経団連の米倉弘昌会長を団長とするミッション(団員=渡文明審議員会議長、渡辺捷昭副会長、勝俣宣夫副会長、大塚陸毅副会長、奥正之副会長、荻田伍副会長、中村芳夫副会長・事務総長)が11日から18日の日程で、EU(ブリュッセル)ならびに主要加盟国であるドイツ、フランス、イギリスを訪問し、政府・経済界首脳らと懇談した。今回のミッションでは、経団連が数年来、推進してきた日・EU経済連携協定(EPA)の速やかな交渉開始を働きかけるとともに、欧州債務危機の現状と見通しについてEU側から説明を聞いた。
■ 交渉開始に一段と前向きになったEU
欧州委員会が7月、日本との経済連携協定の交渉開始について加盟国に承認を求めることを決定したのを受け、加盟国による交渉開始をめぐる議論が佳境を迎えている。いまだ交渉開始に慎重な国、業界はあるものの、昨年7月の訪欧ミッション時と比べて、EU側は一段と前向きになっていることがうかがえた。主な政府要人の発言のポイントは次のとおり。
ファン=ロンパイ欧州理事会議長からは、交渉開始に向けて加盟国からの承認取り付けに努力するとの意向が表明された。バローゾ欧州委員会委員長からは、年内交渉開始に対する期待が表明されると同時に、日本における非関税措置について約束された期限どおりに撤廃することが極めて重要との指摘があった。
ドイツでは、フォン=クレーデン首相府国務大臣から、早期交渉開始を支持するとの表明があったうえで、非関税措置の撤廃、政府調達市場のアクセス改善が進めば、ドイツ経済界もより積極的な姿勢に転じるであろうとの発言があった。レラー首相補佐官からは、メルケル首相は、現在進められているプロセスのなかで建設的な役割を果たす意向であるとの説明があった。
フランスでは、ファビウス外務大臣から、協定はフランスにとっても好ましいものであり、非関税措置を含む双方の利益となるバランスのとれた協定を望むとの発言があった。ブリック貿易大臣は、協定に原則賛成であるとしつつも、日・EU間のこれまでの協議結果は不十分であると指摘したうえで、日本における個別の非関税措置に言及するとともに、日本との協定に限らず自由貿易協定全般についてフランスにおける雇用にプラスの効果があること等が重要と強調した。
かねて交渉開始を支持しているイギリスでは、キャメロン首相から、あらためて強力な支持の表明があった。ケーブルビジネス・イノベーション・スキル大臣は、EUとしても交渉開始の準備が整ってきたとの認識を示した。
■ 収束にはいまだ時間を要する債務危機
欧州債務危機は日本経済にマイナスの影響を及ぼしており、早期収束が期待される。しかしながら、有識者を含めたEU側の説明を総合すると、危機の根本的な解決には、危機に直面している国々における国際競争力向上のための一層の改革努力が必要であり、また、銀行の監督(銀行同盟)、予算の管理(財政同盟)、経済政策の調和(経済同盟)、民意の反映(政治同盟)といった四つの面での統合の一層の深化が不可欠であり、危機の収束にはかなりの時間を要するとの感触が得られた。
【国際経済本部】