1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 科学技術、情報通信、知財政策
  4. バイオトランスフォーメーション(BX)実現のための重要施策

Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 バイオトランスフォーメーション(BX)実現のための重要施策

2024年4月16
一般社団法人 日本経済団体連合会

(PDF版はこちら

Ⅰ.はじめに

バイオエコノミーは、グリーントランスフォーメーション(GX)やサーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャー・ポジティブ(生物多様性・自然保護)に貢献する循環型の経済社会である。わが国が直面する資源・エネルギー問題の解決、食料安全保障の確保にも資するものであり、経団連が目指す「サステイナブルな資本主義」実現のカギを握る(図表1)。

図表1 社会課題の解決に資するバイオエコノミー

経団連は、2023年3月に提言「バイオトランスフォーメーション (BX)戦略 ~ BX for Sustainable Future ~」#1を公表し、「バイオテクノロジーの進化は、環境破壊や資源制約といった社会課題の解決と、持続可能な経済成長を両輪で実現し、社会のあり方そのものを大きく変革する、すなわち、バイオトランスフォーメーション(BX)をもたらす可能性を秘めている」との考えを掲げた。

同提言は、国内外を問わず、産学官の様々なステークホルダーから前向きに受け止められ、政府による予算措置等の環境整備の他、研究開発の強化やスタートアップの振興など民間側での自助努力も進みつつある。大手企業においては、バイオ医薬品開発へのAI活用など、バイオテクノロジーとAI技術との融合に取り組むケースも見られるようになった#2

バイオエコノミーを早期に確立すべく、わが国は産学官一体となって改革のスピードをより一層高めることが必要である。そこで、先の提言を踏まえ、2024年6月公表予定の政府次期バイオ戦略の策定に向けてとりわけ重要な施策について以下のとおり提言する。なお、先の提言で指摘した事項#3については、本提言での言及の有無にかかわらず、引き続き必要な取組みであることに変わりはない。

Ⅱ.国内外の動向

提言に先立ち、バイオエコノミーに関する国内外の動向を確認する。

国内では、2023年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」#4において、2022年に引き続き、AIや量子技術と並んで、バイオものづくり、ゲノム創薬や再生医療に対する投資拡充が謳われた。また、わが国の経済安全保障上、中長期的に重要な先端技術を対象とする「経済安全保障技術育成プログラム」(K Program)においても、バイオ関連技術が複数採択されている#5。各省庁においても、ホワイトバイオ分野(工業・エネルギー)では経済産業省、レッドバイオ分野(健康・医療)では内閣府健康・医療戦略推進事務局、グリーンバイオ分野(食料・植物)では農林水産省が中心となって、様々なプロジェクトや基金事業が進められている#6

経団連も提言を打ち出すのみならず、国内外のバイオコミュニティとの連携の強化#7に取り組むほか、適用分野毎にホワイト、グリーン、レッドのワーキンググループを設置し議論を深めてきた。

他方、世界各国もバイオエコノミーの実現に向けた取組みを加速している#8。米国は2022年9月の国内バイオ産業振興に関する大統領令#9に続き、2023年3月には新たな目標と戦略を発表し、20年以内に現在使用されているプラスチックの90%をバイオ原料由来に置き換えるとしている#10。欧州では、欧州委員会が「パッケージングとバイオプラスチックに関する新しい規則案」#11を2022年11月、「森林破壊防止のためのデューデリジェンス義務化に関する規則」#12を2023年6月に公表するなどルール整備を着実に進めている。英国もバイオ分野を優先的科学技術のひとつとして掲げ、2023年12月に「National Vision for Engineering Biology」#13を発表した。アジアにおいても、中国が2022年5月に計画を発表#14、タイをはじめとするバイオマス資源国がバイオを重点分野に位置づけている。シンガポールは世界に先駆けた培養肉承認に加えて、合成生物学の国際フォーラムを2023年2月に開催#15するなど、各国の活動が活発化している。中東では、サウジアラビアが「Vision 2030」#16のもと、石油依存からの脱却に向けてバイオ産業の育成に取り組んでいる#17

このようにバイオをめぐる国際競争は激化の一途をたどっており、わが国としては重要な施策に重点的にリソースを投下することが必要である。

Ⅲ.分野横断的な重要施策

バイオは適用分野が広いからこそ、分野横断的に取り組むべき施策も多い。

そこで、先の提言で打ち出した5つの戦略を踏まえて、BX実現のための分野横断的な重要施策を示す。

  1. 戦略① バイオで価値を創造する ~エコシステムの構築
  2. 戦略② バイオで国民のくらしを守る ~経済安全保障の確保
  3. 戦略③ バイオで世界に打って出る ~グローバルなルール形成
  4. 戦略④ バイオを国の重要課題に ~司令塔による政策の一元化
  5. 戦略⑤ バイオを社会全体で応援する ~国民理解の醸成

1.課題オリエンテッドなロードマップの策定

バイオエコノミーは、経済成長もさることながら、地球環境問題、Well-being、食料や資源の確保といった多様な「課題」の解決に対する貢献が期待されている。また、バイオは基礎研究から社会実装・普及までに10年単位の期間を要するものも多く、長期的な視点で取り組むことが必要である。

