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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月12日 No.3246 「高齢社員の戦力化に向けた人事管理のあり方」 -学習院大学の今野教授が講演/雇用政策委員会

経団連は10月28日、東京・大手町の経団連会館で雇用政策委員会(岡本毅委員長、進藤清貴委員長)を開催し、学習院大学経済学部の今野浩一郎教授から「高齢社員の戦力化に向けた人事管理のあり方」をテーマに講演を聞き、意見交換を行った。今野教授の講演の概要は次のとおり。

■ 企業における雇用と人事管理の現状

日本では高齢化が急速に進み、労働力人口全体の約5人に1人が60歳以上である。大きな社員集団を形成する60歳以上の高齢社員が経営に及ぼす影響に鑑み、企業・労働者双方が本腰を入れて高齢者雇用にかかる課題に取り組む必要がある。

改正高年齢者雇用安定法により、事業主は、希望者全員の65歳までの雇用確保措置が義務づけられ、継続雇用中心の実質的な65歳定年制時代が到来している。

大企業では、再雇用の高齢社員について、現役社員とは異なる人事管理を行うことが主流だが、問題はそのあり方である。「定年時から一律に減額する」等、仕事・能力・成果によるという原則を軽視して、賃金を決める企業は多い。いわば高齢社員の雇用は「福祉的雇用」を前提にした対応であり、これでは高齢社員の労働意欲を高め、戦力化を図ることは難しい。

■ 高齢社員の戦力化に向けた人事管理の構築

高齢社員の人事管理は高齢社員の特性を踏まえて構築する必要がある。1つは、長期雇用前提の現役社員とは異なり、高齢社員は、投資対象ではない短期決済型の人材であることであり、したがって仕事基準で処遇する人事管理の構築が必要である。もう1つは、定年を契機に、転勤をしないなど働き方が制約的となることである。こうした特性を踏まえると、定年後の高齢社員の賃金が減少するのは、(1)年功賃金制度に基づく定年前の過払い部分の解消(2)定年後の仕事の転換(3)働き方の制約化――があるからである。このように、定年を契機とした人事管理の転換には合理性があることを説明することによって高齢社員の納得性を確保するとともに、高齢社員自身も役割意識の転換を図ることが重要である。

■ 高齢社員に「求めること」とキャリア管理

高齢社員は、定年を経て一担当者としての新しい役割を担うことが求められており、それに合わせて意識や姿勢を転換する必要がある。活躍する高齢社員は専門能力とともに、(1)新しい役割に意識と行動を合わせようとするマインドの形成(2)職場の同僚と水平的な目線で仕事に取り組む姿勢(3)担当者として1人で業務を遂行できるスキル――といったプラットフォーム能力の高い人材である。企業は、個々の社員がプラットフォーム能力を高める必要性に気づき、キャリアビジョンに合わせた働き方や能力開発の計画を主体的に作成できるよう、教育訓練の整備など、キャリア転換の支援を行うべきである。

◇◇◇

講演の後、「2015年度規制改革要望(雇用・労働分野)」について審議を行い、事務局案を了承した。このほか、長峯豊之人事・労務部会長が、中高齢従業員の活躍推進をテーマとした部会の検討状況について、また、深澤祐二政策部会長が、採用選考開始時期の後ろ倒しに伴う影響等に関する検討状況について、それぞれ報告を行った。

【労働政策本部】

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