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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年6月18日 No.3228 「新しい農業ビジネスを求めて」 -21世紀政策研究所第113回シンポジウム

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は3日、研究プロジェクト「新しい農業ビジネスを求めて」(研究主幹=大泉一貫・宮城大学特任教授)の研究成果を踏まえ、東京・大手町の経団連会館で第113回シンポジウム「新しい農業ビジネスを求めて」を開催した。

■ 研究報告「新しい農業ビジネスを求めて」

冒頭、大泉研究主幹が研究報告を行った。

まず、世界では人口増加、特に中間層・富裕層の増加によって、高付加価値農産物(畜産物・加工食品等)の生産や輸出が増加していると考察。そのうえで日本は、「成熟先進国型農業」といわれるオランダ、デンマークの農業を目指すべきモデルとして、農業セクターが供給セクターや販売セクターと有機的一体な関連を持つ、フードバリューチェーンを構築し、高付加価値農産物の生産を増加させ、農産物の輸出拡大を目指すべきとの考えを示した。

また、日本においても、受注・契約生産などを行うマーケットイン型の新しい農業経営の芽が全国で散見されているが、それは経営者個人の努力によるところが大きく、農業界全体的な動きにつながっていないと指摘。そこで、TPP(環太平洋経済連携協定)締結後を見据えて、流通制度改革、農地法改正、農協制度改革などに取り組んでいくべきだと述べた。

■ 事例報告

まず、フクハラファームの福原昭一代表取締役が「これからの大規模水田農業のあり方―地域農業の発展を目指して」を報告。福原氏は、生産現場に軸足を置いた経営を行い、地域農業の発展につなげていくことの重要性を訴えた。

次に、トップリバーの嶋崎秀樹代表取締役が「農業産地の為になる新しい産地農業ビジネス」について、農業産地を活性化させる核となるべく、農業経営者を育てることが肝要であると述べた。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、大泉研究主幹をモデレーターに、福原氏、嶋崎氏、同研究プロジェクトの研究委員である本間正義・東京大学大学院教授と山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の間で活発な討議が行われた。

本間委員は、世界的な潮流に照らすと、将来的な関税の撤廃は避けられないと指摘するとともに、日本各地の実情に応じた日本型農業成長ビジネスモデルを確立し、日本の食材を海外に輸出していくことの必要性を訴えた。

山下委員は、現在円安が進んでおり、2014年にカリフォルニア産米と日本米の価格差がなくなったとして、標高差があり、南北に長いという日本の地理的特徴を活かした農作業の平準化を図っていくことで、輸出のチャンスが増大するとの展望を示した。

また、来場した中川郁子農林水産大臣政務官が農林水産省としても、攻めの農林水産業、フードバリューチェーンの構築などを目指しており、農林水産物の輸出額1兆円に向けて政策を進めていく旨述べた。

最後に、大泉研究主幹は、シンポジウムの議論を踏まえ、強い農業を確立するためには、(1)農業経営者育成(2)フードバリューチェーンを構築し、信頼ある取引を構築すること(3)プロダクトアウト型からマーケットイン型の農業への移行(4)農業のデータ化・見える化――に向けて今後取り組みを進めていくことが必要であると総括した。

21世紀政策研究所第113回シンポジウムでのパネルディスカッション

シンポジウムの詳細は21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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