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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年8月28日 No.3189 ウクライナに官民経済ミッション派遣 -困難な状況下、今後の二国間協力の可能性模索

日ウクライナ官民経済ミッションに参加する茂木経産相(右から3人目)、
佐々木副会長・委員長(左隣)ら日本側参加者一行

ウクライナをめぐる情勢が不透明さを増すなか、今年6月のG7サミット(ブリュッセル)において、安倍晋三首相はウクライナ支援策の一環として、官民合同による経済ミッションを派遣する方針を国際的に表明した。また、同サミットでは、エネルギー効率の向上に関するウクライナへの技術的支援の重要性が確認された。これらを踏まえ、茂木敏充経済産業相は同国を訪問する意向を表明するとともに、経済界の同行を経団連に要請した。

この要請に基づき、経団連(榊原定征会長)の日本NIS経済委員会(佐々木則夫委員長)は経済外交における官民連携の重要性にも鑑み、4日から5日まで、キエフにミッションを派遣した。

ミッション派遣直前に開催した結団式ならびにミッションの概要は次のとおり。

1.結団式(8月1日、経団連会館)

結団式では、経済産業省の鈴木英夫通商政策局長および外務省の中村亮欧州局中・東欧課長から、最近のウクライナの政治経済情勢と今後の課題等について説明を聞いた。

両氏からそれぞれ経団連による官民経済ミッション派遣に対して謝意が表明された後、中村課長から、ウクライナの地政学的な重要性やロシアとの関係、同国東部をめぐる情勢等について包括的な説明がなされた。

引き続き鈴木局長から、最近のウクライナの経済動向や日・ウクライナ貿易・投資関係、エネルギー分野におけるわが国の支援のあり方等について具体的な説明があった。

2.ミッション(8月4~5日、キエフ)

ミッション一行はキエフ到着後、坂田東一駐ウクライナ日本国大使から現地情勢ブリーフを受けた(4日)。翌5日、日本NIS経済委員会はウクライナ経済発展・貿易省の協力を得て、「日本ウクライナ ビジネス・コンサルテーション会合」を開催した。

同会合では、パウロ・シェレメータ経済発展・貿易相やユーリー・プローダン・エネルギー・石炭産業相、茂木経産相はじめ、日・ウクライナ両国の政府・経済界から延べ90名の参加のもと、二国間経済関係の拡大に向けた方策等について具体的な意見交換が行われた。特にウクライナのビジネス環境の現状を確認するとともに、農業やエネルギー・環境など個別分野における二国間協力の可能性を模索した。

■ ウクライナにおけるビジネス環境を把握

冒頭、シェレメータ経済発展・貿易相は、「日本はアジアの奇跡のパイオニア」との認識を示し、日本の経験も参考にしながら、直接投資を呼び込み、将来的にウクライナの輸出増加につなげていきたいとの意欲を示した。

さらに、ウクライナ側から、(1)農業(2)IT(3)自動車・同部品(4)再生可能エネルギー――の各分野への投資を優先的に促進するための方策について説明がなされた。一方、同席した茂木経産相は、さらなる投資促進の観点から、現在中断中の日・ウクライナ投資協定交渉を再開し、年末までに大きな進展が図られるよう交渉加速化を促した。また、世界貿易機関(WTO)ルールに沿った透明性の確保や汚職問題の解決、規制緩和、税制の簡素化等がビジネス環境整備における喫緊の課題であることを両国の官民双方で確認した。

■ 食料安全保障にかかわる二国間・地域間協力について討議

アンドリー・ディクン農業副大臣は、ウクライナは広大で肥沃な農地に恵まれる一方、(1)省エネに向けた機械・設備の更新(2)加工度の高い食品の製造(3)港湾はじめインフラの整備――等が課題であると説明した。

同氏はまた、両国の農業分野における協力は相互補完的であり、日本の食料安全保障の面でも貢献できると述べ、日本側と闊達な意見交換を行った。

■ 高効率石炭火力を通じたエネルギー・環境分野での協力を指向

プローダン・エネルギー・石炭産業相は、ウクライナ東部における紛争等を受け、ロシアからのエネルギー輸入が停止している現状や、エネルギー関連インフラが破壊されている実態を説明した。また、石炭火力発電所の7割が老朽化しており、設備改修・先端技術の導入が極めて重要であると主張したうえで、日本の高効率技術の導入に意欲を示した。とりわけエネルギーミックスの4割を占める石炭火力発電の改修に伴う省エネ余地が大きいことを双方で確認した。

■ ミッションの成果と今後の課題

このほか、佐々木委員長は日本経済界代表として、茂木経産相のアルセニー・ヤツェニューク首相表敬にも同席した。同首相はじめウクライナ政府高官等は、困難な状況にあるウクライナへの具体的支援策の一環として、日本経済界の姿勢ならびにプレゼンスを極めて高く評価した。

経団連では、今次のウクライナ新政権との関係構築を踏まえ、引き続き具体的な意見交換を深め、二国間経済関係を一層緊密化する観点から、次回(第6回)の日本ウクライナ経済合同会議の開催に向け、ウクライナ政府と調整を進めていく。

【国際経済本部】

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