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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 夏季フォーラム後の記者会見(7/25)における筒井会長発言要旨

2025年7月25
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム2025】

 夏季フォーラム2025では、2日間にわたり、経団連幹部が一堂に会し、侃々諤々の議論を行った。緑と静寂に包まれた環境の下、じっくりと腰を据えて、2040年を見据えたわが国の様々な重要政策課題をめぐり、大いに議論を深めることができた。

大和総研の熊谷亮丸副社長、サカナAIのデイビッド・ハCEO、伊藤錬COO、そして、船橋洋一先生より、大変示唆に富むご講演をいただき、非常に密度の濃い意見交換を行うことができた。

また、4つのテーマ別分科会すべてを回り、参加者の発表や白熱した議論に接し、私自身も大変刺激を受けた。

これら検討の成果を「経団連夏季フォーラム2025総括」としてとりまとめ、本日、石破総理に手交した。これにより、「FUTURE DESIGN 2040」(以下、FD2040)の実現に向けたロードマップに大きな弾みが付き、大変意義のあるスタートを切ることができた。

〔日米関税交渉の合意直後の夏季フォーラム2025開催となったことの意義を問われ、〕日本政府の交渉努力が実り、日米関税交渉の成果を高く評価している。経団連は政策実現に際し、様々な分野で政府と連携・協力していかなければならないが、日米関税交渉の合意に対する評価を夏季フォーラム2025に参加した経団連幹部と共有できたことの意義は大きい。実際に参加者の声を聞くと、同様の評価であることを実感した。

〔総括において、「米中に過度に依存しない自立した国家を確立するとともに、食料・エネルギー等の安定供給を確保」と記述した意図を問われ、〕記述の背景として、米国の関税政策により日本が大きな影響を受けたことで、外的要因に対して強靭な経済構造を構築する必要があることが強く認識されたことが挙げられる。米国や中国といった超大国に依存しない分散型の広域でのネットワークを確立することが必要である。去る7月23日には、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と懇談の機会を持ったが、例えば、CPTPPを通じたEUとの連携や、グローバルサウスとの個別連携、メルコスールなどとの経済連携を通じて、レジリエントな経済構造を実現することが重要である。

〔同総括において、「自由で公正な貿易投資の担い手としてリスクをとって商機を拡大」することが「産業界の役割」として記述されていることの意図を問われ、〕広域分散型の国際的なネットワークの構築とともに、今後もルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化を主張し続けることの重要性の双方を意識して記述している。前提として、米国の自国第一主義が長期化することを想定する必要がある。こうした中でも、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化という理念を貫いていくべきである。わが国には、こうした理念を、EUやグローバルサウスといった同志国の拡充を図りながら、共有し、その重要性を訴求していくことが求められる。こうした取組みが、国際的な分散型のネットワークの構築にも寄与し、レジリエントな経済構造の実現につながることが期待される。

〔さらに、日米関係の今後のあり方を問われ、〕日米同盟は最強のパートナーシップであり、日米関係を一層強化し、緊密な信頼関係を維持していくことの重要性に変わりはない。一方で、それ以外の国・地域との分散型ネットワークの確立も必要であり、過度に超大国に依存するリスクを低減・分散しながら、外的要因に対してもレジリエントな経済構造を目指していきたい。

〔同総括において、経済安全保障が記述された背景と今後のあり方について問われ、〕米中デカップリングの環境下で、本来の意味合いで経済安全保障を追求していくことが重要である。その際、決して守りの世界に入るのではなく、産業界として、国際社会における日本の不可欠性や、自律性の確保・強化に取り組むとともに、これを産業政策としても後押しし、攻めの経済安全保障への転換を追求することも必要である。

