経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は、経団連との連携、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P、注)との共催で、社会貢献実践講座「災害被災地支援編」を2月から3月にかけて実施した。講座では、宮城、福島、岩手の順にそれぞれ1泊2日で訪問し、現地の中間支援組織、社会福祉協議会、NPOから話を聞き、活動現場を視察した。また、東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)の現地会議にも参加し、宮城では過去の被災地の取り組みに学び、福島では原発、風評、風化、消費の4つの視点から課題を共有し、岩手では震災を機に設立された団体の活動に耳を傾けた。事前研修と事後研修を含めた講座全体を通じて、企業の被災地支援担当者が復興期における現地ニーズを把握し、今後、継続的に支援活動を展開するうえで役立つ情報やヒント、ネットワークを得る機会となった。
震災後1年が経ち、被災地では復旧が進み、復興計画が立てられつつあるが、目に見える進捗が感じられない“踊り場”とも言える段階にある。今、被災地では、主に次のような支援活動が展開されている。
<被災者の生活支援>
仮設住宅団地や民間借り上げ住宅での避難生活は、地縁だけでなく家族をも分断しており、孤立を防ぐための見守り活動や交流の場づくりなど「新しいコミュニティーの形成」を目指した活動が展開されている。男性が引きこもる傾向にあること、民間借り上げ住宅の入居者に支援を届けにくいことが課題として指摘されていた。
<復興まちづくり>
まちの再生について住民の合意形成をし、資源をマッチングして進める動きが始まっている。宮城県七ヶ浜町の菖蒲田浜の再生、岩手県陸前高田市上長部まごころの郷での農地再生や製材所建設を含めた村づくり、岩手県大槌町での食文化の発信や復興ツーリズムなど、被災者自らが外部と連携して展開する事例が各地で生まれ、復興の牽引役となっている。
<産業再生・就労支援>
沿岸部では農林水産業とその加工業の再生に向けてさまざまな施策が導入され、資金も投入され始めている。仮設商店街や食堂などもオープンし、地元の人々の暮らしを支えている。しかし、土地再生や漁港整備の遅れ、働き手の流出、高齢化、過疎化などの課題が進展を阻んでいる。また、仮設住宅団地の集会所では、生きがいや仕事づくりに力を入れることによって、被災者の方々が規則正しい生活リズムを取り戻すことを支援している。
そのほかに、教育や医療、福祉など、被災者一人ひとりの命や生活を守る活動も展開されている。福島県を中心に、県外に避難している人々に対して情報提供や転居支援などによる「つながり」を実現する活動も重要になっている。
講座で意見交換した各団体からは、企業に対して継続的な支援を期待する声が多く、各社の専門性を活かした活動や実績のある社会貢献活動に関して、被災地で提供可能なメニューを条件とともに明示してほしいとの要望があった。また、新たなプログラムの企画・立案から実施までに関わることのできる企業人を派遣してほしいとのニーズも高かった。講座に参加した企業では、現地の状況を踏まえ、今後の支援策について検討が進んでおり、今回の出会いが具体的な活動につながった事例も生まれている。被災者が主役となる復興の実現に向けて、さまざまな組織が協議し連携することができるような場や仕組みが引き続き求められている。
(注)災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)=災害発生時のボランティア活動が円滑に推進されるよう支援する組織。社会福祉協議会や共同募金会、NPO等で構成され、経団連の1%クラブも参加
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