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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 夏季フォーラム2022後の記者会見における十倉会長発言要旨

2022年7月22
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム総括】

会長、副会長、議長、副議長が3年ぶりに軽井沢で一堂に会し、議論を深めることができた。

今年は、安宅和人 慶大教授、森川博之 東大大学院教授、ニーアル・ファーガソン スタンフォード大学シニアフェローを講師にお迎えした。非常に示唆に富むご講演の後、活発な意見交換を行った。また、講師の方々のお話を踏まえ、分科会でも、参加者間でわが国が直面する重要政策課題について真摯な意見交換を行い、行動宣言「サステイナブルな資本主義を実践する」に議論の成果を集約した。

岸田総理大臣をフォーラムにお迎えし、行動宣言を手交することができた意義は大きい。

〔フォーラムで印象に残った議論や、今後注力する課題について問われ、〕
われわれが長年にわたり信奉してきた価値、信念、行動様式の是非が今、問われている。時代の転換期にあって、議論が哲学的な内容も含んだものになったのは印象的である。

経団連は、サステイナブルな資本主義の実現に向け取り組みを進めていく。行き過ぎた株主資本主義・市場原理が生み出した弊害・副作用、すなわち、格差による分断や、地球温暖化等による生態系の崩壊の克服に力を入れていきたい。格差の解消には、GX、DXを柱とした成長と分配の好循環の実現が重要である。その際、「公正」の定義に関する議論も避けられない。スタートアップの育成もまた、重要である。この課題は、日本が力強い成長を失った問題点を逆に浮き彫りにする鏡でもある。

【賃金引上げ】

「賃金引き上げのモメンタム」を維持していくことが肝要である。経団連調査によると、今年の春季労使交渉(大企業)の月例賃金引き上げは3年間続いていた低下傾向から上昇に転じ、業績がコロナ前の水準を回復した企業ではアップ率が3%を超えた。夏季賞与も4年ぶりにプラスとなり、過去最高値となる前年比13.81%を記録した。

ロシアのウクライナ侵略に端を発して物価が上昇しているが、持続的なインフレという状況ではない。経済界としては、1~2%の物価上昇が持続する中、インフレ部分が賃金引き上げでカバーされ、持続的な賃金の引き上げにつながっていくというサイクルを実現することが望ましい。

〔さらなる賃上げの協力を岸田総理から求められたことについて問われ、〕企業の責務として、賃金引き上げのモメンタムを維持し、好循環を確たるものとしていきたい。政府は、税制支援やパートナーシップ構築宣言等を通じて賃金引き上げに向けた環境整備を進めている。経済界はこれに応え、今年の実績を踏まえて、しっかりと対応していかなければならない。

【脱炭素の実現】

ロシアのウクライナ侵略により、エネルギー安全保障が重要な課題となる中、岸田総理がGX実行推進担当大臣とGX実行会議の新設を表明したことは、非常に心強い。脱炭素社会を必ず実現するという政府の覚悟をひしひしと感じている。政府は、電力の安定供給と脱炭素における原子力の活用の重要性もよく認識されている。中長期的な課題にも、今から取り組む必要がある。次世代軽水炉、小型原子炉、核融合などの次世代技術の研究開発や原子力分野における人材育成について、真剣に議論していただきたい。

【新型コロナ感染症】

〔濃厚接触者の待期期間の短縮について問われ、〕世界中でこれ程長い隔離期間を設けている国は見当たらない。ウィズコロナで経済社会を回していくために、非常に正しい判断である。

〔行動制限の要否について問われ、〕コロナ禍に見舞われて3年を経て、様々な知見が蓄積されてきており、これを基に科学的、合理的な判断をしていただきたい。目下流行しているBA.5は毒性が低く、重症化する患者の割合も低いという。そうしたこともよく検証し、経済社会を動かしていくための方策をしっかり議論すべきである。

【WTO紛争解決機能の停止】

WTO紛争解決手続きは二審制となっている。現在、その上級審にあたる上級委員会が機能停止している。従って、一審にあたる小委員会で結論が出ても、その結論に不満を持つ国が上級委員会に提訴すると、最終的な判断を確定、執行できず、紛争解決につながらない状況にある。上級委員会が早期に機能を回復することが望ましいが、時間を要するので、その間、紛争案件が未決のまま積滞してしまう。こうしたことから、有志国による暫定的な仲裁制度に日本が参加するというのは良い方向である。

【民主主義】

〔民主主義について認識を問われ、〕民主主義は絶対に守らなければいけない。民主主義にはコストと時間がかかるが、仮に間違った方向に行っても、政治参加という手段を通じ、民意で修正することができる。民主主義の基盤は「自由」である。われわれは自由経済、自由貿易を由として追求しているが、自由はそれらに先立つ、何よりも尊いものである。

以上

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