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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年5月14日 No.3223 まちづくりからみた最適な物流システム -京都大学大学院の山田准教授から聞く/運輸委員会物流部会

物流業界では、急速に進む人口減少・少子高齢化への対応や国際競争力の維持・向上のために、自らの取り組みとして一層の効率化が求められているが、同時に、物流事業の活動の場となる都市のデザイン等も重要な視点の1つとなる。

そこで経団連は4月23日、東京・大手町の経団連会館で運輸委員会物流部会(平居正仁部会長)を開催し、京都大学大学院工学研究科の山田忠史准教授から、まちづくりの観点からみた最適な物流システムをテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 都市の暮らしや活動と物流のアンバランス

物資の消費は生活に必須であり、物流なくして生活はできない。しかも、より便利な生活を志向しているため、戸別配送、定時集配、再配送等、物流に対する要求は年々高度化している。その一方で、トラック等は代替手段が少なく、まちにおける立場も弱い。そのうえ、行政が都市計画の段階で物流のことを十分に考慮していないケースが多い。

これらの結果、居住と経済活動等の土地利用の不整合や、トラックの駐停車場所の不足などの問題が顕在化している。まちはそこで活動する人々全般を支えているはずなのに、おのおのの活動がまちのパフォーマンスを下げてしまっており、道路の混雑や交通事故の発生、環境悪化、費用増大を誘発している。

■ 今はまちの物流改善に取り組む好機

世界的に、「自動車のまち」から「歩くまち」を目指す方向に変わりつつある。この流れのなかで、物流業者、荷主、住民、行政、その他の関連主体(警察、学校、駐車場業者等)が協調して、まちの物流改善に取り組むには時宜を得ている。歩くことが、環境、エネルギー、交通安全等に有用であるのはもちろんのこと、最近では、高齢者の医療費負担の抑制にもつながる市民の健康面や、地元商店街の活性化にも有益であることが示されている。例えば、歩くまちを標榜する京都市では、四条通歩道拡幅事業が今年秋に完了予定である。

■ まちの物流においてwin-winを創出するために必要なこと

まちにとって最適な物流システムは、最終的にまちで活動を行う各主体が共存共栄できるシステムにほかならない。個々の主体が自己の部分最適を求め過ぎることなく、まちの全体最適を目指すべきである。

win-win創出に向けて、行政は利害関係者の本気を引き出し、荷主は賢い物流業者を集中して選択する仕組みを創出する。また、物流事業者はまちに優しい物流システムの提案を目指すとともに、それをビジネスチャンスとしていくことが求められる。その際、win-winの創出には賢い消費社会の実現が重要なカギを握るので、荷主の行動変容を促すことができる消費者も参画した検討の場が必要である。

【産業政策本部】

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