他方、政府が現在見直しを進めているロードマップは、バイオプラスチックやバイオ医薬といった個別の「技術」や「市場」に基づいた区分で描かれている。また、2030年までと比較的短期をターゲットにしている。これに対して、大型の設備投資が必要なホワイトバイオ分野で顕著だが、投資対効果の予見性が低いとしてより長期のロードマップ策定を求める声が企業からあがっている。

そこで、政府においては、2040年または2050年をターゲットとして、技術・市場別ではなく解決すべき「課題」別に、達成すべき道筋に必要な技術や市場の育成をバックキャストしてプロットする「課題オリエンテッドな」ロードマップを策定することを求める。その際、民間の投資を促進する観点から、20年先を見据えて今後10年に達成すべき市場目標を明確にする必要がある。

さらに、わが国としての勝ち筋、開発を進めるべき技術の見極め、商業化に向けた開発支援のあり方と併せて、2040年や2050年といった長期的視点及び市場環境や国際情勢の変化等を踏まえながら、適時にロードマップを見直すことが肝要である。同時に、海外でも急速に技術開発が進んでいる状況を踏まえると、国際的な技術動向の把握と分析が不可欠であることは論を俟たない。

2.サプライチェーンの可視化・強靭化

バイオエコノミーは、経済安全保障上、重要な分野のひとつである。したがって、半導体の分野でも経済安全保障上の対応が不可欠であることと同様に、バイオエコノミーにおいても安定的かつコスト競争力のある原材料の確保は重要な課題である。

強靭なサプライチェーンの構築に向けて、原材料の確保から輸送、貯蔵、製造を経て市場に至るサプライチェーンの可視化に取り組む必要がある。

原材料は、ホワイトバイオ分野やグリーンバイオ分野では、可食バイオマス(第一世代)から木質・草本類などの非可食バイオマス(第二世代)、その後は二酸化炭素・メタンなど(第三世代、第四世代)#18へと遷移することが見込まれているが、技術的に当面は非可食バイオマス(第二世代)が主流になると考えられる。また、レッドバイオ分野では、他家(同種)細胞や培養に関する原材料や部素材等も調達リスクを考慮する必要がある。

3.基礎研究から事業化・普及に至るパスの強化

有望なバイオテクノロジーのシーズはアカデミアを中心に数多く存在する。これらの技術開発にとどまらず、資金調達や国民理解などバイオエコノミー確立に向けた課題は山積している。基礎研究から事業化・普及へとつなげるため、経路(パス)に応じて以下の施策に取り組むべきである。

図表2 基礎研究から実用化・普及において必要な施策

【短期集中で取り組むべき施策】
(1) バイオコミュニティ活性化のための財政支援

基礎研究によるシーズ創出から、事業化・生産までをシームレスにつなぐバリューチェーンの構築には、大企業やスタートアップ、アカデミア等から成るエコシステムの構築が不可欠である。そこで、エコシステムの中心となるべきバイオコミュニティの活性化に取り組むことが肝要である。

政府は2つのグローバルバイオコミュニティと6つの地域バイオコミュニティを認定し、ネットワーク構築や活動の見える化・ブランド化等に取り組んでいる。認定に当たっては、課題解決のインパクトや事業化の蓋然性等を十分に精査して判断することが必要であり、継続的な精査によりコミュニティの質を維持・向上することが不可欠である。そのうえで有望な認定コミュニティに対しては、コミュニティの運営やネットワーク構築、研究開発成果の知財化などの支援人材が不足しているとの声が大きいことに鑑み、必要な予算を確保したうえで財政支援を行うべきである。

(2) ディープテック・スタートアップの育成

CO2を原料とする化学製品や培養肉、再生・細胞医療技術といった最先端のバイオテクノロジーの起源は、既存製品と比較してスタートアップ、とりわけディープテック・スタートアップ#19の担う割合が大きい。かかるスタートアップの技術が社会実装されるまでには、設立から10年以上といった長期間を要することが多く、将来を見据えた早い打ち手が必要である。

そうした中、わが国では米国など諸外国に比して、大学や研究機関といったアカデミアの研究成果に基づくスタートアップへの支援体制が未整備である、とりわけレイターステージにおいて国内では充分な資金調達が困難であるといった課題が存在する。

政府においては、(1)のとおり、大学や研究機関を含めバイオコミュニティへの財政的支援を通じた、知財化などスタートアップ支援体制の強化に加え、バイオテクノロジーに精通した海外ベンチャーキャピタルの誘致をはじめグローバルな投資家へのプレゼンス向上により、フェーズに応じた切れ目のない資金調達環境の整備を期待する#20

(3) バイオエコノミーに関わる人材の育成・確保

バイオエコノミーの早期確立に向けて、世界トップクラスの人材を含めた研究者に加え、バイオプロセスの設計や製造管理、品質管理等を担う技術者、さらに関連法規や知財戦略、資金調達等に通じた様々な事業・事業化支援人材といった、多様な人材の育成・確保が不可欠である。これは経済安全保障の観点からも重要な課題である。

