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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年7月9日 No.3231 「経営戦略としてのワーク・ライフバランス」をテーマに意見交換 -女性の活躍推進委員会企画部会

講演する小室氏(左)と中川企画部会長

経団連の女性の活躍推進委員会企画部会(中川順子部会長)では今年度、男女問わず多様な人材の存在を前提とした働き方、マネジメントのあり方に焦点を当て検討を進めることとしている。その一環で6月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長の講演を聞くとともに、「生産性の向上による長時間労働の是正と柔軟な働き方の実現」をテーマに少人数のグループに分かれて議論した。小室氏の講演の概要は次のとおり。

■ 講演「経営戦略としてのワーク・ライフバランス」

ワーク・ライフバランスとは、福利厚生ではなく、経営戦略である。この理由を人口ボーナス・オーナス期という観点を交えながら紹介する。

人口ボーナス期(高齢者が少なく労働力人口が多いという人口要因が経済に恩恵を与える期間)には、労働力が豊富で、社会保障費がかさまず、経済発展しやすいという特徴がある。しかし、高度経済成長期が訪れると、教育・医療制度が充実し、年少者や高齢者に対する働く人の負担が大きくなるため、少子高齢化が進み、二度と人口ボーナス期に戻れなくなる。つまり、人口が経済にボーナス(恩恵)を与えるものではなく、オーナス(重荷・負担)となる。現在の日本は、待機児童への対応の遅れや、長時間労働が是正されなかったため、主要国で最も早く少子高齢化が進み、人口オーナス期に突入している。

人口ボーナス期と人口オーナス期では、経済発展に適した働き方も異なる。人口ボーナス期は、重工業が主体であり、早く・安く・大量に均一な物を生産することが経済成長の条件となるため、長時間働くことができ、価値観や働き方が均一な男性が企業に必要とされていた。対して人口オーナス期には、頭脳労働の比率が高く、労働力が足りないため1人当たりの人件費が増加する。さらに市場のニーズも多様化するため、さまざまな背景・価値観を持つ人材が働きやすい環境を整備する必要がある。

人口オーナス期に入っている日本では、依然として企業の大半が人口ボーナス期の働き方を採用している。一部の企業は、人口オーナス期の働き方に徐々に移行すればよいと考えているかもしれないが、まったく異なる働き方のため、大幅な経営戦略の転換が求められる。また、2017年には、団塊世代が70代に突入し、団塊ジュニア世代の女性の出産適齢期が過ぎるなど少子高齢化が加速するため、それまでに、人口オーナス期に対応した育児や介護と仕事が両立できる働き方に変革しなければ、日本の国際競争力は大幅に低下するだろう。

最後に、社内で働き方の見直しの必要性を理解してもらうためのロジックを紹介する。人口ボーナス期は、多数派の長時間働ける人が労働時間を延ばすことで成果を出していたため、時間制約のある社員は、同じ土俵に乗ることができず、仕事への意欲を失っていた。しかし、人口オーナス期は制約のある社員が多数派となるため、人口ボーナス期の制度を維持すると、長時間働ける人の仕事の負担が過大となり、労働問題の発生や、時間当たり労働生産性の大幅な低下を招く。また、長時間働ける人が高い評価を受け続けた場合、多数派の制約のある社員のモチベーションは低下したままであり、企業全体の成果は大幅に下がるだろう。限られた一部の社員だけでなく、全社員の働き方を見直し、多様な人材が社内のメインストリームとなって能力を存分に発揮できる組織へと改革することが、いま企業に求められている。

◇◇◇

なお、後半の少人数討議では、委員間で長時間労働是正や柔軟な働き方の必要性に関する認識を共有したうえ、中間管理職の意識や評価方法の見直しの必要性、技術系や現場対応が必要な職員の裁量労働制・在宅勤務導入の困難さなどについて活発な議論がなされた。

【政治・社会本部】

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