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Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 OECD公開討議草案「第7章 グループ内役務に関する特別の考慮事項の見直し」に対する意見

英文
2026年7月22

OECD租税政策・税務行政センター 御中

一般社団法人 日本経済団体連合会
税制委員会企画部会

「第7章 グループ内役務に関する特別の考慮事項の見直し 公開討議草案」に対しコメントする機会に感謝する。

今回の公開討議草案は、実務上判断に迷う論点(株主活動と重複活動の線引きや必要となるエビデンス等)に関する追加ガイダンスや具体例の拡充を図るものであり、実務上の予見可能性向上の観点から、その方向性を前向きに受け止め、歓迎する。これまでの移転価格ガイドライン第7章の規定を第1章から第3章の基本ルールとより整合した記述にし、既存のルールを補充・明確化したものと理解している。

一方で、詳細化された規定が過度な実務負担の増加やエビデンスによる裏付けを過度に求めるアグレッシブな税務執行を招くことがないよう配慮いただくことを要望する。また、例えば、日本における寄附金の認定など、各国国内法の規定との間でダブルスタンダードとならないよう配慮いただいた規定・執行となることが望ましい。

その観点から、以下のとおり各論点について意見する。

1.ベネフィット・テスト

(1) ベネフィット・テストの適用について

今回の草案ではベネフィット・テストに関する説明や事例が拡充されたが、受益法人ごとに個別のベネフィット・テストおよび証跡保存が求められると、多国籍企業において本社機能が分散されている実態において、情報の非対称性やコスト・ベネフィットの観点から実務負担が過剰となる懸念がある。ベネフィット・テストの適用にあたっては、外部アドバイザーや大規模な分析に過度に依存することなく、企業が保有する通常の業務資料や既存の管理情報を活用して合理的に説明できる水準を基本とすべきである。なお、テスト基準の画一的な明確化は、納税者による合理的な説明の柔軟性を損ない、かえって実務負担の増加に繋がるおそれがあるため、事業実態に即した柔軟な説明を許容する方向で、実務の簡素化に資する内容とすべきである。

また、グローバル企業が子会社に対して様々なマネジメントサービスを包括的に提供する際、各サービス・各提供先に対して個別に配賦計算を行うことは実務対応が困難である。そのため、すべてのサービスの総費用を合理的な配賦キーで一括配賦し、受けたベネフィットに概ね相当すると合理的に説明できれば、このような一括配賦を認めるべきである。

事業体が赤字であることを理由にベネフィット・テストを満たしていないとみなすような、アグレッシブな税務執行を抑止することが望ましい。その観点から、OECD加盟国のみならず加盟交渉中の国や未加盟国に対しても、本ガイドラインの考え方の周知を推進いただきたい。

(2) 期待ベネフィットが実現しなかった場合の取扱い

活動実施時点で合理的に期待されたベネフィットが事後的に実現しなかった場合について、その事実のみをもって直ちにベネフィット・テストが満たされないと結論付けるべきではないとの明確化を評価する。

一方で、例えばERPシステムの展開のようなプロジェクト(パラ7.17等)において最終的に未実装・未達成となったケースであっても、活動実施時点で形成される「事前の期待」には、本来、契約上の権利義務関係(開発者側の成果物提供義務やコスト負担の合意等)やリスク配分も織り込まれているはずである。加えて、期待ベネフィットが実現しなかった原因が、専ら役務提供者側の一方的な過失等の帰責事由にある場合等においては、独立企業間であれば役務受領者が対価を支払うとは限らず、必ずしも対価請求が求められるわけではないと解する余地がある。したがって、ベネフィットの有無は、単に事前の期待の有無のみならず、事前の期待に織り込まれるべき契約関係(支払条件やリスク配分)および未実現の原因等の具体的な事実関係に照らし、独立企業であれば対価を支払う意思を有したかどうかに基づき判断できる旨を、設例等で補足し明確化いただきたい。

(3) 直接便益と付随的便益の区分の更なる明確化

直接便益(Direct Benefit)と付随的便益(Incidental benefits)の区分について、独立した第三者が自らその費用を負担するか、あるいは自らその活動を行うかという現在の基準は主観的であると思われるため、より客観的な基準を示してほしい。また、間接的な便益であっても費用負担が認められる例を具体的に提示いただきたい。

2.株主活動とグループ内役務の境界(Box 1関連)

(1) 株主活動とIGS(グループ内役務)の境界事例の明確化

実務上議論となるのは、典型的なIGSではなく、グループ戦略の策定、経営モニタリング、情報共有等、親会社による通常のグループ経営活動とIGSとの境界が不明確なケースである。そのため、どのような活動であればIGSに該当しないのか、特に「支援」「助言」「管理」「調整」といった活動について、親会社による通常の企業活動の一環として行われる関与の存在のみをもって直ちに課税対象となるIGSと評価すべきではない旨や、境界事例に関する更なるガイダンスの充実が望まれる。一方で、これらの境界の線引きは個別性が強く、画一的な類型化や識別・按分ルールが導入された場合、かえってグループ役務の実務運用を不必要に制約し、合理的な説明の柔軟性を損なう懸念もある。追加ガイダンスが、一部の税務当局によってIGS該当性を積極的に主張する根拠として形式的に利用され、移転価格紛争や二重課税リスクを増加させることのないよう、事実関係に基づく納税者の合理的な説明が尊重されるべき旨もあわせて明記いただきたい。

