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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年1月29日 No.3209 地球温暖化問題を技術で解決する~産業界の取り組み<4> -化学産業は地球規模の課題へのソリューションプロバイダー

化学産業は、経団連の「低炭素社会実行計画」において、(1)国内事業活動からの排出抑制(2)サプライチェーン全体での排出抑制を進める主体間連携(3)日本の化学製品・プロセスの海外展開による国際貢献(4)革新的技術の開発――の4本柱で地球温暖化対策を進めている。

国内事業活動からの排出抑制については、「低炭素社会実行計画」のフェーズⅠにおいて、2020年に向けて既存設備・技術の省エネルギー策をすべて顕現させる目標を立て、フェーズⅡにおいては、2030年に向けてさらなる省エネルギー努力の積み上げを目標として設定した。しかし、プロセス改善や省エネルギー手法等の技術の組み合わせはすでに世界最高水準に達しているため、既存技術の限界をブレークスルーする革新的な技術の開発に取り組む必要がある。

化学産業は素材(化石燃料を原料とする石油化学製品、食塩・空気・水などを原料とするソーダ製品、産業ガスなど)から最終消費財(化学繊維、タイヤ・ゴム製品、洗剤、化粧品など)に至る多種多様な製品を供給している。なかでも、製造工程での温室効果ガス(GHG)排出量は多いが、その製品が消費・廃棄に至るまでのライフサイクル全体でみると、GHGの排出削減に大きく貢献する機能性化学品(炭素繊維等)は、化学産業のみならず日本の産業を牽引する重要な製品ととらえている。このような化学製品の有用性を消費者により深く知っていただくための広報・啓発活動も重要な課題である。

また、「化学製品のライフサイクルにおけるGHG削減量」を評価するcLCA(カーボンライフサイクル分析)を開発し、2013年にはこれに基づきICCA(国際化学工業協会協議会)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の化学セクターが協働して化学産業における国際ガイドラインを策定した。さらに2015年には、このガイドラインをベースに、GHGプロトコル(注)における全産業のGHG削減貢献量の算出手法を開発する計画がスタートした。

(注)GHGプロトコル=米国のシンクタンク、WRI(世界資源研究所)とWBCSDにより策定される事業者のGHG排出量算定および報告についての標準化ガイドライン

加えて、ICCAとしても、世界各国の化学協会でcLCAの事例分析を実施するプロジェクトを進めている。こうした取り組みにより主体間連携の事例が集積され、化学産業におけるGHG削減に向けた広報にも活用されることが期待される。

化学産業のサプライチェーンはグローバルであり、化学製品の主体間連携は、国内のみならず世界のGHG削減に貢献している。日本の化学業界としては、先進的な化学プロセスの海外展開による国際貢献も進めていく計画である。

前出のICCAは、2013年に国際エネルギー機関(IEA)と協働で化学プロセスの革新によるGHG削減ロードマップをまとめている。そのなかで、2050年にはCO2と人工光合成で製造されるCO2フリー水素により製造される化学製品により、世界で10億トン以上のCO2の削減ポテンシャルが期待されていると報告された。

日本は、世界に先行して「水素社会」の形成に取り組んでいる。この動きに合わせるかたちで、日本の化学産業は、地球規模の課題への「ソリューションプロバイダー」として、またCO2フリーの社会に向けた「ゲームチェンジャー」として、産官学の強力な連携のもと革新的技術の開発を進めていく。

図表1 化学製品のCO2削減への貢献 図表2 革新的技術の開発(新たなカーボン循環の形成) 図表3 化学プロセスの削減ポテンシャル

(日本化学工業協会)
【環境本部】

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