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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月26日 No.3084 OECD多国籍企業行動指針に関し欧米関係者との懇談会開催

経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)は17日、昨年5月に改訂されたOECD多国籍企業行動指針の周知・普及のための取り組みの一環として、同行動指針の欧米各国における連絡窓口(National Contact Point、以下NCP)(注1)関係者等と懇談した。懇談会に先立ち、経団連および日本企業のCSRやOECD多国籍企業行動指針に関する取り組みについて、欧米関係者に説明する機会も持った。
欧米NCP関係者等による説明の概要は次のとおり。

■ 主な改訂の内容、普及・実施にかかる取り組み

OECD投資委員会作業部会のニーヴェンカンプ議長は、今般の改訂の主な内容として、(1)人権に関する章の新設(2)デュー・ディリジェンス(注2)およびサプライチェーンの概念の導入(3)NCP手続きの具体化――を挙げた。デュー・ディリジェンスについては、数多くのサプライヤーとの取引をリスクに基づいて優先付けして管理する必要があるとした。NCP手続きについては、公平性確保の重要性を指摘するとともに、より良き企業行動に向けた機会ととらえるべきとした。

改訂指針の普及に関しては、多言語への翻訳、ウェブサイト上での公開が重要とするとともに、実施にあたっては、個別事例の処理にとどまらず、問題発生を予防するための試みが必要であるとした。公平な競争条件を確保する観点から、指針参加国拡大のためのアウトリーチ活動の必要性も強調した。

■ 各国NCPの取り組み

個別事例で行動指針の実施に関連する問題が生じた場合への対応について、オランダは、実情を適切に反映した持続可能なWin‐Winの状況を生み出すことが重要とし、NCPとして斡旋、仲介・調停を行う前段階において、事実関係を理解し、当事者間の話し合いを円滑にするための事前相談(Pre-advice)に力を入れている旨を説明した。ノルウェーは、NCPを問題の解決策を提供する場ととらえており、そのためには事実を的確に把握することが不可欠と強調した。

ステークホルダーとの連携について、ドイツは、経済技術省に置かれるNCP、関係省庁横断のタスクフォースに加えて、政府、市民社会、企業、労働組合、NGOで構成されるワーキンググループがあり、行動指針の改訂にも深く関与したことを紹介した。個別事例の解決、行動指針の普及においてもステークホルダーの関与が重要であるとした。英国は、2008年にNCPの取り組みをモニターする関係省庁・企業・労働組合・NGOから構成される機関を設置、NCPの「批判的友人」として機能しているなどの現状を紹介した。今後の課題としては、新興国へのアウトリーチ活動の強化、行動指針参加国間での実施にあたっての一貫性の確保、NCPのベストプラクティスの共有等を指摘した。米国は、専任スタッフを置くなどNCPの機能強化を図ったこと、また、NCPの手続きを点検し改革案を検討した委員会の提案に基づき、企業・労働組合の代表を共同議長とし、環境、人権、大学関係者から構成される諮問機関が設置され、今年3月から始動したことを紹介した。

(注1)NCP=行動指針の普及・実施、行動指針の実施に関連して生じた問題の解決支援のために指針参加国政府等に置かれている連絡窓口

(注2)デュー・ディリジェンス=企業の意思決定およびリスク管理システムに不可欠のプロセス。それを通じて企業が実際のおよび潜在的な悪影響を特定し、防止し、緩和し、どのように対処したかについて説明することを可能にするもの

【国際経済本部】

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