一般社団法人 日本経済団体連合会
【消費税減税】
〔高市総理の掲げる消費税減税に関して世論調査で様々な意見がみられる中で、社会保障国民会議で十分な議論が行われているか見解を問われ、〕消費税減税に対する経団連のスタンスは従前から発信してきた通りである。すなわち、消費税は、社会保障を支える重要な安定財源として位置付けられてきた積み重ねを十分に意識しつつ、社会保障国民会議での徹底的な議論が必要と主張してきた。実際にそのような方向で議論が行われていると認識している。消費税減税を検討する際には、市場の信認の維持と社会保障の持続性確保の観点から、代替財源の明確化が大前提である。消費税率1%への引下げという案も浮上していると認識しているが、仮にそうであっても経団連のスタンスは変わらない。理由は、消費税率0%への引下げ時との比較において減税規模が縮小するとしても、依然として巨額の財源を要することに変わりはないためである。また、実務への影響について、消費税率0%への引下げ時とは性質が異なるという指摘もあるが、実務への負荷がどの程度実質的に軽減されるのか、関係業界の声を十分に踏まえるべきである。併せて、給付付き税額控除との関係等についても、引き続き社会保障国民会議で議論・検討を尽くすべきである。
〔さらに、社会保障国民会議では、消費税減税を実行した場合の税制全体への影響や代替財源に関する議論が行われていないのではないかと問われ、〕消費税減税に伴う財源規模や行政・関係業界の実務面の影響に関する議論は、これまで先行して行われてきたと認識している。一方で、中東情勢の緊迫化に伴いインフレの兆候が出ており、今後さらに加速するリスクが十分想定される中で、消費税減税に対する高市総理の強い意志を感じている。こうした環境の下、社会保障国民会議での議論が継続していると受け止めている。
【補正予算】
〔高市総理が編成を表明した電気・ガス料金への支援等を盛り込んだ補正予算に関する受け止めや、特例公債の追加発行等に関連した財源に対する所見を問われ、〕中東情勢の緊迫化を受けて、企業活動や国民生活の双方で、どのようにインフレへの対策を講じていくかが政治・経済面での焦点となっている。情勢は難局を迎えており、今回の補正予算の編成表明は、各種リスクを最小化する観点からの判断と受け止めている。財政面からは、市中への特例公債の発行総額は増やさないこと、そして、引き続き、日々の市場動向や経済指標を十分に注視しながら、政府債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくことが表明された。私としては、財政の持続可能性確保、市場の信認維持を意識した発信と認識している。ただし、この発信は一過性のものであってはならず、今後も折に触れて、継続的に発信いただくことが不可欠である。
〔いわゆるガソリン補助を継続すべきか否かを問われ、〕中東情勢の緊迫化を受けて、早い段階からガソリン価格を全国平均170円に抑制する激変緩和措置が講じられてきた。補正予算の枠内でも、経済活動や国民の暮らしに支障が生じないよう、適切に対応する方向性と受け止めている。なお、石油・石油関連製品については、政府が民間と協力して代替調達に懸命に取り組んでいることを高く評価している。一方で、量自体は確保されても価格の上昇は不可避であろう。こうした中でも企業活動や国民生活への影響を少しでも軽減し、経済活動を維持したいという思いが今回の補正予算に反映されているのではないか。
〔さらに、原油価格高騰を契機として、エネルギー転換等を追求すべきではないかと問われ、〕中長期の時間軸で、グリーントランスフォーメーション(GX)戦略に足もとから着実に取り組むことが必要である。原子力や再生可能エネルギーの利活用を含めて、GXの推進は、経済安全保障、産業立地、さらには地方経済の活性化等の観点からも、今後の日本の活路を切り拓くものと認識している。日本のGXは、GX経済移行債による資金調達の他、現在高市政権の志向する複数年度での予算措置を先取りする形で、複数年度にわたる支援が実施されている。また、経済成長と脱炭素の双方の追求という点で世界的にも日本のGXは評価されており、今後も構造的に化石燃料への過度な依存を減らしていくことが重要である。
