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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年9月13日 No.3100 カタイネン・フィンランド首相一行と懇談 -日本企業との協力強化へ/カタイネン首相が期待感示す

カタイネン首相(右)と米倉会長

経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で、フィンランドのユルキ・カタイネン首相ならびにペッカ・ルンドマーク・フィンランド産業連盟副会長ら経済人一行を招き昼食懇談会を開催した。米倉弘昌会長、川村隆副会長、勝俣宣夫副会長、大塚陸毅副会長ら経団連幹部が出席した。懇談会でのカタイネン首相の発言概要は次のとおり。

堅実な政策によりフィンランド経済は緩やかに成長

世界金融経済危機によりフィンランド経済は大きな打撃を受け、2009年のGDP成長率はマイナス8%となった。財政緊縮策と成長のための政策によって、経済は回復基調にあり、現下の欧州経済情勢の影響はあるものの2013年は1%成長を見込む。

フィンランド国債の格付けがトリプルAを維持していることを誇りに思うが、これを維持するためには不断の取り組みを必要とする。例えば、08年に対GDP比28%であった政府債務残高は、現在47%に上昇しており、方向性を変えるべく、1年以内に財政赤字を対GDP比3%引き下げるとの方針を打ち出した。こうした措置を通じて、産業投資家や海外投資家の信頼を担保し、フィンランド経済が危機的状況に陥らないことを示したい。緊縮措置と並行して成長を後押しする政策も実施しており、例えば研究開発によって経済成長に寄与する企業に優遇税制を適用している。従来型産業と知識産業の一体的な発展を志向しており、今後成長が期待できる分野として、クリーンテクノロジー、再生可能エネルギー、原子力エネルギー、リサイクル、ゲーム、デザイン、森林産業等が挙げられる。

原子力は重要―引き続き推進

先般フィンランド議会は原子力発電所2基の新設を承認した。原発の導入は輸入電力への依存度を引き下げることから、フィンランドが進めるエネルギーミックスにおいて原子力は重要な役割を果たしている。同時に再生可能エネルギーも推進していきたい。同分野は急成長しており、現在フィンランド企業が世界で唯一、潮力発電を実用化している。

ユーロ圏の将来を楽観

フィンランドはユーロに強くコミットしており、国民の6割が支持している。現下のユーロ危機の理由は、一部の国がルールを順守しないことや競争力を欠くこと、金融市場が問題をユーロ圏全体のものと見なしていることがある。対策にはさまざまな意見があり容易ではないが、欧州中央銀行だけですべての問題を解決することは不可能である。まずは危機に陥った国が責任を持って緊縮財政等必要な措置を講じ、競争力の回復に向けた自助努力を行うことが求められる。そのうえで、金融市場全体を覆う不安心理を落ち着かせるために、欧州全体が信頼できる回答を示すことが必要だ。

今回の危機を経て欧州委員会の権限が強化され、厳格なルールの導入や監督が可能になる。銀行を国家横断的に監視する動きも進んでいる。このことから、ユーロ圏の将来を楽観視している。

日EUFTA交渉の早期開始を支持―日本企業との協力強化に期待

輸出立国フィンランドにとって日EUFTAの優先順位は高く、交渉の早期開始に向けてEU内で働きかけを行っている。欧州委員会の試算では、日EUFTAによって欧州で40万人の雇用が創出され、対日輸出は30%拡大する。これは世界経済にとっても大きな意義を持つ。

日本はフィンランド製品の品質を測るベンチマーク市場として重要である。エネルギーや通信など多岐にわたる分野で日本企業と協力し、チャンスを活かしたい。

【国際経済本部】

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