まず、人材の量(マス)を確保する観点から、スタートアップやアカデミアを含めて産学官の人材流動性を高めることが肝要である。特に、人材確保に課題を抱えるスタートアップや、知財支援体制が不十分な大学などアカデミアに対して、大企業からの労働移動を促すことが重要である。大企業からスタートアップへの出向や副業・兼業も含めた労働移動の円滑化については、経団連もこれらを推奨しているところ#21、政府にもさらなる機運醸成を期待する。また、アカデミアの知財・法務ポストへの労働移動については、処遇を民間企業と同等程度まで引き上げることが有効である。

さらに、細胞培養はじめバイオ製造を担う人材を多数育成するため、政府系機関等による人材育成講座#22の拡充や、民間企業による見学受入・研修・インターンシップ等の実施・拡充が望ましい。

また、経団連は博士人材の活躍を提言しているが#23、研究者としてのみならず、スタートアップにおける技術開発や事業開発人材、技術に対する目利きと必要な資金・支援を提供するベンチャーキャピタリストとしての活躍も期待される。こうした国内の人材育成も重要ながら、短期的には海外ベンチャーキャピタリストの招致が効果的である。

バイオエコノミーに関わる将来的な人材の育成・確保に向けては、教育段階からの取組みも重要である。具体的には、大学の全学カリキュラムにおけるバイオ関連講義・実習の設置、民間企業との連携による実践的な教育プログラムの拡充や、研究者がスタートアップに挑戦した後も大学に戻ってこられる仕掛け、アントレプレナーシップ教育の普及などがある。

さらに、人材の裾野を広げるためには、キャリアパス例を明示して、とりわけ若手人材やトップクラス研究者、バイオとの融合を念頭に置いたエンジニア等の他業種の人材をバイオの世界に取り込むことが有効である。

(4) グローバルなルール形成

前述した欧州を中心とするルール形成の動きへの対応に加え、国内のバイオ産業育成やグローバルな市場創出に向けて、わが国として戦略的にルール形成に取り組むことが不可欠である。

グローバルなルール形成に参画するには、まずもってわが国のバイオに関する戦略や取組み、規制などが国際的に認知されること、および、バイオ分野の主要な国際会議等におけるわが国のプレゼンス向上が不可欠である。しかしながら、現在のところ、政府のバイオ戦略や取組み、関連する規制はほとんど英語で公表されていない。そこで、各省庁は必要な予算・人員を確保したうえで、次期政府バイオ戦略は勿論のこと、バイオ関係の規制や取組みについて日本語のみならず英語で公表し、バイオ分野の主要国際会議、具体的には、OECDのバイオ関連会合への参加、国際的な各種イベントやフォーラム#24におけるセッションの開催等を通じて、わが国のビジョンや保有する技術を積極的かつ継続的に発信・訴求し、わが国のプレゼンスを向上すべきである。また、2025年大阪・関西万博やG7、G20におけるサテライトイベントの開催も効果的である。国際的な窓口として外務省の役割にも期待する。

なお、ルール形成においては、とりわけISO(国際標準化機構)などの国際標準#25の世界において、技術だけでなく、社会課題や概念、価値といった上位レイヤーがその対象となってきている。バイオにおいても、技術的な強みのみならず、わが国が有する自然観などの思想・哲学レベルのコンセプトを打ち出していくことが重要である。

わが国が取り組むべきルールのうち、ホワイトバイオなど分野別のものは後述のとおりであるが、分野横断的かつ現在すでに議論が進行しており留意が必要な国際ルールとして、DSI#26利益配分メカニズムがある。2024年10月に開催される生物多様性条約締約国会議(COP16)での詳細設計が予定されている中、わが国としては、本メカニズムへの参加は任意とし、①企業経営にとっての予見可能性を高めること、②実証可能性を考えると拙速な議論は避けるべきで時間をかけて議論すべきこと、③政府間での作業部会の進捗に応じて産学官で緊密な連携を確保すべきこと、④何らかのメカニズムが導入される場合でも遡及適用されるべきでないことを前提に、研究開発やイノベーションを阻害しない形で決着することを目指すべきである。

さらに、バイオエコノミーの健全な発展に向けて、バイオテクノロジーの悪意ある利用を防止する「バイオセキュリティ」に関するグローバルな動向を注視するとともに議論に参画すべきである#27

【中長期的に取り組むべき施策】
(5) バイオデータ基盤整備

マテリアルズインフォマティクスによる材料開発や、新規モダリティを用いた新薬開発などの加速に向けて、バイオデータの連携・利活用を支える基盤の役割は大きく、その整備が不可欠である。

例えば、グリーンイノベーション基金事業におけるCO2固定微生物のライブラリ・データベース構築など様々な試みが開始されている#28。他方、2023年6月に内閣府から公表された「バイオデータ連携・利活用に向けたガイドブック」#29でも指摘されている通り、現状はデータ連携範囲が限定的であるほか、データベースの再評価や継続的なアップデートの未対応、ビッグデータの未整備、国際連携の不足といった課題が残っており、未だ十分に機能しているとは言い難い状況にある。

官民双方のバイオ研究における活用促進と社会実装の円滑化に向け、これら課題への早急な対応が必要である。産業界においても、協調領域における企業間のデータ共有はじめデータ利活用に向けて迅速に取り組んでいくことが重要である#30

