一般社団法人 日本経済団体連合会
【賃金引上げ】
〔2026年春季労使交渉における中小企業の賃金引上げに関する現状の動きへの評価を問われ、〕(2024年、2025年の)2年連続で、中小企業において4%台の高い月例賃金引上げが記録され、中小企業においても賃金引上げの力強いモメンタムが定着し始めていると認識している。今年については、大企業の労働組合を中心に、昨年以上のベースアップ要求が多く出され、労使交渉が非常に前向きに進んでいると受け止めている。これから交渉が本格化する中小企業においても、建設的な議論が行われていくことを期待している。
足もとでは、中東情勢の緊迫化等により経営の予見性が低下するリスクを注視する必要があるものの、賃金は決してコストの増加要因ではなく、将来に向けた「人への投資」と位置付けて、自社、ひいては社会全体の「成長と分配の好循環」の実現につながっていけば良いと考えている。
〔さらに、中小企業の賃金引上げ原資の確保に向けた、労務費を含む価格転嫁への見方を問われ、〕中小企業における賃金引上げ原資の安定的な確保には、中小企業自身による生産性向上の取組みに加え、大企業を中心としたサプライチェーン全体での支援、そして政府・地方自治体等による支援・サポートが重要である。その大きな柱は、適正な価格転嫁と販売価格アップを受け入れていく社会的機運の醸成である。
現状では、価格転嫁率は上昇している一方、特に労務費の価格転嫁率が原材料費との比較で低いほか、サプライチェーンの取引段階が深くなるほど価格転嫁率が低下している。こうした実態を踏まえ、経団連は、引き続き「パートナーシップ構築宣言」の参画企業の拡大を呼びかけていくとともに、取適法・振興法の周知徹底等を通じて、同宣言の実効性を高め、適正な価格転嫁のさらなる進展と望ましい取引慣行の実現に貢献していきたい。これにより、中小企業における賃金引上げ原資の安定的な確保につながることを期待している。
【消費税減税】
〔高市総理の掲げる飲食料品を対象とする2年間の消費税減税への所見と財源に係る問題への見解を問われ、〕消費税は社会保障を支える重要な安定財源として長きにわたり位置付けられてきたことを十分に意識しつつ、今後「社会保障国民会議」で徹底的に議論することが必要である。消費税減税を検討する際には、財政に対する市場の信認の維持と社会保障制度の持続性確保の観点から、代替財源の明確化が大前提である。また、業界への実務上の影響について、システム対応に要するコストの問題、税率引下げ前の買い控え対策、外食等の他の業界への影響、そして給付付き税額控除との関係性等を勘案する必要がある。こうした点を含めて、関係業界からも十分にヒアリングを行い、「社会保障国民会議」で徹底した議論・検討を尽くしていただきたい。
【石油備蓄の放出】
〔中東情勢の緊迫化を受けて高市総理が表明した石油備蓄放出に対する評価を問われ、〕現状、直ちに国内のエネルギー安定供給に支障が生じるものではないと認識している。一方で、中東への依存度が突出して高い日本において、足もとでエネルギー価格に影響が出始めていることも踏まえ、エネルギーの安定供給に万全を期すとともに、価格高騰等による国民生活や企業活動への影響の緩和を図るべく、先手を打つ観点からのご判断と受け止めている。いずれにしても、日本や関係各国との連携による外交努力により、中東情勢の早期鎮静化を期待するとともに、エネルギーの安定供給に万全を期していただきたい。
〔原油価格が高騰し供給制約に直面する中、需要面への対応として財政・金融政策に対する期待を問われ、〕現時点で、原油価格が上昇し、内外の金融市場が混乱する中、国民生活に対する影響の予兆がみられることは事実だが、政策面にどのように反映していくべきかについて、現時点では判断が難しい。緊張感をもって事態の推移を注視しながら、財政・金融政策による対応のあり方を検討していくことが必要である。
【中東情勢】
〔ホルムズ海峡周辺での船舶の安全性が確保できていない現状への受け止めと中東情勢の悪化が長期化した場合の日本経済への影響を問われ、〕3月11日に発生した日本企業保有のコンテナ船の損傷が軍事活動によるものか否かについては、分かっていない状況であるが、ペルシャ湾内での船舶の安全な運航が脅かされ、エネルギー安定供給そのものを揺るがしかねないことを極めて憂慮している。政府には、まずは船舶の安全確保に万全を尽くしていただくとともに、関係国との外交努力による事態の早期収拾に取り組んでいただきたい。
中東情勢の悪化が長期化するリスクを考えると、これが仮に顕在化すれば、企業経営や国民生活に幅広く影響を及ぼしかねない。景気の減速とインフレの高進が同時に進むスタグフレーションに陥るリスクについても、悲観的にならない程度に想定しておく必要があろう。
【観光政策】
〔九州経済懇談会で提起されたオーバーツーリズムの問題を踏まえ、2030年に訪日外国人観光客を6,000万人とする政府目標を維持すべきか、軌道修正を図るべきかを問われ、〕インバウンドが増加している九州地域から見て、切実なご意見をいただいたと受け止めている。政府目標そのものの重要性は変わらないが、政府及び経済界は国民に対してしっかりとした説明を尽くすことが重要であろう。足元のオーバーツーリズムの弊害を是正するとともに、観光の「質」を高めていかなければならない。例えば、「量」を追求しながら、体験型観光の充実等を通じて、消費単価の向上や地方誘客等を視野に入れた「質」への転換を進めていくことが重要である。その際、現在の定量的な政府目標を維持するか否かについては、一連の取組みに係るPDCAサイクルをしっかりと回して検証していくべきである。