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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月27日 No.3202 「産業クラスターの再生を通じた企業競争力の強化」 -松原東京大学大学院教授が講演/産業問題委員会

経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で産業問題委員会(古賀信行委員長、下村節宏共同委員長)を開催し、東京大学大学院総合文化研究科の松原宏教授から「産業クラスターの再生を通じた企業競争力の強化」について説明を聞いた。その後、提言「わが国企業の競争力強化に向けて」 「国家ブランドの構築に向けた提言」 「第5次出入国管理基本計画策定に向けた意見」を含む3本の提言を審議した。講演の概要は次のとおり。

1.産業クラスターの再生に向けた方向性

クラスターの再生の方向性を考えるにあたり検討すべき課題としては、(1)既存の集積理論の整理と新たなアプローチの検討(2)2000年代初頭の日本のクラスター政策の検証(3)政策の国際比較(4)政策的不整合の調整――の四つが挙げられる。

近年の集積理論の新たなアプローチとしては、多様な産業によって構成される広域圏域での複合集積や集積間の関係性を踏まえたネットワーク化、さらには時間軸に基づくクラスターの進化に着目し、成長したクラスターに新たな方向性を与えて再生を図っていくといったものが存在する。こうしたなかわが国の産業立地政策も、21世紀に入り競争力のある地域産業・企業の発展支援ということが目指されてきた。

しかしながら実際の政策は、経済産業省と文部科学省による二つのクラスター政策が同時並行で進められ、クラスターごとに明確な目標を定めたフランスとは異なり、各クラスターの特性を踏まえないかたちで目標設定がなされるなど、政策効果を十分に発揮する段階には至っていない。ただし、産学官の各主体間で緩やかなネットワークが構築され、連携が進みつつあるなど、クラスターの再生という意味では助走期間を過ぎ、次のステップに入ったと位置づけられる。

2.企業と地域の共進化に向けて

他方、企業行動が地域経済に与える影響をみるために企業の立地調整に注目すると、1970年から90年代にかけて、企業は国内の大都市圏から地方へ、さらには海外へという遠心力的な動きをみせていた。しかし、2000年代以降は、グローバル化に対応して海外展開を進める一方、研究拠点等は大都市圏への回帰が進んでいる。

こうしたなか、地方の工場は単純な生産機能に加え、専門的・技術的能力を有する従業員からなる開発部門を工場に隣接させることで、生産性が高く、海外の生産拠点を支援するマザー工場としての役割を担うなど、新たな進化を遂げている。その数も、地理的な変動はあるものの、大きく減少するには至っていない。

今後は、こうした工場機能を地域の特性に合ったかたちで維持・強化することで、企業と地域の共進化を進めるとともに、集積間のネットワークを充実させて地域発のイノベーションを促し、ひいては企業の国際競争力の強化に結びつけることが重要と考えられる。

【産業政策本部】

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