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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年3月5日 No.3214 対中経済外交戦略を聞く -経済外交委員会企画部会

中国をはじめ近隣諸国との関係改善・緊密化は、アジア太平洋地域の安定と繁栄を目的とするわが国経済外交戦略上、極めて重要な課題である。そこで、経団連の経済外交委員会企画部会(清水祥之部会長)は2月20日、東京・大手町の経団連会館で日中経済関係に関してさまざまな提言を行っている津上工作室の津上俊哉代表から、対中経済外交戦略について説明を聞いた。説明概要は次のとおり。

■ 中国経済をめぐる現状分析

経済を取り巻く現状を理解しない限り、中国の外交・安全保障戦略はみえてこない。中国経済を短期的な側面からみると、投資バブルの後遺症によりバランスシートが毀損しており、ハードランディングの一歩手前という状況である。企業・家計部門では債務が相当積み上がっており、バブル崩壊のショックをいかに軽減するかが課題である。

こうしたなか、新たなキーワードとして登場したのが「新常態」である。市場経済に基づく活性化を指向する習近平国家主席は、従来7.5%であった成長目標を7.0%に引き下げるとともに、債務の膨張を防ぎ、ハードランディングを回避するために取り組んでいる。

■ 中国経済の今後

いずれにせよ、わが国で1990年代に起きたバブル崩壊のような事態には陥らないであろう。日本の場合、地価が一気に半減したが、価格調整ではなく数量調整による中国の市場構造上、建物の価値が減損しても、地価が急落することはない。

しかし、バブル崩壊に伴い金融システムが一気に機能不全に陥った日本と同様の途をたどることはないにせよ、ポストバブルの後遺症が長引くおそれはある。こうしたなか、中期的な観点から成長の原動力となるのは生産性の向上であり、中国は、既得権益を守るか、成長路線を採るかという二者択一に直面している。

今後10年程度、中国経済に深刻な問題は生じないであろうが、長期的な観点からは、少子高齢化が成長に対する足かせになりかねない。2020年以降、労働人口減少によって、中国は1%、日本は0.5%程度、経済成長が収縮すると考えられる。

■ 習近平政権の外交

これまでの急速な成長は「心理バブル」という変化をもたらし、外交や国民意識の面で「中国の復活」という態度が散見されるようになっている。一方、習近平国家主席は国内体制堅持を大前提として内政に専念するため、外交・安全保障面では安定した対外環境の構築を最優先課題としている。

■ 今後の日中関係の行方

昨年11月に実現した日中首脳会談では4項目((1)国民間の相互理解の推進(2)経済関係のさらなる深化(3)東シナ海における協力(4)東アジアの安全保障環境の安定)に合意したが、日中首脳が毎年相互に訪問し合うのが常態であったことを考えれば、今年果たして首脳会談を開催できるかが問われている。

惜しむらくは、昨年の首脳会談で日本側から建設的・互恵的な提案がみられなかったことである。この点、例えば現在交渉中の日中韓自由貿易協定(FTA)妥結に向けた二国間協議というかたちで前向きな提案を行えば、日本側からの重要なシグナルと受け止められよう。

【国際経済本部】

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