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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年9月29日 No.3286 コーポレートガバナンス・コード対応の傾向と課題<第4回> -取締役会の実効性評価/森・濱田松本法律事務所 弁護士・澤口実

コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)の原則のなかで、実施せずに説明を選択する会社が最も多く、また、最も戸惑った原則が「取締役会の実効性評価」である。

今回も、今年7月時点でのTOPIX500構成企業のコーポレートガバナンス報告書(以下、ガバナンス報告書)の記載内容から、各社の傾向と課題をみてみよう。

1.評価方法

ガバナンス報告書には、評価結果の概要を記載すれば足りるが、任意に評価方法を記載する会社も少なくない。TOPIX500構成企業では88社が評価項目もガバナンス報告書に記載している。例えばアンケートを利用した会社ではアンケート項目などを明示している。

なお、集計への関与といった比較的簡単なものも含めるとTOPIX500構成企業のうち36社で実効性評価に第三者が関与した旨を明らかにしている。取締役会の実効性評価はほとんどの上場企業にとって初めての経験であり、第三者のアドバイスを求めることは自然なことである。一方、多くの企業で、評価以前の問題として、自社の取締役会にふさわしい責務とは何か、取締役間での議論から行う必要がある。初年度は「評価」というよりも「議論」に軸足を置き、第三者による評価は、何回か自己評価を行った後と考えるのは、よく理解できる。

2.課題への言及

取締役会の実効性評価の結果として、一定の実効性を認めつつも、同時に課題や改善を要する事項についても記載する会社が少なくない。

TOPIX500構成企業で187社もの会社が、課題についてガバナンス報告書に一定の記載をしている。つまり、比較的規模の大きな上場企業においても、4割弱の会社が自社の取締役会が理想的とまではいえない状況にあることを自認しているといえる。

4割弱という数字は多いという印象を与えるかもしれないが、社外取締役の選任や増員によって取締役会の姿が大きく変化しつつある現状を考えれば、課題が残ることは不思議ではない。逆に多くの会社のより実態に近い状況を示しているともいえる。

3.課題とは何か

評価結果として課題や改善を要する会社が、何を課題や改善を要する事項と位置づけるのかについてみると、次のとおりである(下表参照)。

課題取締役会
の構成
社外取締役
(取締役会)
への情報提供
経営戦略
への関与
後継者の計画
(サクセッションプラン)
への関与
取締役会
付議事項
の見直し
その他
TOPIX500
構成企業での
該当社数
27社67社63社17社58社133社

比較的多くの企業が課題としているのは、社外取締役への情報提供、経営戦略への関与、取締役会の付議事項の見直しである。

社外取締役への情報提供や経営戦略への関与は、いずれもコードの原則でも言及されている事項である。取締役らはその責務を果たすために能動的に情報を入手すべきであり、また、会社も的確に提供すべきとされており(原則4―13等)、経営戦略については、取締役会の主な役割として、企業戦略等の大きな方向性を示すことが求められている(基本原則4等)。

そのほかの課題としては、「取締役会の構成」や「後継者の計画」以外にも、任意の委員会等の役割・権限の検討などが目についた。

4.次の実効性評価に向けて

コードが求める実効性評価は1度で終わりということではなく、毎年実施することが必要とされている。課題に言及した会社は、その課題が改善・解消されたのかについても評価し、その結果を開示することとなる。また、課題に言及していない会社は、あらためて改善すべき事項が本当にないのかといった評価が求められよう。

これらの影響は決して小さくない。毎年の評価が、少しずつであっても確実に取締役会の姿を変えていくことが予想される。

◇◇◇

次回は、コード対応を俯瞰して全般的な課題について取り上げる。

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