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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年12月8日 No.3296 米国次期政権と今後の日米関係の見通し -21世紀政策研究所が日米関係セミナーを開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は米国の次期大統領にトランプ氏が事実上決定したことを受け、11月18日にセミナー「米国次期政権と今後の日米関係の見通し」を開催した。

大統領選挙中にトランプ氏から発せられたTPP(環太平洋パートナーシップ)からの撤退やアメリカ・ファースト的な考え方が次期政権の内政・外交政策にどのようなかたちで反映されるのか、アジア・太平洋に対する政策にも変化があるのか、それにより日米関係へのどのような影響があるのか等、今後注視していくべき点が数多く考えられる。

同セミナーでは、第1部として、ワシントンDCに本拠地を置き、米国の公共政策等に関するコンサルティングを行っているグローバル・ポリシー・グループのダグラス・バーグナー氏、イアン・グレイグ氏から、次期トランプ政権と日米関係についての説明を受けた。第2部では、同研究所の久保文明研究主幹(東京大学教授)に加え、泉川泰博中央大学教授、前嶋和弘上智大学教授から、今後の日米関係、トランプ次期政権の内政・外交について説明を受けた後、新政権発足までの注目点について意見交換を行った。

■ 第1部「次期トランプ政権と日米関係」(グローバル・ポリシー・グループ)

左からバーグナー氏、グレイグ氏

バーグナー氏、グレイグ氏は、今回の選挙結果の分かれ目は、中西部のペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン州の怒りに満ちた白人労働者の票をトランプ氏が獲得できたことだと指摘。トランプ氏の経済政策は、共和党伝統の減税とトランプ氏独自のインフラ投資、社会保障削減反対が混在したものであるが、その結果、向こう数年間は財政負担が膨らむおそれがあり、インフレの押し上げ等の影響が考えられると分析した。また、NAFTAの再交渉については北米のサプライチェーンへの影響が大きく経済への打撃が懸念されるため注視する必要があるとした。

気候変動対策については、パリ協定を「キャンセル」すると公言しているが、共和党支持者における気候変動を懸念する層の増加および環境ビジネスへの取り組みを始めた企業や投資家から圧力を受けている企業の新政権への働きかけが緩和材料となり得ると指摘した。外交面については、トランプ氏は中国にフォーカスしているので日米関係は大きな争点とはならないが、新政権発足後数カ月は不確実性が払拭されず、海外の首脳も不安な時期がしばらく続くとみていると説明した。

■ 第2部「トランプ政権発足までの注目点」

左から泉川教授、前嶋教授、久保研究主幹

第2部では、最初に、久保研究主幹から今後の日米関係に関して説明があり、日米安全保障条約については、米国の日本防衛の義務と、日本防衛以外に極東・国際的な平和のために日本の基地を使用できる米国の権利で釣り合いが取れていることを、トランプ氏に基礎の基礎として理解してもらうことがまずは重要だとした。

次に、泉川教授は、外交面について、今回の選挙が世界に与えたショックにより米国のソフトパワーが低下し民主主義のリーダーとしての米国の存在感が傷ついたことによるグローバルな影響や、TPP撤退によりASEAN諸国、韓国等が中国依存を高める懸念を指摘した。

続いて、前嶋教授は、トランプ次期政権の内政メカニズムとして次の3点を挙げた。(1)トランプ連合は既存の共和党のベースである「小さな政府」「宗教保守」に、「怒れる白人たち」が加わったものである(2)トランプ氏の思考パターンとして想像されるのは、「ビジネスのような実利主義(取引)」「世論の重視」「オバマ時代からの変化」である(3)上院で、民主党側のフィリバスター(反対・議事妨害)を止めることができる60議席に共和党が達しなかったことから、動かない政治が続く。

その後の意見交換では、4000人規模の官僚の政治的任用を埋めるには共和党主流派からの任命も必要であり、共和党が人材面で新政権をどう支えていくのかも注目すべき点だとした。

◇◇◇

同研究所では、「トランプの米国」を踏まえた米国の経済・社会情勢、対外関係の変化等を追跡・分析し、日本の経済界への影響を展望するとともに、日米関係の強化方策について引き続き検討していく。また、トランプ次期政権の政策が判明するのに応じてタイムリーな情報発信(セミナー開催等)をしていくことを予定している。

【21世紀政策研究所】

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