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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年11月22日 No.3110 「社会保障制度改革のあり方に関する提言」公表 -持続可能で成長と両立する制度改革の実現に向けて

経団連(米倉弘昌会長)は20日、「社会保障制度改革のあり方に関する提言」を取りまとめ、公表した。提言の概要は次のとおり。

■ 置き去りにされた社会保障改革

社会保障・税一体改革関連法の成立により、消費税収が社会保障給付の安定財源として確保されることとなった。しかし本来、消費増税と一体であるべき社会保障改革の主要事項は、「社会保障制度改革国民会議」の場で議論を行い、来年8月までに結論を得ることとされ、事実上の先送りとなった。

そこで提言では、社会保障制度改革国民会議における検討に向け、持続可能で成長と両立する制度改革の実現を訴えた。

■ 給付の効率化・重点化と社会保険料・税の一体的見直し

世界に類例のないスピードで進行する少子高齢化を背景に、社会保障制度の支え手である現役世代は減少する一方、高齢化に伴う社会保障給付費は、年々増加の一途をたどっている。こうしたなか、2015年度にかけて消費税率を段階的に10%まで引き上げたとしても、2025年度時点の勤労者世帯当たりの社会保険料負担額は年間25万円程度増加し、事業主負担も総額12兆円程度上昇すると見込まれている(いずれも2011年度対比)。

こうした状況を放置すれば、家計の消費の抑制や企業の生産コストの上昇を通じて、わが国の立地競争力は低下し、企業の生産拠点の海外移転や国内の雇用機会の喪失など、国民生活に著しい不利益が生じることが懸念される。

そこで、社会保障給付の一層の効率化・重点化の推進と、社会保険料と税の一体的見直しを通じた、自助・共助・公助の役割分担の明確化(自助を基本としつつも、自助でまかないきれないリスクは「社会保険料」による「共助」、保険原理を超えたリスクへの対応や世代間扶助は「税」による公助)が急務である。

■ 社会保障各分野における改革の断行

提言では、(1)医療(2)介護(3)年金(4)少子化対策――の社会保障各分野における現下の課題や、制度改革の方向性、給付の効率化・重点化に向けた具体策を提示した。

また、持続可能で成長と両立する制度改革に向けて、(1)社会保障構成財源の見直し(2)マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の早期実現(3)2025年度に向けた政策展望(4)成長戦略と整合的な改革――の必要性を強調した。

■ 求められる政治決断

活力ある経済社会を維持していくためには、将来世代にツケを回さず、現世代が給付の適正化を含む厳しい改革を甘受する必要がある。改革の実現に向けた、党派を超えた政治のリーダーシップを期待する。経済界としても、国民各層の理解と納得を得られるよう、努力していく。

給付の効率化・重点化に向けた具体策の例
分野NO.項目
医療1後発医薬品の使用促進
2診療報酬・療養費の不正請求に関わる指導・監査の強化
370~74歳の患者負担の本則化(1割→2割)
4医療保険の給付範囲の見直し
(一部の高度医療の適用除外・保険免責制等)
5医療の標準化、外来診療を含む診療報酬の包括払い化の推進
6医療保険給付費の総額管理制度の検討
介護7軽度者の訪問介護給付から生活援助を除外
8予防給付を再編し自治体独自の高齢者福祉事業で吸収
9補足給付の除外(税で対応)
10所得や要介護度に応じた負担率の設定
11ケアプランの作成への利用者負担の導入
12特別養護老人ホームの利用者限定(重度者・低所得者)
13区分支給限度基準額の引き下げの検討
年金14マクロ経済スライドの見直し
(物価変動率がマイナスあるいは低い場合でも発動)
15低年金者に対する福祉的給付の見直し(制度廃止も視野)
16高所得者の年金受給額の適正化
子育て17児童手当の特例給付の廃止や所得限度額の見直しの検討

【経済政策本部】

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