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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年1月7日 No.3253 第4回審議員会 -「来年も『経済最優先』」/安倍首相あいさつ
-「転換点を迎えて」/黒田日銀総裁講演

経団連が12月24日に開催した第4回審議員会(1月1日号既報)では、安倍晋三内閣総理大臣が来賓として出席し、あいさつした。その後、黒田東彦日本銀行総裁が「転換点を迎えて」をテーマに講演した。来賓あいさつおよび講演の概要は次のとおり。

「来年も『経済最優先』」/安倍首相あいさつ

「三本の矢」の政策によって、日本経済は完全に復活を遂げることができた。名目GDPは28兆円増え、500兆円を超えた。雇用は110万人以上増えた。有効求人倍率は23年ぶりの高い水準になっている。そして、今年も過去最高の企業収益を更新している。賃上げは17年間で最高。経団連の調査では、冬のボーナスは過去最高となっている。日本経済は、デフレ脱却まであと一息というところまで来た。この流れをさらに加速し、経済の好循環を実現できるかは、3巡目の賃上げと、そして設備投資の点火にかかっている。

11月に開催された「未来投資に向けた官民対話」で、榊原会長から経済界を代表し、大胆な、そして大変前向きな話をいただいた。「賃上げは、今年を上回るよう呼びかけたい」「設備投資は、3年後までに経済界全体で10兆円増える」。これを受けて政府は、企業が投資しやすい環境を整えるため、大きく踏み込んだ。来年度の法人実効税率は、31%とすでに昨年決めていた。しかし、榊原会長のリーダーシップに呼応し、来年度に20%台に引き下げることとした。アベノミクスの真髄は、スピードと実行力である。平成30年度には、ドイツ並みの29.74%にまで引き下げる。厳しい経済情勢に耐えている中小企業にも、新たな成長に向け、設備投資をしていただきたい。そこで、史上初めて固定資産税の設備投資減税を決定した。

アベノミクスは、第2ステージに入った。税収は、政権交代前から国・地方で21兆円増加した。まさに、これは経済成長の果実である。私が、2012年の暮れにこの場に立った時から、税収は国・地方で21兆円、これはまさに、新たに皆さまとともに生み出した果実である。これを活かして、1億人の一人ひとりが、潜在力を発揮し、希望をかなえられるようにする。未来に投資し人々の創造性を解き放ち、イノベーションを促進する。一人ひとりを大切にする一億総活躍は、究極の成長戦略であると確信している。日本は、成長と分配の好循環を通じて、「戦後最大のGDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の3つを実現する。来年春には、その具体策を「日本一億総活躍プラン」として取りまとめる予定である。

来年も「経済最優先」である。内閣一丸となって邁進することをあらためてお約束させていただく。

「転換点を迎えて」/黒田日銀総裁講演

■ 今年の日本経済とトレンドの変化

今年の日本経済は、比較的堅調な国内需要を背景に緩やかな景気回復を続けながら、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋をしっかりたどってきた。すなわち、企業部門については、堅調な国内需要、原油価格下落、そして円高修正という良好な経営環境を活かしながら、過去最高水準の収益を実現した。労働需給は引き締まりが続いており、賃金も緩やかながら、はっきりと上昇に転じている。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、1年を通じて概ね0%程度で推移したが、これは主としてエネルギー価格の下落によるものであり、物価の基調は着実に改善している。「量的・質的金融緩和」のもとで、日本経済のトレンドは明確に変化し、「企業収益や雇用・賃金の増加・上昇を伴いつつ、物価が上昇する」という日本銀行が目指している姿がまさに実現しつつある。企業や家計の物価感は「物価は下がるものだ」というデフレ期のものから「物価は緩やかに上昇する」というものに変化してきた。

■ 新たな成長ステージに向けて

より長期的な視点から日本経済が置かれている状況を考えてみると、バブル経済の2つの「負の遺産」の清算(過剰債務・設備・雇用の清算としつこいデフレからの脱却)を終え、およそ四半世紀ぶりに前向きな競争のスタートラインに立とうとしている。こうした日本経済の状況は、主要先進国のなかでも有利であり、前向きな支出活動に取り組み、他国に先んじて各種の構造的な課題に立ち向かえる好機である。

今後は、「生産性の伸びの低下」と「労働力人口の減少」への対応が大きな課題である。設備投資と人材への投資をどのように組み合わせて、経営資源の最適な配分をグローバルに実現していくのか、これは皆さまが日々深く考えておられる経営戦略そのものである。「量的・質的金融緩和」のもとでデフレマインドは着実に転換し、海外子会社の投資やM&Aなどを含めれば積極的な投資を実践している企業や業種もみられる。今は、そうした積極的な動きをさらに拡げていくべき重要な時期にある。

■ 量的・質的金融緩和の補完措置

こうした認識を踏まえ、日本銀行では先週の金融政策決定会合において、いくつかの新しい措置を導入した。その1つとして、日本銀行は「量的・質的金融緩和」のなかで年間約3兆円のペースでETFの買入れを行っているが、これに加えて3000億円の買入れ枠を新設し、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を対象とするETFの買入れを行うこととした。資本市場の役割は、将来の収益を生み出す力のある企業を評価し、そこにリターンを求める投資家と結びつけることにある。われわれの買入れは市場の規模に比べれば大きな金額とはいえないが、企業の皆さまにも、1つの問題提起として受け取っていただければと思う。

日本銀行が買入れている国債の平均残存期間の長期化などの措置は、それ自体は「追加緩和」ではないが、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にすることで、先行き「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、また、必要と判断した場合に「調整」することができるようにするものである。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、さまざまなリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していく。そして、2%の「物価安定の目標」の実現のために「できることは何でもやる」ということをあらためてお約束する。

※講演の全文は日本銀行のウェブサイトに掲載
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko151224a.htm

【総務本部】

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