(6) 国内製造基盤の構築・拡充

バイオエコノミーは世界的に確立途上にあり、将来市場を見通すことは困難である。よって、民間企業のみでCDMO#31やCMO#32、CRO#33などの製造基盤の構築・拡充やコスト削減に取り組むことは現実的でなく、現時点においては政府による支援が欠かせない。例えば、アジア諸国では、再生医療等製品の製造施設の新設等、民間企業による設備投資に対して政府が支援を行い、その産業化を後押しする動きがある#34。そこで、わが国においても民間企業の大規模な設備投資を促すために、国としての戦略上必要な用途に対して、積極的な財政支援が望まれる。その際、先端半導体の例も踏まえれば、国内企業に限らず、海外企業の誘致も選択肢のひとつである。

CDMOやCROに加えて、製造時に使用する部素材や消耗品、研究開発や品質管理に用いる分析・計測機器を供給する企業への支援も重要である。

他方、スケールアップ技術や製造プロセスの開発、治験薬の製造ならびにコスト削減に向けて、アカデミアやスタートアップがCDMO等を安価に利用できるよう、資金面の支援を拡充するなどの環境整備も重要である。民間企業が保有する装置を共有する仕組みの構築、かかる共有に対する政府からのインセンティブ付与、スタートアップ等が安価に利用できるよう政府系研究機関に装置を設置することなども有効である。さらに、創薬支援企業が連携し一連の創薬プロセスにおけるシームレスな支援を提供する動きもあり#35、これを後押しする施策も効果的である。

(7) 国民理解の醸成

わが国は発酵食品や米の品種改良など歴史的にバイオとは食文化のレベルで深い関わりを有する国である。こうした食品に加えて、バイオ製品が広く市場に受け入れられるためには、バイオ製品の社会的意義を含めた国民理解を醸成していく必要がある。経団連としても、先の提言を打ち出すに当たり、「バイオレンジャー」を用いた動画やパンフレットを通じて、バイオテクノロジーに対する親しみやすさを強く訴求した。

バイオに対する国民の不安や懸念を払拭するうえで政府の役割は極めて大きい。充分な予算を確保したうえで、ゲノム編集をはじめとするバイオテクノロジーの社会課題解決における有用性や経済成長に対する貢献、包含する科学的リスク等を国民に訴えて意識を高める活動、所謂サイエンス・コミュニケーションに粘り強く取り組んでほしい。その一環として、世界各地の学生が合成生物学によって社会課題を解決するアイデアを競う「iGEM」#36の存在を広く知らしめ参加を推奨することも、バイオを受け入れる風土を醸成するうえで有効である。

4.バイオ戦略推進体制の強化

上記施策を一気通貫でシームレスに実現し、かつ、中長期的に取り組むために政府側の体制整備も不可欠である。

政府はバイオエコノミーの市場規模が2030年に92兆円に達すると見込んでいる#37。このようにバイオは短期間での急速な成長が期待される、わが国における重要な成長分野の一つである。そのため、持続的な成長を実現するための強力な体制整備が急務である。

すでに2022年度の政府予算において総額で1兆円規模の資金的な支援策が手当てされているが、経済産業省や農林水産省、環境省など分野ごとに所管が分かれている。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局において総合的に管轄しているものの、バイオのみを専門的に扱う部局ではなく局内における一部署的な位置付けにあり、担当している人員も少数で予算権限がない。

さらに、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(骨太方針2023)」において、重点分野としてバイオと同様に宇宙開発や健康・医療分野があげられているが、下表のとおり、バイオはこれらの分野と比較して政府における推進体制が十分に整備されている状況とは言えない#38

そこで、各省庁の政策を調整・統合して国家バイオ戦略を策定・推進するために、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の人員を増強して組織体制を強化し、予算権限を付与すべきである。

図表3 分野別の将来市場規模と政府側推進体制

Ⅳ.適用分野毎の重要施策

ここまで分野横断的な重要施策を提示してきたが、バイオは適用分野によって異なる課題を抱えており個別の対応も不可欠である。そこで、ホワイトバイオ、グリーンバイオ、レッドバイオの3分野における重要施策を示す。

1.ホワイトバイオ(工業・エネルギー)

ホワイトバイオは、図表4のとおり、わが国の経済安全保障とカーボンニュートラルなど社会課題解決に資する分野であり、既存産業の蓄積や森林資源など活かすべき強みも多い。ホワイトバイオの確立に向けて取り組むべき施策を提言する。

図表4 わが国におけるホワイトバイオの価値と強み

(1) バイオ製品を受け入れる市場の形成

現状、バイオ由来の製品は化石燃料由来の製品に対して高コストであり普及の足枷となっており、このギャップを埋めることが必要である。

そこで、バイオ製品の環境価値(LCA#39やCFP#40)の計量方法に関する国際標準化、クレジットなどの経済価値に換算する手法の確立およびルール整備などが不可欠である。さらに、バイオ製品の一定割合導入に関する義務化の必要性を検討すべきである。その際には、既存製品とのコストギャップを縮小するために補助金の支給なども併せて検討することが肝要である。

