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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(10/6)における筒井会長発言要旨

2025年10月6
一般社団法人 日本経済団体連合会

【自民党・高市新総裁】

高市氏の自民党新総裁への就任を歓迎する。

高市氏は、総務大臣や経済安全保障担当大臣などの要職を歴任し、経済・外交をはじめ幅広い政策に精通された政治家である。女性初の総裁として、自民党の再生と政策の遂行に向け、手腕を存分に発揮いただくことを期待する。

政策についても、「成長投資で強い経済を実現する」、「産業の国際競争力強化と人材育成に資する戦略的支援を行い、『新技術立国』を目指す」、「働く人の選択を前提とした労働時間規制の緩和」、「『地域ごとの産業クラスター』を全国各地に形成する地域経済・産業の活性化」など、いずれも経団連の掲げる政策と軌を一にするものと認識している。経団連として、新総裁と連携して、諸課題の解決に取り組んでいく。

〔高市新総裁の掲げる経済政策について問われ、〕新総裁は「強い経済を作る」とおっしゃっており、確かな意志を感じている。  経済安全保障や食料安全保障、エネルギーといった成長分野に対して積極投資を行うとの方向性は、経団連の掲げる「科学技術立国」の実現や、日本経済の潜在成長力の底上げにもつながるものである。

政府には、投資促進、ひいては潜在成長力の底上げに向け、中長期の計画を策定することにより、民間の予見可能性を高めていただきたい。経済界としても、それに呼応しながら、民間投資、とりわけ国内投資の積極的な拡大に取り組んでいきたい。

〔高市新総裁が実現を目指す、給付付き税額控除について問われ、〕給付付き税額控除は、成長と分配の好循環の実現、分厚い中間層の形成に向け、効率的・効果的な分配を進める一つの有力な方策であろう。今後、規模感や具体的な財源等についての議論を注視していく。

効率的・効果的な給付の実現には、所得、資産といった国民一人ひとりの負担能力の正確な把握が不可欠であり、マイナンバーと銀行口座等の紐づけを義務化するなど、マイナンバーのさらなる活用が重要である。

〔高市新総裁の掲げる積極的な財政出動と財政規律のバランスについて問われ、〕積極投資の方向性は経団連の掲げる政策と重なるところが多い。投資は本来、民間企業が行うものだが、時間軸が非常に長期に亘るものなど、政府が投資をしてけん引すべき領域については、ワイズスペンティングを前提にしながら、政府が積極的かつ集中的に資源投下する必要がある。

新総裁は「責任ある積極財政」を掲げておられる。積極投資と財政健全化のバランスを取ろうという意思を感じており、経団連としても、そのバランスを重視していきたい。

〔総裁選の中で賃金引上げの政府目標を掲げる候補に対して高市新総裁が「賃金引上げは民間企業が行うものである」とのスタンスであったことを踏まえ、賃金引上げの実現と政府の政策のあり方について問われ、〕賃金引上げの目標を示す候補がいたことについては、賃金引上げに対する社会からの期待感が非常に高いことが背景にあると思う。長年の賃金引上げにおける停滞感を社会全体で打破しようという機運が盛り上がり、政府が音頭を取ることが重要との認識が生まれたのではないか。ただし、賃金は最終的に各企業が自社の状況等を踏まえ、主体的に判断するものということに変わりはない。

経団連は賃金引上げを起点に、成長と分配の好循環を回していく必要があると考えており、「社会的責務」と位置付け、賃金引上げの力強いモメンタムの継続・定着に取り組んでいく。

政府の支援については、易きに流れることなく、自立的な経営努力を促す形で、特に中小企業が原資を安定的に確保し、継続的な賃金引上げが可能となる環境整備が求められる。

〔外的要因等での一時的な赤字に対する支援のための方策について問われ、〕例えば、「賃上げ促進税制」における繰越控除措置の一層の活用促進が考えられる。同税制が使いづらいのであれば、より活用しやすいよう見直しを行うことも重要である。

〔高市新総裁が、賃上げ促進税制を活用できない赤字の中小企業や小規模事業者の賃金引上げを促進すべく、地方自治体向けの交付金の積み増しを表明したことの評価を問われ、〕規模感や、実際に赤字の企業に支援が届くプロセスがわからないため、評価はできない。前向きな経営努力を促進するように真に効果のある形で赤字企業に支援が届くことが重要であり、制度設計を注視していきたい。

〔日経平均株価が過去最高を更新し、為替も1ドル150円を超えるまで円安が進んでいることの受け止めを問われ、〕市場の動きは想定どおりだと思う。日々の市場動向に一喜一憂してはならず、調整局面もいずれ訪れるだろうが、特に株価について、海外も含めた投資家の新政権に対する期待が現在の市場の動きにつながっているのであろう。

〔高市新総裁が2013年発表の政府・日銀の共同声明の見直しを示唆する発言をしたことの受け止めや、金融政策の方向性についての考えを問われ、〕共同声明については、必要性があれば見直しがされるということであろう。ただし、ここ数年は2%の物価上昇が実現している中、再び逆回転する可能性も考慮し、共同声明における2%の物価安定目標の記載は外さないことが適切ではないか。

