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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年9月4日 No.3190 第10回「経団連 Power Up カレッジ」開催 -「アサヒグループの経営戦略と、それを支えるリーダーの心構え」/アサヒグループホールディングスの荻田相談役が講演

講演する荻田氏

経団連事業サービス(榊原定征会長)は7月29日、東京・大手町の経団連会館で第10回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、アサヒグループホールディングスの荻田伍相談役から「アサヒグループの経営戦略と、それを支えるリーダーの心構え」をテーマとする講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ アサヒグループの経営環境と生き残り戦略

私が入社した1965年の少し前からアサヒビールはじりじりとシェアを落とし続けており、高度成長期の勢いでビール市場が拡大したにもかかわらず、85年には1割以下に落ち込むという深刻な状況に陥った。そうしたなか、「お客さまはビールの味がわかる」「お客さまの嗜好は変化する」というマーケットインの考えを持って商品を投入し、スーパードライの発売を契機として、現在は課税数量ベースで37%強のシェアとなったが、経営陣は85年当時のような状況にならないか、常に危機感を持って経営にあたっている。

ビール業界を取り巻く環境に目を向ければ、世界のビール消費量は中国・ブラジル・ロシアなどの新興国が牽引して消費を押し上げている。同時に、上位メーカーの寡占が進んでいる。そうしたなか、国内市場はピークであった94年からは20%以上縮小しており、企業として生き残っていくためには、国内事業を磐石にしたうえで、グローバルに打って出て、海外事業を拡大していく必要がある。

そのため画期的な技術や商品の開発をしていくことが課題となってくるが、イノベーションは簡単なことではない。顧客の嗜好の変化や行動・心理を徹底的に調査し、保有する事業シーズや知的財産の活用を考える。また、国内事業の磐石化という視点では、既存ブランドを強化し、ヒット商品をロングセラー商品に育てていくため、飲み方やライフスタイルの新提案など、新たな驚きと感動を提供し続け、商品の鮮度を保つ工夫も必要だろう。

■ 経営者・リーダーとしての心構え

経営者・リーダーに必要な心構えはどのようなものか。(1)会社を存続させ雇用を守るという強い意志(2)自己犠牲の精神を持ち率先垂範していく姿勢(3)先見性を持って目標・ビジョンを定め対応を決める力や戦略構築能力(4)従業員と健全な危機感を共有し進むべき方向性を示す、しつこいほどの伝達力(5)実際にやり遂げる実行力――等が求められる。

そして部下を育成しリーダーシップを発揮するには、強い関心を持って部下を知ろうとする努力、「小さな旗印を掲げる」すなわち小さくても目標を定め成功体験を持たせる工夫、部下の失敗に対して体を張っても守るという気概などが求められる。また、組織はトップの持つ能力以上のものにはなれない。リーダー自身が常に学び、成長しようという意欲を持ち続けなければ、部下は育たないということである。

部下には「すべての行動は心の持ち方から起こる」と伝えてほしい。人は心の持ち方で行動が変わるし、知恵も出てくる。できない理由ではなく、できる理由から考えること。そしてピンチをチャンスととらえるプラス思考を持ち、運がよいと常に思うことが重要である。

最後に、どんな経営者も、リーダーも、社員もよい会社にしようと努力しているが、時に組織が硬直化し、活動がマンネリ化する状況が見受けられる。こうした兆しを早期に見つけ出し、改善していく必要があり、経営は一瞬たりとも油断はできないものだ。常に謙虚に、自身の行動や組織をチェックしてほしい。

【経団連事業サービス】

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