〔さらに、いわゆるガソリン補助が高所得者にも恩恵を及ぼすという点で経済学者からも合理性に欠くとの指摘があることについて問われ、〕ガソリン価格を全国平均170円に抑制し続けることに伴い、財政面で非常に大きな負荷が生じている。中東情勢の混乱が長期化することを想定した場合に、市場価格の安定化には相応の時間を要することも考慮しなければならない。その際、財政面での負荷を考慮すれば、ガソリン価格を全国平均170円に抑制するという措置は、永続的ではなく、一定の期限を意識しながら講じるべきものと考えている。
【科学技術立国】
〔5月13日に高市総理と面会した際に、高市総理から表明のあった研究費の実質的倍増に関して、来年度予算に向けた期待等を問われ、〕高市総理の表明は、大変心強い。高市総理は、これまで経団連が科研費(科学研究費補助金)の早期倍増を主張してきたことを意識するとともに、基礎研究の重要性も踏まえた上で、成長投資という方針を掲げておられることを実感した。高市総理の表明された研究費の実質的倍増の指す内容を具体的には承知していない。いずれにしても、財政のポートフォリオの柔軟性が徐々に失われる中で、経団連の掲げる「科学技術立国」の実現に向けて、戦略的かつ前向きな発信がなされたことに勇気づけられている。
【日中関係】
〔中国で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当大臣会合で、赤澤経済産業大臣が中国の王商務部長と短時間接触したことへの評価と経済面での交流の動きを問われ、〕APEC貿易担当大臣会合で、赤澤大臣が中国の王商務部長とコンタクトの機会を持ったことは承知している。これによって日中関係が一気に好転するものではないと認識しているが、関係改善に向けた一歩一歩の小さな積み重ねが重要である。こうした観点から、APEC貿易担当大臣会合という非常に重要な場で、短時間でも接触があったことを評価している。
経済面での交流という点では、中国の要人と会談できないという状況に変わりはない。ただし、比較的小規模で、中国の先端技術に関連する視察等、実務交流は実施されていると認識している。こうした機会が、日中両国間の人の往来・交流を促進するものとして積み重ねられていくことは意義深いと捉えている。
【日露関係】
〔経済産業省の通商政策局長等のロシアへの出張に関し、経団連としての関与の状況や評価・期待を問われ、〕ロシアによるウクライナ侵略が長期化する中、ロシアでビジネスを展開していた日本企業の資産がそのままの状態で存置されてきた。このため、ロシアに踏みとどまっている日本企業の資産の保全が重要であり、今回の出張は事業継続の環境の整備を訴求することが目的と理解している。経団連は、事務局の役員が出張中である。ロシアによるウクライナ侵略を受けて各種制裁が科されており、それらが解除され、平和に向けた動きが一気に実現する訳ではないと思うが、日露経済関係が正常化に向かうことを期待している。
【鈴木敏文氏逝去】
〔セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏が逝去したことを受けて、生前の交流等を問われ、〕鈴木氏と私は、世代も異なるため交流の機会を持ったことはないが、同氏のご逝去は誠に残念ということに尽きる。日本の流通業界の発展、特にスーパーマーケットが今日に至るまで隆盛してきたこと、さらに日本のコンビニエンスストア業界が世界的に存在感を発揮していることに対して、極めて大きな業績・功績を残された方と認識している。日本の経済成長、国民の暮らし、そして利便性の向上にも大きく貢献されてきた。1997年から2001年にかけて、同氏には経団連副会長としてもご活躍いただき、深い敬意をいだいている。心から哀悼の意を表したい。
【読売巨人軍・阿部監督の辞任】
〔読売巨人軍の阿部監督が辞任したことの受け止めと、筒井会長出身の日本生命が協賛しているプロ野球のセ・パ交流戦への影響を問われ、〕正直驚いた。名門であり、長い歴史を有する読売巨人軍の監督として大変残念である。セ・パ交流戦は相応の歴史を重ねており、日本のスポーツ界における重要なアセットになっていると捉えている。日本生命は、セ・パ交流戦が各球団と地域との関わりに寄与するだけではなく、社会の活力の源泉になっているという思いから長らく協賛している。今回の件は非常に残念だが、個別案件と日本生命によるセ・パ交流戦の協賛は切り分けて考えるべきであろう。