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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月1日 No.3240 コンパクトシティ実現に向けた現状と課題を聞く -都市・住宅政策委員会企画部会

経団連の都市・住宅政策委員会(宮本洋一委員長、菰田正信委員長)では、産業活性化と一体性を持った都市政策の展開に向けて、今年末をめどに提言を取りまとめることとしている。

そこで9月4日、東京・大手町の経団連会館で都市・住宅政策委員会企画部会(安達博治部会長)を開催し、筑波大学社会工学域の谷口守教授から、コンパクトシティ政策導入の経緯や現状、実現に向けた方策を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 社会の変化とコンパクトシティ政策の導入

都市問題に関するキーワードは、高齢化、人口減少、財政制約、活力低下、空き家増加などさまざまであるが、最大の問題はバラバラに家が建てられ、市街地が広がっていくスプロール化である。こうした課題を解決していく政策として注目されているのがコンパクトシティである。

しかし、コンパクトシティについては、1980~90年代から検討が盛んになったオランダやドイツと比べて、日本は2007年にようやく、国が政策として推進するようになった。

加えて、さまざまな分野で「コンパクトシティ」という言葉が多用され、定義が明確になっておらず、日本における実例も少ない。そこで私は、都市構造と交通行動には密接な関連があり、人口密度が低いほど自動車燃料消費量が多いことに注目し、数値化でき比較が可能な「交通環境負荷(燃料消費量)を下げる都市構造」という定義を採用している。

コンパクトシティの好事例であるドイツのカールスルーエでは、都市計画を土地利用計画、交通計画と多層的につくり、住民を街の中心に集めるためのツールとしてLRT(路面電車)を活用することで、まち全体としての活性化を図っている。そのため、LRTについては、運行頻度を増やすなど利便性を高める一方で、事業単体では赤字でも問題視していない。

■ 日本の都市は死んだのか

日本の都市は、コンテンツ次第で再び活性化させることはできると考える。例えば、若者の街としてにぎわう高円寺駅前の商店街は、まちのニーズに敏感に反応し、店舗の入れ替わりが激しい。常に変化・循環する商店街は地域活性化にとって重要な役割を果たす。例えば、利便性の高い快適なホテルには、利用客がいつでも使えるように多くのエレベーターが設置されているのと同様に、まちづくりにおいても、移動手段である公共交通の充実が重要になる。

そして、政策面では、実現するまでスピード感を持って取り組むこと、空間利用のルールや人々の行動変容を促すことが必要である。

<意見交換>

「カールスルーエでは、拠点や公共交通のあり方について関係者間でどのような調整をしているのか」「日本において、都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画は進んでいるのか」との質問に対し、「土地利用計画と交通計画が互いに影響を及ぼし2段構えで進めている」「公共交通整備を先に進めているところは全体の計画も比較的順調に進んでいるとの印象を受ける」との回答があった。

【産業政策本部】

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