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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年2月5日 No.3210 大阪で「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」開催 -働き方改革によりダイバーシティ推進の実践を考える

経団連は1月21日、大阪市内で、内閣府との共催により「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。同セミナーは、昨年4月に経団連が公表した提言「女性活躍アクション・プラン」に基づき、企業の管理職を対象として、女性を含めた誰もが能力を発揮できるマネジメントのあり方について考えることを目的としており、企業の管理職を中心に約120名が参加した。セミナーの概要は次のとおり。

■ 基調講演「ダイバーシティ時代の働き方~職場の働き方改革~」
松浦民恵ニッセイ基礎研究所主任研究員

講演する松浦氏

日本における少子高齢化は深刻な問題であり、経済成長と労働参加が適切に進まない場合、2030年には就業者数が現在より約820万人減るという推計もなされている。また、日本の賃金はアジアのなかでは突出して高く、これらは製品コストとなるため、日本に基盤を置く限り、製品の安さで勝負するビジネスモデルではグローバル市場で勝負することはできない。必然的に差別化が求められる先端的市場での競争優位性を確保する必要がある。ダイバーシティ・マネジメントとは、これらの課題を解決するため、変革マインドや多様な視点を持つ意欲・能力の高い人材を確保・活用する経営戦略である。

ダイバーシティ・マネジメントを考える際の重要な前提として、「家事・育児」や「介護」など、働き方に制約を抱える社員の増加も挙げられる。特に介護は、団塊の世代の高齢化により、今後さらに増加が見込まれる。このような状況において、求められる管理職像は大きく変化し、制約のある社員を含む多様な社員の意欲・能力を最大限に発揮させられる管理職が組織成果を上げつつある。

ダイバーシティ時代の管理職に必要な行動を、「業務マネジメント」と「部下マネジメント(育成や意欲の喚起)」に分けて整理する。

業務マネジメントのポイントとして3点を示す。一つ目は「部下の働き方の制約にも配慮しつつ最大限の業務を付与すること」である。指示をするタイミングや仕事量に配慮は必要だが、過度に配慮して重要な仕事から遠ざけることは職場の生産性を低下させ、本人の成長も阻害する。二つ目は「部下に明確な情報と権限を与えること」である。三つ目は「業務の価値を見極め、その理解を共有すること」である。仕事の優先順位やかけるべき時間、必要とする完成度を事前に共有することで、無駄な業務プロセスが排除でき、職場の生産性向上につながる。

次に部下マネジメントとして4点を示す。一つ目は「部下の多様な背景や価値観を知ったうえで、育成や意欲喚起を図ること」である。二つ目は「部下の納得を得るための丁寧なコミュニケーションを取ること」である。多様性のある組織では、「阿吽の呼吸」や仲間内でのマネジメントは通じない。丁寧に組織の理念を訴え、共有するプロセスを踏むことが必要となる。三つ目は「日々の仕事ぶりの評価を曖昧なままにしないこと」、四つ目は「キャリアについては希望を聞くだけではなく、期待を伝えること」である。

ダイバーシティ時代の管理職には、「よく見て」「よく聞き」「よく話す」ことが求められる。多くの組織で管理職がこのような変化を前向きにとらえ、組織の成長につなげていけるよう期待したい。

◇◇◇

講演後の事例発表では、第一生命保険人事部の吉田久子氏から、同社のDSR経営(価値創造経営)とダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みが説明された。また、同社団体保障事業部の堂後和美氏、団体年金サービス部の花井志乃氏から、それぞれの部署における業務改善のための運営体制や具体的な取り組みが説明された。

ワークショップでは、日経BP社執行役員の麓幸子氏をファシリテーターとして、「働き方改革」を進めるにあたっての阻害要因や、効果的な施策について参加者間での活発な討議が行われた。

【政治社会本部】

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