(2) 原材料の確保

ホワイトバイオの確立に向けて、安定的かつコスト競争力ある原材料の確保が必要である。もちろん環境価値の観点も忘れてはならない。

第一世代のトウモロコシやサトウキビ、油脂などの可食バイオマスはすでに世界中で獲得競争が過熱している。そこで当面は、第二世代の原材料である非可食バイオマスが主流と考えられるところ、各種未利用資源に加えて、わが国における数少ない自給可能な資源である国産木質バイオマスの確保・活用について、各省連携のもとで一次産業のあり方を組み込んだ計画を策定すべきである#41。その際、生態学的な現状把握と将来的な生産性向上を織り込んだ利用可能量の推定を行うことが重要である。また、従来種よりも成長性が高く花粉量の少ないエリートツリーの普及・振興による資源循環の加速や、原材料供給を担うインフラとしての国内林業の活性化、化学品等への変換技術#42の開発・普及に取り組むこともが必要である。

中長期的には第三世代・第四世代の原料として安価かつ安定的なCO2やメタン、水素等の確保、およびこれら原材料のトレーサビリティに係る規格・認証等の整備に向けた取組みが必要である。

2.グリーンバイオ(食料・植物)

グリーンバイオは、図表5のとおり、わが国の食料自給率の向上や食料安全保障の確保、さらに資源自給率の向上にも資する。グリーンバイオの確立に向けて取り組むべき施策を提言する。

図表5 わが国におけるグリーンバイオの価値と強み

(1) 細胞性食品等の国内上市環境整備

培養肉や培養魚といった細胞性食品がフードテックとして世界的に盛り上がりを見せている。2020年にシンガポールにおいて培養肉の販売が承認されたことに続き、2023年には米国でFDA(米国食品医療局)およびUSDA(米国農務省)による培養肉販売の承認がなされた。

こうした中、わが国でも、フードテック関連のスタートアップが生まれている一方、安全性やリスクに関する国内議論が遅々として進展せず、上市環境が未整備な状況にある。

そこで、2025年大阪・関西万博における培養肉の試食実施をひとつのターゲットとして、米国やシンガポールなど先行国の規制を参照し、細胞性食品に関する安全基準や試食・販売等に係るガイドラインを至急策定すべきである。

また、米国では精密発酵で製造された乳清(ホエイ)タンパク質もFDAによる認証を取得し販売開始されていることを踏まえ、精密発酵由来品に関する上市環境整備にも至急着手すべきである。

(2) 細胞性食品のグローバル市場形成支援

シンガポールや米国で先行的な取り組みが進む中、わが国のフードテック関連企業の世界進出も鑑みれば、細胞性食品に係る規制の国際的なルールの統一がグローバルな市場形成においては重要である。

これに向けて、細胞性食品の定義やその安全性等について、国際標準化を含めたルール形成を推進することが必要である#43

(3) 国産木質バイオマス資源の利用促進・循環加速

上述のとおり、木質バイオマス資源はホワイトバイオにおける原材料として重要であるが、輸入に依存することは経済安全保障の観点から望ましくなく、国内資源の利用促進が必要である。利用の促進を通じて資源の循環が加速することで、木材自給率#44が向上し国富流出の抑止にもつながる。

そこで、国産材を活用した木材製品の開発・製造・普及やカスケード利用#45の促進、森林ファンド#46を通じた国産材生産とカーボンクレジット創出等に取り組むことが肝要である。木材製品の例として、今後の需要増加が期待されるCLTパネル#47等については、標準化・規格化を通じて国内および海外で普及を図ることが重要である。

3.レッドバイオ(健康・医療)

レッドバイオは、図表6のとおり、健康先進国の実現に向けて、わが国が培ってきた創薬や医療における強みを活かすべき分野である。レッドバイオの確立に向けて取り組むべき施策を提言する。

図表6 わが国におけるレッドバイオの価値と強み

(1) 創薬力強化に向けたメリハリある研究開発体制

ディープテックでは、傍流の技術やアイデアが事業化に結び付くというケースも多く、基礎研究の裾野を広げておくことは、産業、とりわけレッドバイオの底力に大きく影響する。

そこで、生命科学や創薬科学分野を含む裾野の広い学術研究は公的資金、臨床試験など社会実装に繋げていくステージは主に民間資金と、研究開発のステージに応じたメリハリをつけることが重要である。

さらに、革新的なイノベーションのシーズは想定外の研究から生み出されることが多いことに鑑み、学術研究に対する公的資金支援においては、すでに国際的な競争が過熱している領域に集中的に投下するのではなく、わが国全体として研究領域の多様性が拡大するよう幅広く支援を行うことが重要である#48

(2) 多様なイノベーションの適切な評価

予防・診断・治療・予後のあらゆる場面で個別化医療の提供を実現するためには、これまで以上にアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して、高度な医療・医薬技術を適用したソリューション開発が必要である。

ディープテックである創薬は、成功確率が低く、高額な投資を長期間にわたって行う産業特性を持つ。多様なモダリティを用いた各種研究開発の世界的な競争が激化する中、わが国企業も、抗体薬物複合体(ADC)、中分子、核酸、再生・細胞医療、遺伝子治療等において積極的な投資を行っている。

