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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年9月25日 No.3193 「今後の労働市場政策における能力開発の重要性」をテーマに講演聞く -雇用委員会

経団連は12日、都内で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催した。中央大学経済学部の阿部正浩教授から、今後の労働市場政策における能力開発の重要性について講演を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 職業能力開発の必要性

昨今、完全失業率が3.5%程度の水準から下がらない状況にある。これは労働市場がほぼ完全雇用の状態にあると考えられる。労働市場で求職者がいるにもかかわらず、求人が埋まらず失業者が存在する状況、いわゆるミスマッチが生じている。

ミスマッチを防ぐためには、求職者側と求人企業側の間の情報の不完全性を埋める必要がある。そのため、政府はハローワークの求人情報の民間への提供等の政策を進めている。また、求人にかなう職業能力を労働者が身につけることが重要であり、個人主導のキャリア形成や職業能力の「見える化」などの政策が求められる。

■ 企業の能力開発の現状

厚生労働省の調査によると、正社員に対して教育訓練を行っている企業の割合は8割程度にとどまっており、バブル崩壊以降、減少している。その要因として、企業が教育訓練に取り組まなくなったことに加え、教育訓練を行っても成果に結びつかず、効果がないため、労働者の自己啓発に任せている企業が増えているのではないかと感じている。

また、非正規雇用労働者に対して教育訓練を実施している企業の割合は、3割程度しかない。主要先進国と比較して、2000年以降、日本の全要素生産性が伸びていないのは、教育訓練の機会に恵まれない労働者の増加が一因ではないか。

■ 労働市場における情報の非対称性解消の必要性

外部労働市場において、求人企業が求職者の意欲、能力を正確に評価することは難しい。教育訓練によって身につけた能力が労働市場で適正に評価されないのであれば、労働者は能力開発のインセンティブを失うことになる。

外部労働市場において、労働者の意欲、能力が正確に伝達される仕組みを整備する必要があり、特に、職業能力評価制度の充実が求められる。

■ 能力開発をめぐる今後の課題

今後、知識社会の進展により人的資本の高度化が進む一方、技術革新によって人的資本の陳腐化も進む。そのなかで、誰が労働者の能力開発の主体となるかが問われる。今後、徐々に個人主導の能力開発を企業が支援する方向に進むのではないか。

その場合、労働者個人の予算的・時間的制約やキャリアの不透明性の解消等が課題となる。特に、20代は最も能力開発が求められる年代だが、同時に子育てに手がかかる時期でもあり、配慮が重要となる。

◇◇◇

当日は、阿部氏の説明に続き、「採用選考に関する指針」の手引きの見直し、および14年度規制改革要望(雇用・労働分野)の審議が行われ、それぞれ了承された。

【労働政策本部】

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