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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年9月12日 No.3145 「社会保障制度改革の動向」聞く -内閣官房社会保障改革担当室の吉田審議官から/社会保障委員会企画部会

経団連の社会保障委員会企画部会(浅野友靖部会長)は4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣官房社会保障改革担当室の吉田学内閣審議官から「社会保障制度改革の動向」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

(1)今般の社会保障制度改革の位置づけ

社会保障制度改革に関する検討は、これまでも政府内で積み重ねられてきた。今般、社会保障・税一体改革として進められた検討は、次の三つの特徴を持っている。

第1に、消費税率の10%までの引き上げを通じた安定財源の確保とともに、社会保障の機能強化や給付の重点化・効率化策が一体のものとして議論された。

第2に、昨夏の国会審議で積み残された課題については、2012年8月に自民・公明・民主の3党合意により成立した「社会保障制度改革推進法」に基づき、社会保障制度改革国民会議(以下、国民会議)を設置し、1年以内に結論を得ることとされた。これにより、国民会議は、12年11月から計20回の検討を行い、13年8月6日に報告書を取りまとめた。

第3に、政府が必要な「法制上の措置」を講ずることをコミットしている。政府は、国民会議が取りまとめた報告書の内容を踏まえ、今後の社会保障制度改革の工程表ともなる「プログラム法案」の骨子を閣議決定した。次期臨時国会では、骨子に基づく法律案が審議されることとなる。その方向性・スケジュールに沿って、個別・具体的な制度については、関連する審議会等で検討が進められ、来年の通常国会以降、順次提出される見込みである。

(2)改革の大きな方向性

国民会議では、社会保障制度の持続可能性の確保が改革のねらいとされた。すなわち、制度が財政面からきちんともつのか、負担面においても国民の納得を得られるかという点。同時に、必要なニーズに的確・効率的に対応できるかの2点である。そこで、「全年代型の社会保障への転換」や「『年齢別』から『負担能力別』に応じた負担原則」といったキーワードが盛り込まれた。具体的には、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造から、現役世代も含めた全世代を給付の対象とする。一方で負担についても、高齢者も高所得であれば相応に求めて、現在の「将来世代への負担の先送り」状態を改めていく考え方である。

さらに改革の道筋については、「短期」(一体改革による消費税増収が段階的に生じる期間内に集中的に実施するもの)と、「中長期」(団塊の世代が75歳を超える2025年を念頭に置いて、段階的に実施するもの)に分けて整理した。

(3)各分野における改革の方向性

少子化対策分野では、「子ども・子育て支援新制度」の着実な実施、妊娠・出産・子育てへの連続的支援、ワーク・ライフ・バランス施策等を推進していく。

医療・介護分野では、データによる「見える化」を通じたサービス提供体制の改革が大きな一つの柱とされた。医療・介護分野における地域ごとのデータの活用により、サービスの効率化を図っていく。また、医療保険制度においては、国民健康保険の財政・運営基盤の安定を図り、協会けんぽの課題に応えるとともに、後期高齢者支援金に総報酬割を全面導入することにより、高所得者の比較的多い健保組合に負担増をお願いする方向性が示された。

年金分野については、持続可能かつセーフティネット機能を備えた制度の構築に向けて、どのような将来像を描こうとも取り組むべき課題から改革することとなった。

民間企業の方々にもこうした大きな議論の流れを、理解していただきたい。特に個別企業として、また企業人も一市民であることから住民として、それぞれの地域における医療・介護サービスがどのような状況で、どう改善されようとしているのか、問題意識を持って積極的に関与されることを期待したい。

【経済政策本部】

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