経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(山本正已委員長)を開催した。規制改革推進会議の大田弘子議長から「規制改革推進の考え方」について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
高齢化や人口減少に基づく供給制約などにより、わが国経済の潜在成長率は極めて低い状況にある。潜在成長率を高めるためには、(1)生産性向上(2)労働市場改革(3)グローバル市場への展開(4)税制改革・社会保障制度改革――が必要であり、規制改革は(1)と(2)に密接に関係する。
規制改革を進めるにあたり念頭に置くべきことは次の3点である。
1点目は、規制の必要性の有無を的確に判断することである。すべての規制は必要性があってつくられるが、社会環境の変化や技術革新に応じて絶えず見直すことが重要である。不要な規制が存続することで、イノベーションが阻害される。
2点目は、判断するにあたり規制が守る対象をよく見極めることである。消費者を守る規制は残すべきだが、既存の供給者を守るだけの規制は廃止してよいものが多い。このような規制は新規参入者を阻害し、市場の活性化を妨げるからである。
3点目は、規制の事後評価を強化することで事前規制を緩和することである。わが国は外形基準に基づく厳格な事前規制を課す一方で、事後のチェックは緩い。強い事前規制は既得権益者をつくることになり、改革を難しくする。競争制限を最小にして新規参入を促進し、事後評価を厳しくすることが望ましい。
安倍政権の取り組みにより規制改革は進展したが、まだ残っている規制は少なくない。医療、介護、保育、農業等の分野は、担い手を固定化することで安定供給を図ったため、環境変化に対応することなく現在に至る。担い手を広げて多様化できれば創意工夫の発揮につながるため、成長の可能性が高まる分野といえる。
また、硬直的な労働市場も改革の必要性が高い。現状の雇用制度は同一企業で働き続けることが前提になっており、転職すれば退職金課税や企業年金の面で不利になる。働き方改革は政府の重要課題だが、労働移動を支える仕組みづくりが十分に進むかどうかはわからない。規制改革会議はこれまでも「失業なき労働移動」を実現するための規制改革に取り組んでおり、新会議でもこれを継続したい。
これからの3年間は非常に重要な時期である。今後は、(1)改革の難しい「大玉」を中心に扱う(2)そのためにも規制改革単体ではなく、税制や社会保障制度を含めたパッケージで改革を進める(3)国家戦略特区との連携を強める――といった方法により難しい規制改革に取り組んでいきたい。
【産業政策本部】