また、ペーパーカンパニーを介したM&Aに係る親会社の活動(意思決定、デューデリジェンス、PMI等)は、株主活動としての側面と子会社支援役務としての側面が混在するため、判断の参考となる具体例を追加いただきたい。さらに、関係会社側国で対価性がないと認められ損金算入要件を充足しない株主活動費用については、株主側での損金算入を可能とする旨をガイドラインに含め、両国で損金算入できない事態を防ぐべきである。加えて、子会社の意向にかかわらず株主が一方的に決めた戦略やルールを強制適用させる場合等、独立企業であれば自ら依頼せず対価を支払うべきではない活動については、結果的に子会社が便益を得てもサービスフィーの回収対象から除くようガイドラインで明確化することが望ましい。

さらに、株主活動とスチュワードシップ活動(Stewardship Activities)の区分を更に明確化するため、株主と事業子会社の双方に利益をもたらす可能性がある活動(戦略サポート、業績モニタリング、事業再編、M&A支援など)の費用負担の考え方や、Pillar Two・QDMTT・国別報告書などグローバル税務報告に係る費用の負担の考え方、さらに地域統括会社や中間持株会社が行うガバナンス・子会社管理費用のコスト負担の考え方(持株会社・最終親会社・事業会社のどこが負担すべきか)についても追記を要望する。

(2) 企業グループ全体のガバナンス等に係る特定の活動の整理

パラ7.26(e)「多国籍企業グループ全体のコーポレート・ガバナンスに付随する活動」には、以下の活動が含まれ得ることを明確にすることが望ましい。

  • グループ全体のための戦略や方針、ルールの策定
  • 金融機関等においてEU等の特定地域における規制対応を契機とした、グローバルベースでの方針策定やデータ収集(直接の規制対象以外の事業体が受ける便益の判断が難しいケース)
  • グループ全体のサステナビリティ(ESG)戦略策定、開示推進およびモニタリング活動
  • グローバルなサイバーセキュリティ監視活動において、親とグループ企業でコストを分担する際のベネフィット評価や分担基準
  • グループ各社のウェブサイトのデザイン統一など、企業のイメージ統一を図る活動
  • グループガバナンス強化を目的とした内部監査
  • 生成AIの利用拡大に伴うAI利用方針の策定やAIリスク管理等の「AIガバナンス活動」

なお、上記のグループ全体のガバナンス等に係る本社主導で提供される集中サービスについて、子会社等各社が個別に要請していない場合でも便益が認められるのかどうか、特に、本社視点のグループ全体向けサービスについて、請求を受けるローカルレベルでどの程度のメリットがあればよいのか、サービスを利用する子会社側からの要請が必要か否か、あるいは本社がグループポリシーとして指定・義務付けたサービスをベネフィット・テストでどう評価すべきかについて、基準を明確化することが有用である。

3.グループ内役務の独立企業間価格の決定

(1) 特定のグループ内役務に係る配賦キーの選定(P18の質問項目)

配賦キーの選定については、実務上の合理性・運用可能性が考慮されるべきであり、利用者数や従業員数等の単一指標が必ずしも受益や投入工数を適切に反映しないケース(ERP導入や制度変更対応など)も存在する。そのため、特定のサービスに対して単一の配賦キーを推奨するのではなく、利用料や利用頻度(利用時間数や工数等)を加味したものも含め、納税者が事業実態に照らして複数の合理的な配賦方法を選択できる柔軟性を保証することが望ましい。税務当局による配賦キーの形式的な運用に繋がらないよう留意すべきであり、ガイダンス等における配賦キーの例示を過度に拡充することは、それが形式的に適用されることを求める運用を招き実務の柔軟性を損なう可能性が高いため、そのような形式的な運用がなされないよう十分に留意すべきである。また、配賦キーの個別化・正確な把握が過度に求められれば、関連する内部統制の構築・運用や監査対応といった観点でも著しい負担増となる。

なお、包括的なマネジメントサービス提供の場合には、企業の実用性・運用可能性を考慮して、企業が実務上で既に活用している配賦キーを適用できることとすべきである。例えば、実務においては、一般的に、売上を配賦キーとして使うケースが多く、また、ITや人財サービスに関しては人数を使用するケースがある。

また、組織再編時の配賦キーについて、基本的に遡及的修正は実務上困難である。また、本社主導で導入した各社共通のシステム費用を各社に按分請求している場合において、組織再編により請求対象だった会社や事業がグループから離脱し、ユーザーが減少した場合の取扱いについて明確化は有用である。機能は変わらずシステムの総コストが減らない状況で生じた増分コスト(未賦課コスト)について、実務上は本社で負担するケースと残った他社に増額請求するケースがあるが、それぞれにおけるベネフィット・テストと移転価格(負担額)の考え方をガイドラインで示していただきたい。

