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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年6月6日 No.3133 復興の現状と課題<被災地視察報告>(最終回) -小名浜港(福島県いわき市)

前号に続き、被災地視察の模様について、今回は小名浜港の状況を報告する。

応急復旧を終えた岸壁では銅精鉱の積み下ろしが行われていた

震災の爪痕はまだ残されている

ラインがずれたまま復旧された岸壁

小名浜港の周辺には、発電所をはじめ電力・エネルギー関連の企業を中心に多くの企業・工場が立地している。このため石炭や重油といったエネルギー関連貨物、亜鉛鉱や化学薬品などの工業原料、コンテナ貨物等の輸出入・配送拠点として重要な役割を担っており、国が推進する「国際バルク戦略港湾(石炭)(注)」にも選定されている。また、震災前には年間約250万人が訪れる福島県内有数の観光地であるほか、水産業の拠点としても知られる。

東日本大震災による被害状況は、他の港に比べ、津波よりも地震に起因する被害が大きかった。埠頭の岸壁が損壊し、岸壁背後の地盤が沈下したほか、ガントリークレーン(コンテナなどの積み下ろしを行う大型クレーン)、ベルトコンベアといった港湾施設が倒壊した。

港湾利用の早期再開を図るため、応急復旧した岸壁を暫定的に供用しつつ、その隣接する岸壁では本格復旧を進めており、34ある岸壁のうち本格復旧が済んだものは22バースである。工事中のため利用できない岸壁は9バースとなっており、これらも今年度中にはすべて本格復旧に向けた工事が完了する予定である。

本格復旧、応急復旧を終えた岸壁では石炭や銅精鉱等の積み下ろしが行われており、積み込んだ貨物を周辺の工場等に運ぶトラックが往来する様子がうかがえた。周辺に立地する火力発電所のフル稼働に伴う石炭、原油等の増大により、取扱貨物量は震災前の約1.2倍となっている。

一方、これまでの慢性的な大型岸壁の不足に加え、利用可能な岸壁が震災前の7割程度であることやクレーン等の被災による荷役効率の低下により、船舶の滞船(沖待ち)が常態化する状態にある。今後は、大型岸壁の本格復旧工事の進捗により、滞船問題の一部は改善される見込みである。

4回にわたり報告した被災地視察の模様は以上である。インフラを中心に復旧が進む様子は見られたが、街全体の復旧・復興はまだ道半ばである。今後の産業振興のあり方も含めて課題は多く残されており、経団連としても引き続き被災地の復興に向けたサポートを継続していく。

(注)国際バルク戦略港湾=資源エネルギー・食料等の物資の安定的かつ安価な確保を目的に集中的に整備するために指定された港湾。

【産業政策本部】


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