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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年1月7日 No.3253 21世紀政策研究所が第3回日米関係セミナー開催 -2016年の日米関係と米大統領選挙を展望する

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は12月15日、都内で日米関係についての3回目となるセミナーを開催した。今回は、本格化しつつある大統領選挙とアメリカの外交戦略を分析するとともに、2016年の日米関係を展望した。講師として同研究所「日米関係に関する研究プロジェクト」の久保文明研究主幹(東京大学教授)、中山俊宏研究委員(慶應義塾大学教授)、泉川泰博研究委員(中央大学教授)が出席した。

まず久保研究主幹が、外交をはじめとしたオバマ政権の実績と現状について概観したうえで、大統領選挙の見通しを示した。ヒラリー・クリントン前国務長官の対抗馬は、支持率で優位に立つトランプ氏を筆頭にクルーズ上院議員、ルビオ上院議員などに絞られてきたが、トランプ氏以外の候補については選挙資金の確保が今後の大きなポイントになると述べた。さらに2月1日のアイオワ州を皮切りに予備選挙・党員集会がスタートするが、2月は代議員の少ない州が多いため、大統領選の本格的な様相がみえてくるのは3月のスーパーチューズデー以降となるとした。

また同一政党の3連勝は容易ではないが、民主党が共和党に勝てるかどうかは、16年11月の投票時までに現在(15年12月)約45%のオバマ大統領の支持率が55%程度にまで回復するか、景気回復を国民が実感しマインドが改善するかによるところが大きいと指摘した。

次に中山研究委員からは、オバマ外交の対アジア戦略についての解説があった。他国の台頭によりアメリカの相対的地位が低下する一方、気候変動やパンデミックなどアメリカ単独では解決できない国際問題がメインテーマとなっていくなか、単独行動主義から多国間外交へとシフトせざるを得なくなっているのがオバマ外交であると指摘。その点でリバランスはオバマ外交の本質であり、中東などに比べ危険の少ない落ち着いたエリアであるアジアは、経済面も考慮すればアメリカにとっては「不可欠の空間」だとした。ただし、中東やロシアの問題を抱えるなか、本当にアジアへのリバランスが可能となるには、欧州中心主義のアメリカ人の意識が変化する必要があり、必ずしも容易ではないとの見解を示した。

最後に泉川研究委員から、アメリカの対ロシア戦略について説明があった。まずウクライナ危機に対して、オバマ政権は限定的な武器供与と経済制裁のみにとどめ、対ロ交渉を欧州に一任して表舞台には登場していないと述べた。そのうえで一枚上手であるプーチン大統領への警戒感は強く、オバマ政権が残る任期で解決に向けたアクションを取る可能性は低いとした。

また、欧米からの経済制裁によりロシアが中国へ接近するリスクを指摘。これまで多くの専門家は、中ロ関係には例えば「新シルクロード構想」など構造的な困難が存在するため、対米対抗軸形成はあり得ないとしてきたが、最近になり接近リスクへの懸念が高まりつつあるとの見方を示した。特に米国のシンクタンクなどで日ロ関係も含めた3国間のあり方が議論され始めていると報告した。

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21世紀政策研究所では、米国における研究成果の発信も重視している。昨年12月には、澤昭裕研究主幹がワシントンの経団連米国事務所で在米企業との間でエネルギー・環境問題をめぐり意見交換を行った。同研究所では、今後も、米国情勢をフォロー・分析し、報告するとともに、研究成果の対米発信を展開する予定である。

【21世紀政策研究所】

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