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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年11月1日 No.3107 ILO条約監視システムの課題聞く -雇用委員会国際労働部会

カレン・カーチス氏

経団連は10月22日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会国際労働部会(谷川和生部会長)を開催した。当日は、ILO(国際労働機関)のカレン・カーチス国際労働基準局次長から、ILO条約の監視システムの課題について聞き、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 条約の監視システム

条約を批准すると加盟国政府は、ILO憲章22条(以下、憲章)に基づき、定期報告をする義務が生ずる。報告の内容は、法律の策定・改正、実行に向けた枠組み整備など履行状況に関するものである。さらに政府報告について、労使団体は独自に見解を表明できる。これらの情報は、著名な国際法学者や労働法学者、最高裁判所長官経験者などにより構成される条約勧告適用専門家委員会で審議され、委員会としての報告書が作成される。そのなかで「条約の深刻な侵害」との意見が付されたケースについて、政労使代表により構成される総会基準適用委員会で政府に説明を求めて審議する。改善の方策等について三者による意見をまとめ、政府に改善を促すことを通じて、条約を遵守させる。

■ その他の審査機関

これらとは別に、労使団体(憲章24条)、および加盟国、総会の代表、理事会自体(同26条)が、条約の実効的な遵守をしていない加盟国について、ILOに対して直接申立てすることができ、受理可能と判断されたとき、委員会が設置され審議される。後者は、いわば加盟国が他の加盟国を訴えるかたちになるので外交上の配慮から件数は非常に少ない。

日本について、前者の憲章24条に基づく労組からの申立てが近年3件あった。審議の結果、いずれも条約勧告適用専門家委員会においてフォローアップされることとなった。

■ 結社の自由委員会

条約(87号、98号条約)の批准の有無にかかわらず、結社の自由侵害に対して対応すべきとの考えから、理事会に政労使三者により構成される結社の自由委員会が常設されている。これまで三千件近くの申立てがある。

ILOへの提訴というと、日本ではこの委員会に対するものが多く、公務員(消防職員)の団結権付与、民営化過程での反組合差別的行為が長期係属案件である。最近、民間企業のリストラ過程での組合差別案件が審議された。労使協議の努力は評価されたものの、組合幹部の代表性継続と訴訟の進捗状況等追加情報の提供が求められた。

民営化やリストラについては、一般的にこの委員会の権限範囲外になる。ただし、反組合的差別行為、労働協約違反、労使協議の不実施など、結社の自由の原則が担保されているかが判断される。

■ 係属中の日本案件

  1. (1)同一価値労働に対する男女同一報酬条約
    総会基準適用委員会で過去3回審議され、昨年憲章24条による申立てによる審議も行われた。企業の対応として、客観的職務評価制度を実施し、ジェンダー的偏見のない職務価値決定をするという示唆がなされた。

  2. (2)民間職業仲介事業所条約
    民間仲介事業所に雇用される労働者について民間職業仲介事業所条約11条にある、結社の自由、団体交渉、最低賃金、労働時間その他の労働条件、社会保障給付訓練機会、安全衛生など保護が与えられることを確保すること等、政府の取り組みについての追加情報を求めた。今年の条約勧告適用専門家委員会で審議される予定。

【国際協力本部】

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