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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月3日 No.3260 ASEANにおける人材戦略のあり方 -雇用政策委員会国際労働部会

講演する佐原氏

経団連の雇用政策委員会国際労働部会(得丸洋部会長)は19日、東京・大手町の経団連会館で、ジェイエイシーリクルートメントの佐原賢治海外進出支援室長から、「ASEANにおける人材戦略のあり方」に関する講演を聞いた。同社は、海外進出する日本企業に対して、現地における人材採用のサポート、幹部候補職員のあっせん等を行っている。
佐原氏の講演の概要は次のとおり。

日系企業は、ASEAN諸国において、コア人材(役員を含む幹部、管理職、事業の中核をなす職員)の確保に苦戦している。2015年には、同地域に進出する日系企業の42%が現地で管理職の中途採用を行っているが、充足率は68%程度である。ASEAN主要国の労働市場は売り手市場となっている。タイでは転職希望者のうち59%が、応募書類を提出してから1カ月以内に内定を得ているとのデータもあり(日本では9.8%)、選考にあたってはスピードが求められる。

地場の財閥系大企業や欧米企業との人材獲得競争も熾烈であり、適材がみつかっても給与条件が合わず、採用に至らない事例も少なくない。例えば、欧米外資系企業の部長級の給与を日系企業のそれと比較した場合、インドネシアでは1.3倍、タイでは1.16倍、ベトナムでは1.23倍である(いずれも中央値)。転職・離職率の高さも特徴であり、現地日系企業の26%が、育成した職員の離職によって事業運営に悪影響が生じることを指摘している。

このように現地でコア人材の確保が困難な一方で、日本企業の経営の「現地化」はますます進んでいる。高品質なものづくり、大規模な組織マネジメント等、従来は本社が担っていた業務が現地化されるなか、技術系や役員クラスの現地駐在員の担う役割が重要になっている。実際、現地人材を役員に登用したいと考えている日系企業も多いが、このうち、役員以上の現地人材がいる企業は半数程度であり、やはり、現地での人材獲得には限界があるのが実情である。

そこで、当面は、即戦力となる人材を現地で採用するのと並行して、日本国内でコア人材候補を採用して育成することが求められる。その際、現場理解に基づいた教育研修投資を行うとともに、現地からの帰任者の生の情報を蓄積し、有効活用することがカギとなろう。

【国際協力本部】

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