1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2014年10月23日 No.3197
  5. 第13回企業倫理トップセミナー

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月23日 No.3197 第13回企業倫理トップセミナー -企業不祥事の未然防止・事後対応に関する対策聞く

あいさつする榊原会長

説明する中込弁護士

経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で約430名の参加者を得て、第13回企業倫理トップセミナーを開催した。

開会にあたり榊原定征会長が、「企業倫理の確立、社会的責任の実践は経営者の最優先の責務。経営者自身が強いリーダーシップを発揮して社内体制の整備と従業員の意識醸成に取り組んでいただきたい」とあいさつした。

続いてふじ合同法律事務所の中込秀樹弁護士が「企業不祥事の問題調査の過程で把握した企業の統治、遵法、倫理維持における問題とその対策」と題する講演を行った。講演要旨は次のとおり。

■ 事実認定と法律判断

私は、1967年に任官してから、定年まで約40年間裁判官を務めてきた。裁判官の仕事は端的にいえば、事実認定、法律判断を行い、理由が説明できる判決を書くということである。事実認定は法律要件に基づいて公正・公明に行うものであるが、法律判断は、経験則によるところも大きいため、裁判官は経験則を身につけることが最も重要である。

また、裁判官の理想は「愚直」であるということである。多くの時間を使って記録をよく読み、事実を積み上げることが重要である。先に事件の筋書きを想定して進めていく手法は、誤った判断を行う原因となり、結果として被害者を生むことになりかねない。

■ 不祥事の類型・原因

不祥事の類型としては、業種、業態によりさまざまなものがある。典型的なものは個人による会社資金の横領や詐欺行為を見逃し、会社に損害を与えるもの、経理担当者による粉飾決算や帳簿記載の不正操作、贈賄、不正送金、報告義務違反やインサイダー取引禁止等の取締法違反行為の放置などである。

これらは会社のシステムを構築することによって相当程度は防止できるが、会社内の人間関係、会社上部と社員の意思疎通や一体感、使命感、仕事に対するプライド、その人に即応した処遇等人事政策や人事の運用、日々の人間関係、上司の人柄・気遣いなどの役割の占める割合が大きい。

■ 事後対応の類型

不祥事にも単発的なもの、連続的なもの、個人的なもの、組織的なもの、その態様、悪質さ、会社組織の関与度、不祥事に関与した者の地位、職種、会社業務との関連性の濃淡など、さまざまなケースがあり、事後対応もこれらによって異なる。

まず不祥事が判明したら速やかに公表を行うことが重要である。事実関係の調査においては、第三者委員会を設置するケースもあるが、第三者委員会の役割にも意見を述べるものから独立の委員会で調査するものなど種々のものがある。責任の取り方にはいろいろあるが、日本的対応ではあるものの、少なくとも謝罪は絶対に必要である。

■ 不祥事の予防

まず重要なのは、管理者と現場、上司と部下の間の信頼関係である。意見を述べても正当に理解され、不当な取り扱いを受けないという信頼関係や、意見をいえる、いわせる企業風土が不祥事の未然防止につながる。

取締役会の活性化という観点では、社外取締役・社外監査役を置くだけでは意味がない。制度を設けることよりも、それをどう機能させるかが重要である。

また、過去の事例では、固定観念が不祥事の芽を見過ごす原因となることも多い。一律・規則的な対応を行う点でマニュアルは重要だが、一方でそれが固定し、対応を硬直化させることもあるため、規則が制定されている理由を十分に理解し、柔軟な対応ができるよう社員教育を行う必要がある。

◇◇◇

講演を受けて、大宮英明副会長・企業行動委員長は、「企業倫理の徹底、浸透に向け、各社において実効ある施策を講じていただきたい」と述べた。

【政治社会本部】

「2014年10月23日 No.3197」一覧はこちら