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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年9月18日 No.3192 「日本の成長・発展を主導するイノベーションの活性化に向けて」 -早稲田大学政治経済学術院の戸堂康之教授が説明/総合政策委員会企画部会

経団連の総合政策委員会企画部会(藤川淳一部会長)は10日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、早稲田大学政治経済学術院の戸堂康之教授から、「日本の成長・発展を主導するイノベーションの活性化に向けて―規模と多様なつながりの役割」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.経済成長の源泉

長期的な経済成長の源泉は、イノベーションにある。イノベーションとは、新技術や新商品の開発にとどまらず、経営や財務等における改革などを含む。端的に表現するなら、創意工夫といえる。創意工夫を生み出すには、人間の「量」である人口と、「質」である多様な人間のつながりが重要である。成長率の低下を回避するには、少子化対策を進めて人口減を阻止するとともに、多様なつながりを活用してイノベーション活動の効率性を高める必要がある。

多様なつながりを生み出すためには、産業集積や地域内のつながりといった既存のネットワークに加え、グローバル化などを通して、「よそ者」とのつながりを増やすことが必要となる。つながりの構築にはコストがかかることから、市場経済に任せるだけでは十分に形成されない。政策的に支援することが経済全体にプラスとなる。

2.「よそ者」に対する排他性と経済停滞の悪循環

日本では、多様なつながりが構築されていない。特に地方は国際化や産業集積が遅れ、経済停滞を招いた。「よそ者」に対する排他性と経済停滞の悪循環が日本の「失われた20年」の要因であり、この悪循環は、地方だけでなく、農業・医療・中小企業などの規制セクターにおいても発生している(図表参照)。

海外に目を向けると、東南アジアも、この悪循環によって「中進国の罠」に陥りかけている。保護主義が台頭し、中進国の成長要因である外資企業からの技術波及が進んでいないのである。

排他性と経済停滞の悪循環

3.いま何が必要か

排他性と経済停滞の悪循環に陥っている日本の地方経済、日本経済全体、東南アジア各国には、「よそ者」とのつながりを構築する政策が必要である。

地方経済には、大都市で経験を積んだ人材を地方に呼び戻すUターン、Iターン支援のほか、大学改革を進め、地方大学が産学連携に取り組むインセンティブを高めていくことが有効であろう。

日本経済全体では、規制改革の推進が必要となる。例えば、医療・介護分野で株式会社の参入を促進すれば、「よそ者」の知恵でイノベーションを起こすことが可能となる。

東南アジアが「中進国の罠」に陥るのは、日本にとっても経済・政治両面で損失である。そこで、TPPをはじめとする経済連携協定を拡大して、東南アジアを巻き込むべきである。その際、貿易だけでなく、直接投資を拡大する必要がある。あわせて、政府開発援助による技術援助を進め、中進国の国内イノベーションを促進すべきだ。

【経済政策本部】

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