1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2016年10月13日 No.3288
  5. 第18回「経団連 Power UP カレッジ」

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年10月13日 No.3288 第18回「経団連 Power UP カレッジ」 -「三大経営危機の克服」/大成建設の山内会長が講演

経団連事業サービス(榊原定征会長)は9月9日、東京・大手町の経団連会館で第18回「経団連 Power UP カレッジ」を開催し、大成建設の山内隆司会長から講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 業界を揺るがす2つの経営危機

経営危機とは「企業に突然襲いかかり、瞬く間にその存亡を左右する緊急事態」であり、その解決に正面から取り組んで乗り越えることを成長の糧として、次の飛躍へと転じていくことが何より重要である。私が入社以来経験してきた危機の1つ目は、「バブル崩壊」である。有利子負債の削減と保有不動産の圧縮という課題に直面し、当社はこの危機を自助努力で乗り切るという基本方針を選択した。全社を挙げた血のにじむ「努力」、先達が築いた「信用」、長年蓄積してきた「資産」という3つの力を束ねて乗り切ることができた。

2つ目の危機は「談合問題」だが、1991年の摘発から業界全体での談合決別宣言までに約15年かかるほど深く根を張ったものだった。当社では、全役職員からの誓約書の提出、社長直属のコンプライアンス委員会の設置など、法令遵守の仕組みをつくり、その後も継続的にコンプライアンス意識の徹底に取り組んでいる。「ここで悪しき習慣を断ち切らない限り、この先生きていけない」という経営者としての強い危機感があってこそ、重い決断をするに至った。

■ 社長在任中の経営危機「海外工事の赤字」

2007年の社長就任以降8年間で、私が業績回復を目指して取り組んだ最大の課題が「海外事業の赤字の解消」である。当社が海外へ乗り出したのは、バブル崩壊以降縮小していく国内市場を補うためだった。しかし、国内実績や技術力を過信するあまり、十分なリスク調査もないまま海外に飛び出し、世界中で赤字を発生させ莫大な損失を出し続けていた。

この状況を打開し、海外事業を軌道に乗せるため、(1)内部統制の強化(2)信賞必罰の徹底(3)事業の事前評価の厳格化(4)建設コストの削減(5)工事代金の回収――という5つの施策を定めて即座に実行した。こうした取り組みで海外事業は見る間に回復し、企業業績も経常利益の赤字転落からV字回復した。海外事業においても、「信頼」をつくり、その信頼を次の仕事につなげていくのが「事業継続の鍵」である。また、経営トップには「失敗は二度と繰り返さない」という決意が重要であり、そのためには失敗につながる「兆し」を見つけ、早期に摘み取る注意深さが必要不可欠である。

■ 危機克服における秘訣

大きな経営危機を乗り越えるには、経営トップと社員との間の意思疎通が大切である。私は全役職員に向けた「社長メッセージ」を毎月欠かさず発信し、会社が置かれている現況を正確かつ丁寧に説明し、直面する危機への課題や問題意識などを共有してきた。社長個人で対処できる仕事の範囲はごく限られているが、全社員が目的意識を共有し、目の前の課題に向けて一糸乱れぬ行動が取れれば、解決できない問題などない。

■ 高付加価値型事業構造への転換

「成功は窮苦の時にこそ芽生え、失敗は得意満面の時にこそ訪れる」の言葉のとおり、V字回復やオリンピック景気で業績が上向く今こそ、そこにあぐらをかくことなく、次なる一手を積極的に打つ必要がある。「ポスト・オリンピック」時代を念頭に取り組んでいるのが、(1)海外へのインフラ輸出(2)国内の新しいインフラ整備(3)大規模再開発事業への参画(4)電力問題への取り組み(5)ゼロエネルギー社会への貢献――の5つの事業分野である。

いずれも、他社にない独自技術を駆使して初めて可能となる高付加価値を生む事業に焦点を当てている。目先の利益に目を奪われることなく、広い視野での社会貢献も見据えた「新規技術の開発」や「経営資源の投入」を考えるのも経営者の大切な仕事である。

【経団連事業サービス】

「経団連 Power UP カレッジ」講演録はこちら

「2016年10月13日 No.3288」一覧はこちら