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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月30日 No.3615 サウジアラビアのバイオテック戦略 -バイオエコノミー委員会企画部会

アルフェハイド氏

経団連は11月9日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会企画部会(大内香部会長)を開催した。来日中のモハメド・アルフェハイド サウジアラビア投資省バイオ産業担当ディレクターら政府関係者から、同国のバイオテック戦略について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ サウジアラビアのバイオテック戦略

サウジアラビアの社会・文化・経済の変革を打ち出した「サウジ・ビジョン2030」のもと、バイオ産業の育成に数年来取り組んでおり、先般バイオテック戦略を策定した。具体的な取り組み計画は2024年第1四半期に取りまとめる。対象領域はレッドバイオ(医療・健康)、グリーンバイオ(食糧・植物)、ホワイトバイオ(工業・エネルギー)の三つである。レッドでは慢性疾患や遺伝子疾患への対応、グリーンでは食糧安全保障、ホワイトでは環境対応および食品ロス問題の解決と、領域ごとに異なる課題が背景にある。

バイオ産業における「研究開発」「製造」「販売・流通」に戦略的に取り組む。「研究開発」こそが、バイオエコシステムの主たるドライバーであり、特に力を入れている。国内にゲノムデータセンターを保有するほか、サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学(KAUST)では253ものスタートアップを対象に、エネルギー、水、環境といった領域の研究開発・事業開発を推進している。「製造」では、サウジアラムコをはじめとする国内企業との連携を支援する。半年ほど前には、日本のちとせグループと藻類などバイオ技術活用に関するパートナーシップを締結した。「販売・流通」に関しては、サウジアラビアは立地に恵まれており、欧州、アジア、アフリカに数時間でアクセスできる。また、製薬・バイオ専用の特別経済区を設けている。

カラー別の詳細として、レッドでは、細胞医療や遺伝子治療、ワクチン製造に取り組む。グリーンでは、食糧面だけでなく土壌侵食や水枯渇、温室効果ガス排出への対応として中東全域で500億本、国内で100億本の植樹を行う。ホワイトでは、国内で大量に発生する食品ロスを原料とするバイオガス・バイオ燃料の開発を計画している。また、プラスチックごみも社会問題化しており、バイオポリマーや生分解性材料への転換を検討している。

■ 日本企業との連携

日本はバイオ分野の特許件数が世界第2位であるなど、同分野を国際的にリードする存在である。両国間の人的交流を促進し、サウジアラビアの若手育成のみならず、バイオエコシステム形成を共に進めてほしい。人材育成には時間がかかるが、バイオは市場成長が確実視されている分野であり、日本の協力をお願いしたい。

投資省は、両国間のマッチメーキングから市場動向、交渉、さらに国内拠点設立後のアフターフォローまでの各段階で、十分な支援を提供する。ウェブサイトに多数の投資機会を掲載しているので、ぜひ参照し、コンタクトしてほしい。

【産業技術本部】

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