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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 ステルスマーケティング規制に関する指定告示案等に対する意見

2023年2月22
一般社団法人 日本経済団体連合会
消費者政策委員会 消費者法部会

景品表示法(景表法)に基づく「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」告示案及び「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」運用基準案について意見を述べる機会に感謝する。

近年、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が問題になっていることから、今般、ステマに対して景表法上一定の規制を及ぼすべく、景表法に基づく不当表示の指定告示を新たに定めることが提案されている。経団連としても、消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するような表示行為に対して厳格に対応していく方向性について異論はない。

他方で、これまで問題なく社会的に受容されてきたような表示にまで規制が及ぶのであれば、真っ当な事業者の広告宣伝活動を萎縮させ、長期的には消費者を含む社会全体にとっての損失となるおそれがある。そのため、運用基準は、具体例を多く盛り込みながら、合理的かつ明確な判断基準を示すことが望ましい。

個別の論点に関しては、下記の通りに意見を提出する。

1. 告示案について

意見1

本告示の制定により規制対象になるのは、告示施行後に事業者又は第三者が行う表示行為のみであるとの理解でよいか。特にアフィリエイト広告については、施行前になされた表示まですべて確認し、必要な対応をとることは事実上不可能であるため、配慮されたい。

2. 運用基準案について

意見2

対象:第1「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の規制趣旨

規制の趣旨を明確化する観点から、ステマによって一般消費者にどのような不都合が生じるのかについて、消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会報告書」(2022年12月)37頁の次の記述を運用基準にも盛り込むべきである。

「一般消費者は、事業者の表示であれば、ある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得ると考えており、商品選択の上でそのことを考慮に入れる一方、事業者の表示であるにもかかわらず、そのことを判別できない場合、一般消費者は当該事業者の表示ではないと考えてしまう、又は、そのおそれがあることにより、商品選択における自主的かつ合理的な選択を阻害されるおそれがある。」

意見3

対象:第2の1(2)イ(ア)
  1. ① 「事業者が第三者に対して、当該事業者の商品または役務について表示してもらうことを目的に、当該商品又は役務を無償で提供するなどの結果として」との記載について、試供品や、本来の内容に比し短時間にとどめる役務など、通常の商品や役務とは言えないものを無償で提供したとしても、「当該第三者の自主的な意思による表示とは客観的に認められない場合」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

  2. ② いわゆるインフルエンサー等の第三者に対して無償で商品や役務を提供する場合、「感想をSNS等に投稿するかしないかは自由」「投稿する場合には自身の自主的な意思に基づいて投稿内容を決定してほしい」「今後の商品や役務の提供に今回のSNS投稿行動が直ちに影響するものではない」等の文言を示し、それ以外に当該第三者の投稿(表示)内容について指示等がされない場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」とは言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見4

対象:第2の1(2)イ(イ)

「当該第三者に経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたり、言動から推認させたりする」との記載について、とりわけ「言外から感じさせたり」という部分に具体例がなく、事業者に過剰な萎縮効果をもたらすおそれがある。第三者が主観的に感じたことを根拠として、事業者が「表示内容の決定に関与した」と行政庁が認定しようとする場合、事業者としては反論の余地が極めて小さくなることを懸念する。そこで、具体例を追記するか、考慮要素を追記すべきである。

意見5

対象:第2の2(1)ア

ECサイトや飲食店・旅行予約サイトにおいて、当該サイトを運営する事業者が出店事業者から委託を受けず、購入者に対し、サイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として当該サイトで利用できるポイントや割引クーポンを付与するときは、出店事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見6

対象:第2の2(1)ア(イ)

事業者がアフェリエイターとの間で、法令や業界の自主ルールに基づいた表示に関する注意事項を説明することや、客観的な情報の誤記を訂正させるなど、適切な表示の確保のため実務上必要な情報のやり取りを行うにとどまり、それ以上に表示内容に関するやり取りが行われない場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見7

対象:第2の2(1)ア(エ)
  1. ① ECサイトや飲食店・旅行予約サイトにおいて、出店する事業者が購入者に対し、サイトのレビュー機能による投稿やSNSへの投稿に対する謝礼として、当該サイトで利用できるポイントや割引クーポンを付与するときに、事業者が「レビューを投稿するかしないかは自由」「レビューを投稿する場合には自身の自主的な意思に基づいて投稿内容を決定してほしい」等の文言を事業者のサイト等に示し、それ以上に当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りがされない場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

  2. ② 上記①の場合に、当該購入者が実行した投稿の内容に商品やサービス内容につき客観的に誤った記載があるときに、事業者の指摘によって購入者が投稿内容を修正したとしても、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見8

対象:第2の2(1)ア(カ)

事業者が、自社商品に関する口コミを投稿できるサイトを運営している場合で、差別的表現等、社会的に見て不適切な表現の投稿がないかをレビューし、問題があると判断した投稿を削除する場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見9

対象:第2の2(1)ア(キ)・(ク)

事業者が第三者(特定、不特定を問わない)に対し商品を供与する際に、事業者が「感想をSNS等に投稿するかしないかは自由」「投稿する場合には自身の自主的な意思に基づいて投稿内容を決定してほしい」等の文言を示し、それ以上に当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りがされない場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

意見10

対象:第2の2(2)
  1. ①「新聞・雑誌発行、放送等を業とする媒体事業者が」との記載について、ここで例示されている伝統的なマスメディアだけでなく、インターネット上の商品比較サイト等の媒体であっても、自主的な意思で企画、編集、制作し表示を行うことがある。このような場合は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、伝統的なマスメディア以外の媒体における表示行為への萎縮効果を緩和するため、当該箇所を「新聞・雑誌発行、放送、インターネット上の報道や批評を業とする媒体事業者などが」に変更されたい。

  2. ②インターネット上の商品比較サイト等の媒体が事業者等に取材し、自己が運営するサイトにおいて商品の紹介を行う場合につき、媒体事業者が事業者等から謝礼や取材協力費等の名目で商品や役務を受領したとしても、それが試供品や、本来の内容に比し短時間にとどめる役務など、通常の商品や役務とは言えないものを無償で提供された場合には、媒体事業者が自主的な意思で記事を書くのであれば、事業者が「表示内容の決定に関与した」と言えないと解してよいか。そうであれば、運用基準に具体例として追記されたい。

3. その他

意見11

事業者が消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(2022年6月改正)に従い、第三者(インフルエンサー、アフィリエイター等)に対し、広告であることの明確化を含め教育・啓発等を行っていたにも関わらず、当該第三者が広告であることを明確化せずに表示を行った場合にまで、当該事業者が行政指導又は行政処分の対象となるのは適切ではないため、運用上配慮されたい。

以上

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