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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月1日 No.3298 電力システム改革の検討状況と論点を聞く -東京大学社会科学研究所の松村教授から/資源・エネルギー対策委員会企画部会

政府の総合資源エネルギー調査会は、電力システム改革関連制度の整備に向けて、昨年12月に中間取りまとめを公表した。これに先立ち経団連は12月2日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(長井太一部会長)を開催し、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授から、政府が総合資源エネルギー調査会のもとに設置した「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」で提起された論点について説明を聞いた。主な論点等に関する説明の概要は次のとおり。

※ 主要施策の概要は本紙11月24日号「電力システム改革の進捗状況と今後のあり方等を聞く」を参照

■ 総論

新電力への切り替えこそ想定ほど伸びなかったが、電力システム改革は順調に進んでいる。一方で、一部制度には詳細設計が保留されている、機能不全が表面化しているといった課題があり、一層の自由化を進める観点から議論が行われている。

■ 原子力発電所廃炉・賠償費用

原子力事業者による互助的枠組みが成立している賠償費用については、福島第一原子力発電所事故の賠償額が膨らむなか、「事故に備えて過去に原価算入しておくべきであった賠償費用」を託送料金(すべての小売電気事業者が負担する送配電網の利用料金)に上乗せするという、従来の基本原則からは逸脱した手段が検討されている。

行政のみならず事業者にも事故への十分な備えを怠っていた責任がある。託送料金での費用回収という事実上の補助を認める代わり、ベースロード電源市場に一定量を供出してもらう方向で議論が進んでいる。

安全規制強化に伴う計画外廃炉による廃炉費用の積立不足についても、会計士協会から「廃止を決めた原子炉を資産として計上するならば規制料金の原価に算入すべき」との指摘を受け、無理筋だが託送料金への上乗せが検討されている。

■ 競争基盤整備

電力・ガス取引監視等委員会では、旧一般電気事業者の内部取引を市場売買に移行させるグロス・ビディングの導入に向けた検討が進んでいる。内外無差別な取引による利潤追求を志向する企業文化が醸成されることに期待したい。

ベースロード電源市場も検討が進められているが、廃炉・賠償費用の託送料金による回収とパッケージにされており、世間の風当たりが強い原子力施策と共倒れしないか懸念している。

■ 容量メカニズム

容量メカニズムを導入すると、需給逼迫時の高い売電価格で固定費を回収する場合に比べて発電投資の予見性が高まる。容量メカニズムはリスクプレミアムを低減して電気料金を抑制する、需要家のための制度である。

総括原価・地域独占時代に設置された電源については、一定割合の容量に対する支払いを行わないなど、保守・更新のインセンティブを与えつつ新設電源とは区別することで需要家の負担を抑制すべきである。

■ 非化石電源価値市場

非化石電源価値市場は各社が非化石電源比率を上げるための手段である。非化石電源比率の規制のあり方が、そもそもこの市場をつくるか否かと同等以上に重要である。

【環境エネルギー本部】

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