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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月19日 No.3083 「デフレ脱却と成長に向けた政策」 -伊藤・東京大学大学院経済学研究科教授が常任幹事会で講演

講演する伊藤教授

経団連は4日、常任幹事会を開催し、東京大学大学院経済学研究科の伊藤隆敏教授から、「デフレ脱却と成長に向けた政策」について講演を聞いた。
講演の概要は次のとおり。

■ 日本経済の3大懸念

日本経済には、(1)財政破綻(2)デフレ(3)潜在成長力の衰え――という三つの懸念がある。財政を健全化するには、消費税率を引き上げるしかない。デフレを解消するには、日本銀行が本腰を入れた金融緩和あるいはインフレ目標政策を行うしかない。成長を促進するには、政治家が成長戦略を実行するよう決断するしかない。

■ 財政破綻の懸念

日本の新規国債発行額が44兆円という異常な事態が3年も続いている。バブル崩壊以降、税収は減少、歳出は増加傾向にある。OECD加盟国の水準からみて、日本は社会保障関係費以外の歳出の対GDP比が最低レベルであり、社会保障関係費の増加によって歳出が増加していると言える。歳出削減では財政を根本的に再建することは困難であり、財政健全化のためには税収を増やすしかない。消費税率は、日本は5%であるが、欧州諸国並みの25%まで引き上げれば、新規に国債を発行する必要がなくなる。海外の投資家も、日本で財政健全化を図る解決策が明らかで、早晩実行されるとの認識を持っている。だがその期待を裏切ると、日本でも債務危機が起きるだろう。消費税率をなるべく早く引き上げ、新規国債発行額を削減することが財政再建の第一歩となる。

■ デフレ

デフレの継続がデフレ期待を醸成させ、デフレ期待の定着がデフレスパイラルを生じさせる。デフレ期待の払拭には、日本銀行の相当強い政策メッセージの発信と実行が必要である。日本のインフレ率は、1998年以降、概ね0%を下回っている。私は、デフレが大きくなり始めた2000年、01年に、日本銀行がデフレ解消を図る必要があったと考えている。しかし、当時、日本銀行は、金融政策面での対応を行わなかった。また、リーマン・ショック以降、10年10月になってようやく「資産買入等の基金」を設立し、長期国債、CP(コマーシャル・ペーパー)、ETF(指数連動型上場投資信託受益権)、REIT(不動産投資法人投資口)等の買い取り枠を65兆円まで広げる「包括緩和」を実施したが、2年遅かった。12年2月に日本銀行は、物価上昇率を当面「1%を目途(ゴール)」とする表明を行ったが、そのフォローアップが行われておらず、インフレ目標政策に政策転換したかどうか疑問である。これではデフレ解消に時間がかかるだろう。

■ 潜在成長力の衰え

生産年齢人口の急速な減少により、日本の成長率にはマイナス1~マイナス1.5%の足かせがかかっており、消費税法改正法案で議論となった3%の名目成長率を達成するには1人当たりの成長率を高度成長期並みの4~4.5%まで引き上げる必要があることになる。成長戦略の具体策としては、少子化対策としての待機児童問題の解消、グローバル化への対応として大学生は皆英語が操れるようにすること、低生産性産業改革としての減反政策の転換が必要である。

【総務本部】

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