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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月29日 No.3178 WTO交渉の動向を聞く -アゼベドWTO事務局長から/貿易投資委員会

アゼベトWTO事務局長(中央)と米倉会長(右)、
勝俣副会長・貿易投資委員長(左)

経団連(米倉弘昌会長)は21日、訪日中のロベルト・アゼベド世界貿易機関(WTO)事務局長を招き、東京・大手町の経団連会館で貿易投資委員会(勝俣宣夫委員長、芦田昭充共同委員長)を開催した。その後、米倉会長と勝俣副会長・貿易投資委員長が、WTOの最近の動きをめぐり、アゼベド事務局長と懇談した。貿易投資委員会におけるアゼベド事務局長の説明概要は次のとおり。

■ バリ合意の意義

昨年末のWTO閣僚会合で妥結されたバリ合意は、多角的貿易体制の維持・強化に向けてWTOが果たす役割をあらためて実証した。特に大きな成果は貿易円滑化協定であり、その実現により、世界全体で年間1兆ドルの経済効果をもたらし、2100万人の雇用につながるとの試算もある。中小企業を含め、日本企業全体がメリットを享受できるだろう。そしてバリ合意は、ドーハラウンドの再活性化に向けても意義がある。

現在、多国間交渉と平行して、二国間や複数国間の取り組みが進んでいる。それらは多国間交渉の進展を阻害するものではなく、むしろ多国間の取り組みを補完し、新たなインスピレーションを与えるものと歓迎している。情報技術協定の品目拡大交渉についても、近々成果が上がることを期待している。

他方、二国間や複数国間の取り組みには限界もある。貿易円滑化、補助金削減、規制協力、金融や通信などのサービス自由化は、限られた参加国のなかで進めても、効果は限定的である。したがって、多国間の取り組みを着実に進めることも重要である。

■ WTOの今後の取り組み

保護主義を抑えるためにも、今後、特に次の2点に注力する。第1に、バリ合意の着実な実施である。貿易円滑化協定をはじめ、合意内容を実施に移すことで、多角的貿易体制に対する信頼が高まる。作業は順調に進んでおり、貿易円滑化協定はWTO協定の改正議定書として採択されることとなる。

第2に、今年12月までに、ドーハラウンドの残された課題に関する作業計画を策定することである。バリ合意のような部分的な合意をくり返すことは難しく、今後は全分野を交渉テーブルに載せることになる。成功に向けては、特に困難な課題が残る農業、鉱工業品、サービスの主要3分野の進展が求められる。そのためにも、実行可能なところから、柔軟性を持って取り組んでいく必要がある。

【国際経済本部】

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