こうした巨大投資から生まれる革新的イノベーションの出現を見据え、医療経済価値を含めた新規ソリューションの価値や特徴に基づく新たな価格算定方式の導入を急ぐことは、持続可能な形での投資循環を実現するために不可欠である。

(3) 迅速かつ効率的な治験実施体制の強化

昨今、新規医薬品等の開発において、グローバルな臨床試験の重要性が高まっている一方、わが国の治験パフォーマンスは海外に比して低いとの指摘があり#49、ドラッグラグ・ロス#50の拡大につながる懸念がある。

そこで、国際共同治験においてわが国が選ばれないリスクを解消し、遅滞なく参画するための環境整備として、治験手続きや関連文書の標準化・電子化、薬事に関する国際規制調和の推進など諸施策の実行・加速が必要である。さらに、国際水準の治験を強力に推進できるプレイヤーを育成すべく、標準型電子カルテの導入といった医療DXの推進や、臨床研究中核病院を中心とした治験ネットワークの強化も重要である。

また、治験薬製造拠点としての国内CDMO等に対する設備投資に関しては国家的な支援が進むが#51、それら設備を稼働させるための高度なバイオの知識・技術を有する専門人材#52の確保にも取り組む必要がある#53

さらに、分散型臨床試験#54など新しい形での治験に対応する必要性も高まることもあり、治験実施体制を支えるための国内CRO、ARO#55、SMO#56の育成・支援も求められる。

Ⅴ.産業界のコミットメント

世界各国による競争が激しさを増す中、わが国政府による次期バイオ戦略の公表を契機に、官民一体となってバイオエコノミーの確立に向けた取組みを拡大・加速すべく、産業界として具体的なアクションをとっていく。

1.各社の具体的取組み

バイオによる社会課題解決と経済成長の実現に向けて、高い目標を掲げ、具体的なアクションに着手している企業も多い。個別企業による取り組みに加えて、他業種やアカデミア、スタートアップとの協業やコンソーシアムの形成等の様々な形態がある。今後も各種取り組みの拡大・深化が期待される中、ここでは参考として、定量的に測定可能な事例の一部を以下に示す。

図表7 課題オリエンテッドな各社の具体的な取組み(その1)

図表8 課題オリエンテッドな各社の具体的な取組み(その2)

2.重要施策の実現に向けたアクション

(1) 大学シーズの社会実装に関する検討

バイオはじめ国内の大学発スタートアップの拡大・成長における課題(ボトルネック)を検証し、必要な施策を取りまとめ、政府等に働きかける。2024年度中の提言公表に向けて検討を行う。

(2) バイオエコノミーにおける国際標準戦略の推進

経団連が2024年2月に公表した「グローバルな市場創出に向けた国際標準戦略のあり方に関する提言」#57を踏まえ、レッドバイオでは標準化を通じた再生医療等の国際規制調和やサポーティングインダストリー製品の品質規格の策定、グリーンバイオでは食料安全保障も見据えた培養肉の安全性等の規格化、ホワイトバイオでは安定的な原料確保に向けた原料規格の策定等に取り組む。

(3) プレイヤーの裾野拡大とネットワーク構築の機会創出

国内外のステークホルダーに対する発信と対話、国内外バイオコミュニティと経団連会員企業の連携促進に引き続き取り組むとともに、バイオにフォーカスしたKIX(Keidanren Innovation Crossing)の開催#58や経団連Slackを活用した関係者間の交流促進#59など新たな活動を行う。

(4) レビューの実施

タイミングを見ながら提言で掲げた項目の進捗状況の分析・検証を行い、必要に応じて追加提言を取りまとめ公表する。

Ⅵ.おわりに

本提言では、BXの実現に向けた重要施策を示した。BXは、バイオエコノミーの活用を通じて既存の産業構造を転換し、経団連の目指す「サステイナブルな資本主義」を実現するカギとなる。

