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Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 情報要請「のれんの非償却の導入及びのれん償却費計上区分の変更」へのコメント

2026年6月5
一般社団法人 日本経済団体連合会
金融・資本市場委員会
企業会計部会

財務会計基準機構(FASF)御中

情報要請「のれんの非償却の導入及びのれん償却計上区分の変更」へのパブリックコメントの機会に感謝する。以下の通り回答する。

【質問2】

のれんの非償却の導入を支持しない理由

<経営の安全性確保>

  • のれんを償却することにより、将来生じ得るリスクを早期に費用化することが可能となる。また、各期において定額の償却費を計上することで、減損処理による一時的かつ多額の費用計上を回避でき、利益の安定化にも資する。
  • 一般に、業績悪化局面においては、営業利益の低下に加え、固定資産の減損や繰延税金資産の取崩し等が連鎖的に発生し、企業経営が負のスパイラルに陥るおそれがある。特に、のれんの減損は業績悪化をさらに加速させる要因となり得ることから、経営の安定、ひいては経済全体の安定性を確保する観点からも、定期的にのれんの償却を行うことが望ましい。

<本基準改正の不可逆性>

  • 米国会計基準及びIFRSにおいて、のれんの「非償却+減損のみ」の処理が導入されてから20年以上が経過しているものの、現行処理方法が今後長期にわたり継続される会計処理として妥当かについては、慎重な検討が必要。IFRS採用国を含めて、特に企業財務の健全性や会計情報の信頼性・保守性の観点からは、なお強い懸念が残されている。
  • また、「定額償却+減損」から「非償却、減損のみ」へ会計基準を変更した米国や中国においては、基準変更後、各社ののれん残高が大幅に積み上がる傾向がみられる。その結果、のれん償却の再導入が実務上極めて困難な状況となっているとの指摘もある。このことは本件が、実質的に後戻りが極めて困難な「一方向」の会計基準改正であることを示唆しており、基準変更に当たっては、短期的な国際的整合性のみならず、中長期的な実務運営や会計制度全体への影響も踏まえ、慎重に判断すべき。

<過度なのれん残高に対する市場のネガティブ評価>

  • のれんの非償却を導入した場合、減損以外にのれんを貸借対照表から除却する手段がない。過度に積みあがったのれん残高は市場からの懸念材料と判断されるケースも実務上は多く、M&Aを通じた成長余地が制約される可能性もある。中長期的な財務規律への影響も含めた慎重な検討が必要である。

<会計基準の安定性>

  • プライム市場、スタンダード市場及びグロース市場に上場する企業の多くが見直しを求めている状況にはなく、十分な合理性や必要性が示されないまま、いたずらに会計基準を変更すべきではない。会計基準の変更は上場企業全体に影響が及ぶため、変更を求めていない多数の企業に対しても実務上の混乱や追加的な負担を生じさせる。
  • 現行のプライム市場、スタンダード市場及びグロース市場に上場する企業については、現行のJ-GAAP又はIFRSといった既存の制度枠組みに基づき対応すべきであり、特定の一部企業の要請のみを理由として、我が国全体の会計基準を変更すべきではない。
  • 仮に、一部のスタートアップ企業等に対する政策的な配慮が特に必要なのであれば、資本市場で用いられる共通の物差しとも言える測定ルールとしての会計基準を変更するのではなく、IFRSへの円滑な移行を支援することなどが適切である。

<IFRS適用企業の分布状況>

  • 現行制度でも、IFRSの任意適用により非償却処理の会計処理を採用することが可能な中、現在のIFRS適用企業の分布状況を踏まえると、企業規模に応じた負担がIFRS移行への阻害要因とはなっていないと考えられる。
  • IFRSの任意適用企業は、プライム市場上場企業に限定されるものではなく、スタンダード市場及びグロース市場の上場企業においても、時価総額や総資産の規模にかかわらず一定数存在している。
  • 総資産規模での比較においても、IFRS適用時の企業規模に特定の偏りは見られないとの分析もある。
  • スタートアップ企業はIFRS導入コストを負担する体力に乏しいとの指摘もあるが、IFRS適用企業の分布状況等を踏まえれば、必ずしも実態を的確に反映した指摘ではない。したがって、非償却処理を希望する企業は、IFRS移行を通じて対応することが適当である。

<必要な内部統制の構築>

  • 仮にのれんの非償却を導入した場合には、毎期の減損テストをより厳格に実施する必要が生じ、財務諸表作成者および監査人の双方に相当程度の実務負荷が発生することとなる。また、適切なのれんの減損テストを実施し、必要に応じて適時かつ適切に減損損失を計上するためには、強固な内部統制の構築が不可欠となる。
  • しかしながら、人的リソースや専門人材に限りのある企業も少なくない中、現に日本基準を適用しているすべての企業が、のれんの非償却を前提として求められる内部統制を十分に整備・運用することは困難と考えられる。
以上

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