金融政策については、政府と日銀が密にコミュニケーションをとることが極めて重要であり、その上で、日銀が市場との対話を行い、客観的に政策の判断をするだろう。現在は金融政策の正常化のプロセスの最中にあり、その方向感は変わらないであろう。

〔中国・韓国との外交について問われ、〕総裁選での討論会等において、新総裁は、対話を重視し、バランスの取れた外交を行うといった、現実感に即した発信をされていた。今後も外交面で現実的な対応をされるものと思っている。

〔選択的夫婦別姓制度について問われ、〕経団連は、女性の活躍推進の観点から、選択的夫婦別姓制度の導入が必要だと考えている。根本にある女性活躍推進を目指す思いは新総裁も同じであると考えている。

経団連としては、企業の声や従業員の声をしっかり聞き、発信しながら、政府・与党に対して冷静かつ建設的な対話を重ねていきたい。合わせて、既に国会に提出されている各党からの法案について、真摯に議論していただきたい。

〔高市新総裁のもとでの今後の課題感について問われ、〕私は、十倉前会長が策定された「FUTURE DESIGN 2040」を発展的に継承し、ビジョンの実現に至るロードマップを策定し、実践のプロセスに移していくことが至上命題である。

その意味で、新総裁には、潜在成長力を底上げし、「科学技術立国」「貿易・投資立国」というビジョンに向けた政策を着実に推進いただきたい。そのためには、政治の安定が必要で、連立の拡大を模索いただきたい。また、少数与党であれば一般的に市場からは財政拡張的だと受け止められかねないので、中長期の財政健全化に向けた発信は一定の必要性があり、海外からの日本の財政に対する信認を得続けていくことも重要である。

【政治との連携強化に関する見解・主要政党の政策評価】

山積する重要課題の解決に向け、政策本位の政治を実現する取り組みの一環で、経団連として本年も、政治との関係ならびに政治寄附に関する考え方である、「政治との連携強化に関する見解」をとりまとめるとともに、会員が政治寄附を実施する際の参考として、「主要政党の政策評価」を策定し、本日発表した。

〔日本経済が停滞し、国民生活が向上していない中で、過去11年間に続き、今年も自民党の政策を「高く評価」していることについて問われ、〕2014年以来、毎年、経団連の事業方針に照らしてその時々の主要政党の取り組み・実績を評価しているが、経団連が掲げる政策の方向性と軌を一にする形で政策を推進され、一つひとつ着実に成果を重ねてきているものと認識している。

他方、長期で見ると、この10年強は「失われた30年」と呼ばれる期間にあった。私自身も会長就任当初より、「日本全体の視点」と合わせて「中長期の視点」を大切にしており、政治、とりわけ自民党には、強力なリーダーシップのもと、山積する中長期的な課題の解決に取り組んでいただきたい。経済界も、中長期的な視点に立ち、産業競争力の強化に向けた課題と社会課題の両面を解決すべく努力を続けていきたい。

〔自民党の政治資金をめぐる問題もあった中、政治寄附の呼びかけをやめるつもりはないかと問われ、〕私は、政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展が政治のあるべき姿だと思っている。これを大義とし、企業としても支えていくことは、企業の社会的役割であろう。

民主主義を適切に維持していくためには、相応のコストがかかる。同じ考え方を持って集まる党員からの会費や党の事業収入がまずは重要であり、加えて、企業からの自発的な民間寄附も期待される。

その意味で、企業があくまで自主的な判断に基づいて政治的寄附をすることは認められるべきものである。政治は中長期的課題を十分に解決できていない、という指摘は真摯に受け止める必要があるものの、自由主義経済のもとでの企業の健全な発展、国民生活の向上に資する政策を進める政党への政治寄附を呼びかけていくという方針に変わりはない。

引き続き、経団連として、前提となる政治資金の透明性や政党のガバナンスの一層の向上を政治に強く求めていく所存である。

【WTO改革】

〔現在のWTOが抱える問題、および今月のWTOミッションを通じてどのような改革を求めるかを問われ、〕自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向け、世界共通のルールの適用が望ましく、WTOの役割は引き続き重要である。他方、WTOは十分に機能していないと認識している。

現在のWTOについては、一か国でも反対すると意思決定ができない、サステナビリティやデジタルといった新たな課題に対応できていない、決められたルールが遵守されない、という3つの問題意識を持っている。WTOの改革を行い、改革の到達点として「WTO2.0」の構築を求めていく。

WTO2.0への道筋として、2023年のB7東京サミットにて「自由で公正な貿易投資クラブ」を提唱した。これは、鉱工業品関税の撤廃や、市場歪曲的補助金の禁止などを含むハイレベルな貿易投資の基準にコミットする有志国によって形成されることを想定している。  このクラブが触媒の役割を果たし、クラブ自体の参加国・地域を拡大し、WTO2.0につなげるべく、難しい課題ではあるが、WTOに働きかけていきたい。

以上

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