経団連は、政府、アカデミア、スタートアップなどのステークホルダーとともにBX実現に向けて注力する所存である。

以上

  1. https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/015.html
  2. 三井物産はNVIDIAと提携しアステラス製薬や小野薬品工業、第一三共など製薬企業に対して最先端のAI創薬環境を提供
    https://www.mitsuipr.com/news/2024/0208-1/
  3. 例えばカルタヘナ法への対応など
  4. https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf
  5. 生体分子シークエンサー、脳波等を活用した高精度ブレインテック、マルチガスセンシングシステム技術、止血製剤製造技術など
    https://www8.cao.go.jp/cstp/anzen_anshin/kprogram.html
  6. 例えば、ホワイト分野(工業・エネルギー)では、経済産業省により、グリーンイノベーション基金事業において「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」(1,767億円)、微生物等改変プラットフォーマー育成等に向けた「バイオものづくり革命推進事業」(3,000億円)の両プロジェクトが開始された。レッド分野(健康・医療)では、内閣府健康・医療戦略推進事務局を中心に経済産業省・厚生労働省・文部科学省等による連携のもと、バイオ医薬、再生・細胞医療、遺伝子治療に係る各種プロジェクトが進行している。グリーン分野(食料・植物)では、農林水産省や林野庁により、持続的な一次産業の実現や木材の需要拡大に向けた取組みが進められている。
  7. 2023年6月には訪米バイオミッションをワシントンDC、ボストンに派遣
    https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0706_01.html
  8. その反面、世界全体の化石燃料に対する補助金は高水準で推移しており、バイオ製品はコスト面の課題を引き続き抱えている
    https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/support-for-fossil-fuels-almost-doubled-in-2021-slowing-progress-toward-international-climate-goals-according-to-new-analysis-from-oecd-and-iea-japanese-version.htm
  9. https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2022/09/12/executive-order-on-advancing-biotechnology-and-biomanufacturing-innovation-for-a-sustainable-safe-and-secure-american-bioeconomy/
  10. https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2023/03/Bold-Goals-for-U.S.-Biotechnology-and-Biomanufacturing-Harnessing-Research-and-Development-To-Further-Societal-Goals-FINAL.pdf
  11. https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_22_7155
  12. https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/05/16/council-adopts-new-rules-to-cut-deforestation-worldwide/
  13. https://www.gov.uk/government/publications/national-vision-for-engineering-biology/national-vision-for-engineering-biology
  14. 「第十四次五カ年計画バイオエコノミー発展計画」
  15. https://ebrc.org/ebrc-global-forum-2-0/
  16. https://www.vision2030.gov.sa/en/
  17. https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/1130_05.html
  18. 「第三世代」「第四世代」ともにCO2を炭素源とするエネルギー・化学品製造を指すが、第三世代は光エネルギー、第四世代は電気エネルギー等を介在することに違いがある。
  19. ディープテックの定義には諸説あるがいずれも「人々の生活や社会に大きな影響を与える科学的な発見に基づく革新的技術」を意味する点で共通
  20. アカデミアやスタートアップの技術シーズを社会実装するに当たっては、規制や技術等に関する、大企業が持つ様々なノウハウの共有が有効である。大企業の中には、戦略的判断のもとでアカデミアやスタートアップに対して、自社の研究開発環境の提供やハンズオン支援を行っているケースもある。こうした取り組みを一層拡大すべく政府による支援が期待される。また、令和6年税制改正要望に盛り込まれたイノベーションボックス税制の創設にも期待する他、基礎研究や工業化研究への公的支援強化も引き続き重要である
  21. 経団連「2023年度経営労働政策特別委員会報告」「2024年度経営労働政策特別委員会報告」
  22. 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とGreen Earth Instituteによる「バイオものづくり人材育成講座」など
  23. 経団連「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に向けた提言」
    https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/014.html
  24. グローバルバイオエコノミーサミットやバイオ燃料フォーラムなど
  25. ISO/TC276が「バイオテクノロジー」を扱っている。幹事国はドイツ、わが国の国内審議団体は(一社)再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)である
  26. Digital Sequence Informationの略で遺伝資源の塩基配列情報を意味する。2022年12月の生物多様性条約締約国会議(COP15)において、昆明・モントリオール生物多様性枠組みの下、DSIに関する多数国間メカニズムの設置と公開作業部会を設置してCOP16(2024年)に向けて多数国間メカニズム以外の方策も含めて検討することに合意したもの
  27. 米国では2022年9月の大統領令においてバイオセキュリティの推進にも触れている他
    https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2022/09/12/executive-order-on-advancing-biotechnology-and-biomanufacturing-innovation-for-a-sustainable-safe-and-secure-american-bioeconomy/)、2024年1月には「新興バイオテクノロジーに関する国家安全保障委員会」(NSCEB)から中間報告書が発行されている
    https://www.biotech.senate.gov/press-releases/interim-report/
  28. 2021年に運用開始した「NII研究データ基盤」
    https://rcos.nii.ac.jp/service/
  29. https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/data_renkei_1.pdf
  30. 例えば、日本製薬工業協会から企業間における臨床試験データの共有促進のために解決すべき課題が報告されている
    https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/ds_202212_d_sharing.html
