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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年2月13日 No.3165 理工系女性人材の育成への課題 -大島・東京大学大学院情報学環・生産技術研究所教授から聞く/企業行動委員会女性の活躍推進部会

講演する大島教授

経団連の企業行動委員会女性の活躍推進部会(中川順子部会長)は1月23日、東京・大手町の経団連会館で第5回会合を開催し、大島まり東京大学大学院情報学環・生産技術研究所教授から理工系女性人材の育成に向けた課題を聞くとともに、委員間での意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 理工系分野における女性研究者・技術者の現状

わが国の就業人口は、減少局面に入っており、将来的に女性の就業が不可欠である。しかし、全産業の就業者人口に占める女性の比率は約4割であるのに対し、製造業では3割弱、さらに専門・技術職に至っては1割にも満たない。また、研究者に占める女性比率は、2012年に過去最高となったものの、OECD諸国では最下位であった。理系の学問分野別の大学志願者状況をみると、資格取得を目指しているためか医学・歯学・薬学系統等の志願者数は上昇している反面、工学部志願者数は減少している。このように、わが国では理工系における女性人材の進出が大きく遅れている。

このような現状の背景には、わが国では理工系に対して、「研究室に寝泊まりしなければいけない」「一人で研究ばかりして暗い」等の正しくないイメージがあること、科学技術の社会における意義や役割が生活のなかで実感に結びついていないことが挙げられる。

しかし、科学技術は、社会と密接に結びついており、研究を通じて社会へ貢献しているという実感を持つことも可能である。私自身、専門である流体工学を基盤にして、医学・生物分野と連携して、血液の流れという観点からヒトの体を分析しており、科学技術の応用範囲は広範にわたっていることを実感している。実際には、企業や研究機関における、理工系分野の女性人材に対する需要は非常に高い。

■ 理工系女性人材を育成するための取り組み

東京大学では、トップダウンの取り組みとして、仕事と家庭の両立支援を行っている。大学の国際競争力向上に向けて、各キャンパスに保育所を整備し、研究者、学生、留学生の利用を念頭に、開所時間や保育料を設定している。

次に、ボトムアップの取り組みとして、身近な先輩や会社にいるOB・OG等の縦のネットワークを活用すること等を通じて、理系の仕事の現場について正しい認識を持ってもらうべく、啓発を行っている。オープンキャンパスで理系の面白さを発信するとともに、私の所属する生産技術研究所でも、産業界と協力して、高校への出張授業等を実施している。

理工系女性人材の育成には、大学のみにとどまらず、企業も含めた社会全体で継続的に取り組んでいくことが重要である。強く、しなやかに科学技術の力を社会に活かせるよう今後も積極的に育成を図っていきたい。

◇◇◇

その後の委員間によるグループ討議では、「理系には、ゼネラリストとしての需要もあり、幅広いキャリアが広がる。こうした現状を理解してもらうことが必要」「女子学生の進路選択に大きな影響を持つ教師と家庭が理工系に対する正しい認識を持つことが必要」等の意見が挙がった。

【政治社会本部】

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