(2) 株式・持分連動報酬の取扱い(P20の質問項目)

移転価格上の役務提供費用の算定において、株式報酬をコストベースに含めるか否かについては、現状各国で取扱いが分かれており、被付与者の権利行使のタイミングの違いでコストベースが変わってしまう懸念がある。また、この問題については、2004年にOECDにおいて議論され、一つの結論が得られないまま今日に至っていると理解する。

このため、当面は、各国の税務当局における取扱状況についてOECD主導で調査を実施し、公表するなどして、状況を整理することが望ましい。将来的には実務の複雑さを避けるため、各年において会計上の発生費用を用いて計算することを認めるなどの追加ガイダンスを策定することも有益かもしれない。

(3) グループ役務の対価に係るその他の考慮事項

グループ役務の対価については、既存のAPA(事前確認制度)や事前ルーリングを通じて、各活動カテゴリーに適用する独立企業間マークアップを税務当局と合意して運用している企業が多い。本草案の内容が既存のAPAやルーリングで合意された独立企業間レンジ内のマークアップの水準と引き続き整合するかたちとなるよう配慮すべきである。

また、地域集約サービスセンターがグループ企業に代わって第三者費用の立替や集中購買をしている場合などにおいて、マークアップの要・不要の判断に資する実例(Pass-through Costや代理支払スキームの実例)を追加していただきたい。

なお、間接請求方式(パラ7.49)については、二重課税リスクが高まることが想定されるため、二重課税を生じさせないよう税務当局の執行において十分に配慮すべきである。

4.文書化

文書化の規定の詳細化により過度な事務負担増加とならないよう、「実施された活動から生じる期待ベネフィットの説明」等については、簡便的な扱いや社内稟議資料等での説明で問題ない等の配慮をお願いしたい。また、対象となる取引が広範囲に及ぶ場合、同時期証拠に関する文書を作成・提供することは過度な事務負担となるため、同時期証拠の対象を各国の同時文書化の重要性基準と同一の基準を超える取引に限定すべきである。加えて、税務リスクに比べて過度なコンプライアンス負担が生じることを避けるため、IGSがサービス受領者のSGA合計額の一定割合未満である場合など、低リスク・少額取引については過度なベネフィット・テストを要求せず、簡素化された文書化を認めていただきたい。

例えば、日本においても2026年度の税制改正により、「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例」が設けられるなど文書化の対象が広げられたが、グローバルミニマム課税の導入等もあり、企業全体として文書化で対応すべき実務負担は非常に重いものとなっている。各国の協調のもと、重複となる文書を整理し、実務負担を軽減する方向で検討を進めるべきである。加えて、日本企業に主流の3月期決算等では、年度末からわずか数か月で財務諸表の確定と税金計算を完了する必要があり、タイトな決算スケジュールの中での精緻化計算やTrue-up実務は極めて困難であるため、過渡期における移行措置や段階的適用など、十分な準備期間を確保すべきである。

なお、文書化の要件との関係では、サービス受領時点で合理的に期待される便益(Reasonably Expected Benefits)を証明するために必要な資料の具体例(事業計画、予算、プロジェクト提案書など)を示すとともに、サービス提供者と受益者それぞれの説明責任を整理してほしい。

5.低付加価値グループ内役務

ベネフィット・テストにおける簡素化アプローチ適用時において、税務当局が便益テストの審査や争うことを控えるべきとされているにもかかわらず、「個別の行為の特定がないこと」を理由に現地の税務当局が損金算入を否定するという懸念が依然として残る。今般のガイドラインの見直しを反映する国は、各国において適切に適用するよう徹底していただきたい。

また、低付加価値サービスに係る例示(パラ7.80)について、近年は大規模かつ精緻なDXインフラのグループ企業への提供や、複雑なグローバル取引の増加、活発な事業再編など本業に重大な影響を与えかねない事態への対応も増えている。現在のドラフト案の例示は現行ガイドラインとほぼ同様であるが、「以下のサービスのうち、一般的・定常的な実務を超えるものについては、個別に対価の計算をすることになる」旨の文言を柱書に追加すべきである。

なお、公開討議草案のパラ7.96に記載されている「源泉税を課すのはマークアップされた利益だけにすべき」という記載については、実務上の観点から大いに歓迎する。

6.その他の論点

「オンコールサービス」(パラ7.37等)について、例えば「必要な時に役務利用可能性があること」に関連して、親会社による子会社の借入への保証もオンコールサービスに含まれるのか等、用語の範囲の曖昧さが残っている。

また、現行ガイドラインではオンコールサービスは「B.1 企業グループ内役務提供が行われたか否かの決定」の箇所に置かれているが、今回のドラフトでは、ベネフィット・テストが満たされない株主活動、重複、付随的便益等の項目と並立して同じセクションに規定が置かれている点について、違和感があるため記載箇所を整理いただきたい。

以上

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