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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年1月8日 No.3207 第3回審議員会

経団連が12月25日に開催した第3回審議員会(1月1日号既報)では、安倍晋三総理大臣が来賓として出席し、あいさつした。その後、黒田東彦日本銀行総裁が「『2%』への招待状」をテーマに講演した。来賓あいさつおよび講演の概要は次のとおり。

安倍首相あいさつ―「経済最優先で進め、景気回復を全国津々浦々に届ける」

安倍首相

先の総選挙では、「アベノミクスを前進させるのか、後退させるのか、それを問う選挙である」と、国民の皆さまに訴えてきた。お陰さまで、国民の皆さまから力強いご支持を得ることができた。また、皆さま方にも大変お世話になった。あらためて厚く御礼を申し上げる。

引き続き、経済最優先で、さらに大胆に、スピード感を持って三本の矢の経済政策を進めていく決意である。これによって、景気回復の暖かい風を、全国津々浦々に届けていく。

昨日、第3次安倍内閣が発足した。早速、明後日には消費喚起と地域活性化のための経済対策と、地方創生の総合戦略を決定する。成長志向の法人税改革に道筋をつける、与党の来年度税制改正大綱も、年内に取りまとめるよう指示した。改革の初年度にふさわしい改革にしていきたい。

1月には補正予算、来年度予算を矢継ぎ早に編成していく。通常国会では、成長戦略を前に進めようという国民の期待に応えて補正予算や来年度予算の速やかな成立を目指すとともに、農業、医療、雇用、エネルギーといった分野での岩盤規制改革をさらに強力に進めるための法案を提出する。改革が後退、骨抜きになることは決してない。先の臨時国会で廃案となった国家戦略特区法の改正案も、一層大胆な改革メニューを追加して次期通常国会に提出する。

安倍内閣になって、企業の経常収益は過去最高の水準となっている。家計の金融資産も140兆円増えた。雇用者数は100万人増加し、宿題であった正規雇用も今年の7月から9月には10万人増加した。企業の倒産件数は約2割減少し、24年ぶりの低水準となっている。行き過ぎた円高で海外に移転していた投資も、国内へ戻る機運が生まれつつある。経済界の皆さまには、この道の先にある明るい経済を信じて、しっかりと行動していただきたい、どんどん国内への投資を進めていただきたい。

総選挙の後、直ちに政労使会議を開催し、私から、来年春の賃上げをお願いした。経済界の皆さまには、賃上げに向けた最大限の努力と、原材料費高騰に苦しむ下請け企業の価格転嫁の取り組みに合意していただいた。榊原会長には、難しい課題に大所高所の観点から向き合っていただき、経済界内での合意に奔走していただいた。感謝申し上げる。好循環の2巡目を確実なものにすべく、政労使三者でしっかりとした道筋を立てることができた。ぜひ、政労使の合意に基づいた動きを、目にみえるかたちでつくり出していただきたい。特に、円安のメリットを受けて高収益の企業については、賃上げ、設備投資に加えて下請け企業に支払う価格についても、ご配慮をお願いしたい。

経済の好循環をつくり上げ、デフレ経済から脱却していくなかで、税収を増やす、社会保障も含め聖域を設けることなく、歳出の見直しを行う。経済成長と財政健全化の両方を必ずや成し遂げるという方針にいささかの変更もない。2020年度の基礎的財政収支黒字化という厳しい目標は、しっかりと堅持していく。目標の実現に向けた具体的な計画を、来年夏までにしっかりとつくることをお約束する。

まだまだ厳しい地方経済へ、景気回復の暖かい風を各地に、あるいは中小企業・小規模事業者で働いている皆さまにまでお届けして、初めてアベノミクスは完成するわけである。新しい総合戦略のもと、元気ある地方創生のカギは、地方での仕事づくりである。本社機能の地方移転や、地方への新しい人の流れをつくることで、仕事と人の好循環を確立し、それを支える町に活力を取り戻すことができる。皆さまには、こうした地方での仕事づくり、地方への人の流れづくりのために、積極的に行動を起こしていただきたい。

女性が輝く社会の実現は、私の成長戦略の最大のチャレンジである。旗を高く掲げ、私は、しつこく追求していく。経団連が作成された女性活躍アクションプランも踏まえ、今月、多くの企業が自主的に具体的な目標を掲げた行動計画を作成、公表されたことは大変意義のあることだと高く評価をしている。残念ながら、先の臨時国会で廃案となった女性活躍推進法案を、通常国会において早期の成立を目指していく。この法案の取りまとめに、多大なるご協力を賜り、あらためて御礼申しあげるとともに、この法律を契機に、さらに積極的な女性の育成登用をお願いしたい。

「この道を力強く進め」という国民の皆さまからの声を大きな力として、内閣が一丸となって有言実行、政策実現に邁進していくことをあらためてお約束申し上げ、私のごあいさつとさせていただく。

黒田日銀総裁講演―「『2%』への招待状」

黒田総裁

■ デフレ経済の姿

日本経済は現在、デフレのもとでの「縮小均衡」から、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」への移行過程の真只中にある。デフレ下では、現実の物価下落とともに低い予想物価上昇率が定着して実質金利が高止まりした一方、潜在成長率が低下するもとで企業の期待収益率も大きく低下したため、金融緩和が十分には進まなかった。企業からみれば、リスクを取って設備投資を行うよりも、コストカットなどで内部留保を積み上げ、現預金として保有することが相対的に有利となった。これに対するブレークスルーは、予想物価上昇率を引き上げて実質金利を低下させるか、成長力を引き上げて企業の期待収益率を高めるかであるが、わが国はその両方に取り組んでいる。日本銀行が行っている「量的・質的金融緩和」が前者、政府の成長戦略のもとで企業が取り組んでいるのが後者である。

■ 2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の転換

日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の早期実現に向けて強く明確なコミットメントを示し、人々のデフレマインドを変えるとともに、巨額の国債買入れにより名目金利をさらに低下させるものである。また昨年10月末には、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防止し、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。この日本銀行の「2%の早期実現の決意」は、企業の皆さまにもよく理解していただいていると感じており、来春の賃金交渉や価格設定において、その効果が現れることを期待している。

2%の「物価安定の目標」が実現した経済では、企業にとって合理的な行動は、現預金保有ではなく投資を行うことになる。来年は、資源価格の下落と円安により企業の収益環境は良好であり、家計にとっても実質賃金が回復していくとみられる。しかし、経済全体のパイ拡大のメリットが、移行過程の現時点ではグローバルに展開する企業等に偏在することは否定できない。来年の課題として、次の好循環につなげるために、高い収益をあげている企業が積極的に「収益を使っていく」ことが求められている。企業が前向きなスタンスに変化することは、日本経済の中長期的な成長力を高めることにつながるうえ、その企業自身にとっても直接的なメリットをもたらすことになる。

【総務本部】

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