1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2017年1月19日 No.3300
  5. ユニバーサル社会の構築に向けた検討を開始

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月19日 No.3300 ユニバーサル社会の構築に向けた検討を開始 -前厚生労働事務次官の村木氏が講演/生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は、少子高齢化の進展と2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、障害の有無・年齢・性別・国籍等にかかわりなくあらゆる人々が安全・安心・快適・便利に暮らせる社会の構築に向けた検討を行うため、生活サービス委員会のもとにユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を設置し、12月26日、第1回会合を開催した。

会合では、石塚邦雄生活サービス委員長のあいさつに続き、村木厚子・前厚生労働事務次官が、「ユニバーサル社会をどう創るか」をテーマに講演した。概要は次のとおり。

■ 石塚委員長あいさつ

施設の整備や商品・サービスの充実だけではユニバーサル社会は実現しない。高齢者・障害者や子ども連れの人を自然と周囲が手助けするような、意識面でのバリアフリー化も進めなくてはならない。

また、ユニバーサル社会への対応を、コンプライアンス(法令遵守)やCSR(企業の社会的責任)だけでなく、企業の成長に資する経済的な価値があるものとしてもとらえるべきである。多様な人々の社会参加を促すツールを本業で提供することは、新たな市場の開拓や顧客のロイヤリティーの向上につながる余地があり、経済の活性化にもなっていく。

■ 村木氏講演「ユニバーサル社会をどう創るか」

講演する村木氏

生産年齢人口の減少により、今後圧倒的な人手不足が予想される。女性や高齢者・障害者の活躍を推進することで、これを補い、購買力のある消費者の増加や税収の確保につなげる必要がある。

デイサービスに通う高齢者にも、能力や意志に応じて貢献できる分野はある。「支える人/支えられる人」という発想ではなく、人は場面によって立場が変わり得るという認識が大切になる。障害者も他の人々と同じように、従業員・住民・顧客など、さまざまな立場で活動しており、障害は個性の一部にすぎない。「合理的な配慮」を行うことで、共に社会を支える構成員として平等に受容していくことが可能となる。

「合理的な配慮」の代表例としては、飛行機の優先搭乗がある。車椅子でもカウンターで食べられるように床に板を置くすし店もある。また、障害者対応の一部の施設に限定せず、あらゆる店や宿を対象に、やりたいことやどの程度の介助を望むのかといった障害者のニーズに応じた旅行情報を提供するNPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンターなどは好事例で、それによって観光客が増える効果も生まれている。

「普通に暮らす」を突き詰めると、ユニバーサル社会につながる。「障害者向け」「高齢者向け」ではなく、汎用性のある、誰にとっても便利な製品・サービスを提供することが求められる。また、製品やサービスに関する「情報」も重要である。CMや緊急時の車内アナウンスなどには字幕が付かないが、その内容を知りたいという強いニーズが聴覚障害者にはある。

こうした対応を積み重ね、多様な人々の社会参加を促し、「包摂的な成長(皆が参加できる成長こそが持続的である)」を目指すことが重要になる。

【産業政策本部】

「2017年1月19日 No.3300」一覧はこちら