによって、判断するのだろう。必ずしもすべての日本企業が次から次へとすぐに英国から出ていくという事態にはならないのではないか。英国に代替する場所についても、事業によって様々な選択肢があると思う。

【外国人材の受け入れ】

移民という政策を採ることが正しいのかどうか、明確な回答を持ち合わせていない。ただ、均一的な社会構造がグローバル化の中ではハンディキャップになりかねないという問題意識を常に持っている。グローバル化や多様性はイノベーションを進めるうえで必須の要件である。観光などを通じて日本人が海外に行って異文化に触れることや、外国の方々を日本にお迎えすることは、この観点から非常に重要であり、そうした機会が増えるよう官民挙げて推進するべきである。しかし、そうしたことと移民とは同列に論じられない。外国人の受入れには社会保障や住環境整備などの問題が複雑に絡む。政府が検討している外国人技能実習生のさらなる活用といったところから議論を進めていくことが重要である。

以上

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