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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年10月31日 No.3152 2011年秋のタイにおける大規模洪水後の取り組みと課題聞く -日タイ貿易経済委員会

経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で、外務省南部アジア部南東アジア第一課の岩本桂一課長と国際協力機構(JICA)の竹谷公男客員専門員を招いて、日タイ貿易経済委員会(小林栄三共同委員長、伊藤一郎共同委員長)を開催した。当日は、2011年秋にタイのチャオプラヤ川で発生した大規模洪水の概要、タイ政府の取り組みと今後の課題について聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.洪水の原因と被害状況

チャオプラヤ川は世界的にみて流下能力が低く氾濫が起こりやすい川である。また、バンコク近郊の工業団地は比較的低地の氾濫頻発地域に位置しており、常に洪水を警戒する必要がある。

2011年雨季の降雨量は平年の4割増であり、既存の四つのダムに限界まで貯水したものの、工業団地の左岸の堤防兼用道路を越えて浸水した。その結果、七つの工業団地で計804社が被災することとなった。日系企業は449社と被災企業の大半を占めた。現在、被災企業のうち、完全再開は57%、部分再開は25%、残りは未再開あるいは閉鎖となっている。

2.治水対策の進捗と課題

  1. (1)インフラ整備
    タイ政府は昨年、ダム・主要河川の堤防・放水路・洪水予測システム等の整備を10事業に分割して入札を実施した。これに対し中国・韓国・タイの企業が落札したが、環境アセスメントと公聴会の実施手続きのため、スケジュールは遅延している。
    なお、JICAは、タイ政府が洪水後に設置した水資源管理戦略委員会に唯一の外国人アドバイザーを派遣し、治水方針の策定を支援するとともに、高精度の測量を実施し、これを基に洪水予測システムの構築と治水対策マスタープランの策定を行った。現在、タイ進出企業に対して、洪水予測システムへの登録をお願いしている。

  2. (2)洪水保険
    タイ政府は企業救済のため、政府出資で自然大災害保険(CIP)を設置した。ただしCIPには、(1)発動要件がタイ政府から自然災害宣言が出された場合に限られていること(2)50%以下(大企業)の補償では不十分であること(3)免責金額が補償限度額の5%、保険料率は1.25%と、民間保険に比べて高いこと――等の課題があり、企業からは改善要望が寄せられている。

◇◇◇

日タイ貿易経済委員会では、かねてタイ政府に対し洪水対策インフラ整備の促進およびCIPの改善について要望しており、引き続き日タイ経済連携協定のもとで設置されたビジネス環境向上小委員会等を通じて取り組みを進めることとしている。

【国際協力本部】

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