〔同総括において、財政健全化に対する言及が殆どみられないことの背景を問われ、〕今回の夏季フォーラム2025の統一テーマは、「人口減少下でも輝く日本経済・社会の未来図」であり、「持続的な価値創造が導く日本経済・社会の未来図」と題した総括文書ということで、1ヵ所で「財政健全化」という文言を記述するにとどまっている。しかしながら、財政健全化というテーマについては、私自身これまでも継続的に発信しており、今回の総括文書の根底には、財政健全化の必要性に対する思いがあることも是非認識いただきたい。

〔一連の議論を踏まえ、今後のFD2040の実現に向けた考え方を問われ、〕テーマごとにペースの違いはあろうが、FD2040で具体的に書き込まれた施策を今後どのように実践、実行していくかが重要である。夏季フォーラム2025が節目となり、今後政策委員会レベルで議論を詰めていただきたいと思う。その上で、さらなる政策提言を行い、フォローアップするPDCAサイクルを回していくことが我々の重要な責務と認識している。

【日米関税交渉】

〔相互関税15%が適用された場合の影響と経団連としての今後の対応を問われ、〕今回の合意内容は、精力的かつ粘り強く行ってきた交渉が実った結果であり、高く評価する。一方で、15%の相互関税の適用に伴う経済的な影響があることは事実であり、年度ベースの実質GDP成長率を0.4%~0.6%程度下押しするのではないかとみている。また、10%の相互関税が課されている現時点においても、製造業を中心に、マイナスの影響が出ている、あるいは先行きを見通しがたいという会員企業の声も多数聞いている。相互関税の影響を注視し、よく検証と精査を行った上で、必要とあれば経済対策が適切に行われるように働きかけを行うこともあり得る。

【今後の政治への期待】

 〔7月20日投開票の参議院議員選挙での与党の敗北を受けて政治が不安定化する中、政治への期待を問われ、〕参議院議員選挙で与党の議席数が過半数を割る結果となったことは、与党に対する厳しい民意の表れであると受け止めている。今後政策を実現していく上で、衆参両院で少数与党という状況下では、決めるべき事項が決めにくくなり、スピードが遅くなることは想定しないといけない。一方で、与野党間の熟議が進むことも期待され、前向きに受け止めたい。これまで以上に与野党の熟議が行われることで、重要政策が実現していくことも考えられる。経団連はあくまで政策本位であり、今後、安定した政治の態勢の確立を期待する。

〔石破政権の今後について問われ、〕石破総理は続投を表明されているものと受け止めている。あくまで経団連は、政策本位で与野党と引き続き様々な連携を通じて、政策の実現に協力していきたい。

【外国人政策】

〔7月20日投開票の参議院議員選挙において、外国人政策が論点となったことへの受け止めを問われ、〕外国人政策は、国の形を決める重要なテーマである。今回の参議院議員選挙で、外国人政策が1つの争点となり、政策的論議が行われたこと自体は意義がある。一方で、事実に基づかない主張や、やや感情的な議論がみられたことも事実であり、残念である。全体としてバランスのとれた議論を行うことが重要である。バランスを失うと、諸外国からの日本に対する評価が事実に基づかない形で大きく下がる危険性がある。併せて、エビデンスに基づく政策の企画立案が必要である。経団連としては、エビデンスに基づき、全体としてバランスのとれた政策提言を行うことを心掛けたい。

【地域別最低賃金】

〔「2020年代に全国平均1,500円」という政府方針の実現に向けて、今後の地域別最低賃金の引上げのあり方を問われ、〕「骨太方針2025」では、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力」との政府方針が記述されており、十分な配意が求められている。これまで中央最低賃金審議会(目安小委員会)で地域別最低賃金額改定の目安に係る審議が3回行われている。どのような目安が示されるかは予想できないが、最低賃金引上げの影響を受けやすい地方の中小企業とその労働者の方々の共感と納得を得られるような目安がまとめられることを期待する。その際、労働者の生計費と賃金、賃金支払能力から成る決定の三要素を示す各データに基づく形で議論を進めることが不可欠である。

以上

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