  31. Contract Development & Manufacturing Organization:再生医療等製品や医薬品の製造工程の開発から、治験薬や商業生産までを受託する機関
  32. Contract Manufacturing Organization:医薬品の製造を受託・代行する機関
  33. Contract Research Organization:企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品等の臨床開発及び治験に関わる業務を、受託または労働者派遣等で支援する機関
  34. 2022年、GenScript Biotechはシンガポールに約3千m2の新規製造施設を開設
    https://www.genscript.jp/genscript-sets-up-state-of-art-manufacturing-facility-in-singapore-to-strengthen-manufacturing-capability.html
  35. 湘南ヘルスイノベーションパークに拠点を置く、Axelead Drug Discovery Partners、十全化学、スペラファーマ、東レリサーチセンター、メディフォードによる「湘南創薬支援コンソーシアム」が発足
    https://www.shonan-ipark.com/news/1515
  36. The International Genetically Engineered Machine competitionのこと。米マサチューセッツ工科大学において毎年11月頃開催される合成生物学の国際コンテスト(現在は欧州において開催)
  37. 「バイオ戦略2019」、「バイオ戦略2020」
  38. 2023年6月に政府がとりまとめた「宇宙基本計画」で見込まれる2030年代早期の宇宙産業市場規模 は約8兆円であり、バイオ分野はこの10倍以上に当たる。一方、わが国の宇宙政策については、総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部が設置され、担当省庁として内閣府宇宙開発戦略推進事務局が専門の部局として管轄しているほかに、文部科学省や経済産業省、総務省、防衛省ならびに国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)等のもとで同計画の実現を進めており、昨年度の予算規模としては約9,000億円である。また、健康・医療の分野においても総理大臣を本部長とする「健康・医療戦略推進本部」が設置され、内閣府健康・医療戦略推進事務局が関係省庁と連携し戦略実現に向けた取組みを進めている
  39. Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略。ある製品やサービスに関して原料採掘から廃棄・リサイクルまでに発生する環境負荷を定量的に評価する手法。
  40. Carbon Footprint(カーボンフットプリント)の略。ある製品・サービスのライフサイクルの 各過程で排出された温室効果ガスの量をCO2量に換算して表示する手法。
  41. 計画策定に向けて国内森林資源の高い精度での定量が必要。すでに航空レーザー測量等のリモートセンシング技術が実用化されており、サプライチェーン可視化・強靭化のために、政府主導でこうした調査を早急に行うべきである。
  42. ダイセルは、京都大学や金沢大学と開発した、木材を常温で溶解する技術および溶解した木材を様々な素材に転換する技術を基盤とする「バイオマスバリューチェーン構想」を提唱
    https://www.daicel.com/bvc/
  43. 「令和2年度JASの制定・国際化調査委託事業報告書」において、細胞農業分野で想定される標準化候補事項例として、用語規格、バイオリアクタノーの性能に関する規格、培養液の試験方法等があげられている
    https://www.maff.go.jp/j/jas/attach/pdf/yosan-32.pdf
  44. 2022年木材自給率は40.7%
    https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/230929.html
  45. 木材を建材等の資材として利用した後、ボードや紙等としての再利用を経て、最終段階では燃料として利用すること
  46. 例えばhttps://sfc.jp/information/news/2023/2023-07-10.html
  47. Cross Laminated Timber(直交集成材)の略で、原木から切り出した板(挽き板)を繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料
  48. 経団連は「Society 5.0 の実現に向けた 「戦略」と「創発」への転換 ~政府研究開発投資に関する提言~」(2019年4月)において、政府研究開発投資にあり方を、従来の「選択と集中」から、国家的な課題解決を目指す「戦略的研究」と多様性と連動性によって破壊的イノベーションの創出を目指す「創発的研究」への転換を提言
    https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/034.html
  49. 国立がん研究センター東病院「国内外の治験をとりまく環境に係る最新の動向と課題」においてSpeedとCostに課題があるとの指摘がなされている
    https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/symposium/g75una000000191s-att/CL_202302_lecture2.pdf
  50. 欧米諸国等で承認されている薬の開発が日本で遅れている、または開発自体がされていない状態をいう。
  51. 例えば「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」がある
  52. CMC人材(バイオ製造プロセス開発、品質評価・分析、スケールアップ研究、CDMOへの技術移管や薬事申請なども理解するバイオロジクス開発の全体俯瞰ができる人材)や、製造人材(バイオ製造方向・設備を理解し、標準作業手順書に準じて各種製造作業を実施できる製造技術者および製造工程全体の管理監督を実施できる製造責任者)など
  53. 海外では、WHOバイオ製造人材育成イニシアチブ(2024年)の動きや、欧米や韓国における国費投入などの動きがある。バイオ人材育成機関として、アイルランド国立バイオプロセス研究・研修機関(NIBRT)、米国ノースカロライナBTEC、韓国版NIBRT(K-NIBRT)などで、バイオ医薬品製造の専用施設を使ってバイオ人材教育(企業、行政、学生)を行い、成果をあげている。わが国においてもBCRET(一般社団法人バイオロジクス研究・トレーニングセンター)、AMED、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)、神戸大学などと連携し、座学教育や実習教育を通じたバイオ人材の育成事業を手掛ける)におけるバイオ人材育成が進んでいる。この動きと合わせ民間企業側でも自社施設への受け入れを通じた即戦力製造人材の育成を図っている。先行してバイオ専門人材育成に積極投資する企業に対して、実地研修にかかる費用支援等で下支えしていくことも必要である。
  54. オンライン診療やデジタルデバイスなどを活用し、被験者が医療機関に来院せず、自宅等にいながら必要な診療や評価・検査を実施できる治験。Decentralized Clinical Trial(DCT)
  55. Academic Research Organization:研究機関や医療機関等を有する大学等がその機能を活用して、医薬品開発等を含め、臨床研究・非臨床研究を支援する組織(出所:AMED「ARO機能評価事業」)
  56. Site Management Organization:治験施設(医療機関)と契約し、GCPに基づき施設での治験業務を支援する組織(出所:日本SMO協会「SMOの役割と主な業務」)
  57. https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/013.html
  58. 経団連による大企業とスタートアップのネットワーキングイベント。2019年から開始し、オンライン開催も含めて登壇スタートアップは延べ280社を超える
    https://www.keidanren.or.jp/policy/StartUp/KIX.html
  59. バイオチャネルの創設等

「科学技術、情報通信、知財政策」はこちら