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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月23日 No.3305 「米国の新大統領と日米関係の行方」 -東京大学の久保教授(21世紀政策研究所研究主幹)が常任幹事会で講演

講演する久保教授

経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、東京大学大学院法学政治学研究科の久保文明教授(21世紀政策研究所研究主幹)から、「米国の新大統領と日米関係の行方」をテーマに講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 2016年米国大統領選挙

2016年米国大統領選挙は、(1)二大政党が政治経験皆無の人物を大統領候補に指名(2)共和党が孤立主義的傾向を持つ候補を指名(3)二大政党の大統領候補どちらもが保護主義的――などの点で異例ずくめの選挙であった。

トランプ大統領人気の背景には、中位実質的家計所得が1990年代末以降伸びておらず、格差も拡大しているといった米国民の経済的不満がある。加えて、約1300万人といわれる不法移民の存在が、米国民の失業率や賃金に悪影響を与えている。こうした状況のなか、米国民のなかで変化を求める巨大なうねりが生じ、そこにうまく取り入ることでトランプ大統領は当選につながった。

■ トランプ政権の基本的性格

トランプ政権は長年の外交慣例などを無視する場合がある。「一つの中国」をめぐる発言がその象徴である。他方で、関心がないテーマについては、共和党主流に委任するものと思われる。

また、共和党の大統領が誕生し、さらに上下両院議会でともに共和党が過半数を占めたことにより、10年ぶりに共和党による統一支配が行われることになった。そのため、減税や金融・環境などの分野での規制緩和に突如可能性が開けることになった。

ただし、米国の大統領には権限の面で大きな制約がある。特に内政分野に制約があり、立法や予算策定に関する権限がない。一方で、行政府の規律や軍の指揮については、非常に大きな権限を持っている。

今後、(1)トランプ大統領の国際政治観(2)「一つの中国」をめぐる発言の真意(交渉のカードである場合、何と取引するのかなど)(3)どのように政策決定を行うか(国務長官・国防長官らの助言に従うか、自ら決定するか)――などに注目していきたい。

■ トランプ政権と日米関係

日米関係には異次元の不確実性があり、心配している。誰もが予想しなかった例として、1969年に就任したニクソン大統領による日本頭越しの米中接近、1993年のクリントン大統領就任後の日米通商摩擦が挙げられる。

今後の日米関係で焦点となるのはまず、トランプ大統領が南シナ海での「航行の自由作戦」継続を表明するかどうかである。ここには日本も含めた世界が強い関心を持っている。

次に、トランプ大統領が日米安全保障条約第5条、第6条の意味を理解しているかどうかである。特に第6条は、日本の米軍基地は日本の安全だけではなく、極東における国際平和および安全に対しても利用できることを規定しており、米国にとってもメリットがある条文である。

さらに、トランプ大統領が1980年代の日本観をどの程度払拭するかどうかである。日系企業は米国で90万人分の雇用を創出している。こうした事実を理解してもらう必要がある。

【総務本部】

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